アヘン戦争が起こらざるをえない「世界史的な必然性」とは何だったのか【世界史のリテラシー:岡本隆司】 - Yahoo! JAPAN

 

アヘン戦争が起こらざるをえない「世界史的な必然性」とは何だったのか【世界史のリテラシー:岡本隆司】

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アヘン戦争が起こらざるをえない「世界史的な必然性」とは何だったのか【世界史のリテラシー:岡本隆司】

なぜ、アヘンをめぐって戦ったのか?

アヘン戦争の歴史的意義とは、いったい何だったのでしょうか。

一八四〇年以後から日清戦争、辛亥革命、中華民国、そして中華人民共和国の成立へ──。清朝のありようとその変遷を象徴する事件を軸に、未だ真の革命を成就できない「中国」の核心に迫る『世界史のリテラシー 清朝は、「中国」に何をもたらしたか アヘン戦争』。

今回は、早稲田大学教授の岡本隆司さんによる本書第1章より、イギリスがアヘン戦争の発端となる所業に手を染めた「歴史的な事情」についての解説を公開します。

イギリスが当時すすめていた産業革命との関わり──アヘンを持ち込んだイギリス

「アヘン戦争」とは文字どおり、アヘンをめぐる戦争でした。しかし今から考えますと、なぜアヘンのような麻薬が、戦争のきっかけになったのか、わかりづらいかもしれません。それなら、まずはその点が「世界史のリテラシー」としても重要かと思います。

 麻薬のアヘンを中国に持ち込み、売り込んだのは、誰もがよく知るとおり、イギリスです。では、なぜイギリスが国家ぐるみの薬物密売事業をやっていたのか。ただ悪い、犯罪的だ、と非難糾弾(きゅうだん)するだけなら、とても簡単です。しかしそこで終わりでは、ほとんど思考停止、何も考えていないのと同じです。

 今日からみて、そんな悪逆非道(あくぎゃくひどう)なことが、なぜ当時その地でまかりとおったのか、なぜイギリスがそんな所業に手を染めたのか。そこまで考えなくては、歴史の思考にはなりえません。

 イギリスといえば紅茶の国ですが、もともとそうだったわけではありません。当時もまだ欧米で喫茶が普及し、定着したころでした。そのためイギリスは十八世紀以降、大量のお茶を中国から輸入するようになっています。お茶はまだ中国でしか買えない時代だったのです。

 ところがイギリスは、自分から中国に売り込むものがなかったために、お茶の代価として厖大(ぼうだい)な量の銀を支払わなくてはなりません。ひらたくいえば、貿易赤字に悩んでいました。

「これはまずい」ということで、インド産のアヘンを中国に輸出することで利益を上げ、流出していた銀を回収しようとした、といったことが世界史の教科書には書かれています。そのアヘンは麻薬なので、もちろん禁制品でした。だから密輸をめぐって、清朝政府と紛糾して、戦争にいたったのです。

 以上の記述は、まったくそのとおりに納得できるでしょう。また、それが誤っているはずもありません。ただこれだけではいささか不十分で、いくつか補足が必要になります。

 

 

 まずなぜイギリスが、そんなにたくさんのお茶を中国から輸入したのか、そして貿易赤字では、なぜダメなのか。そしてなぜ、その補塡(ほてん)物として、禁制品・麻薬のアヘンが出てくるのか。

 

 考えなくてはならないのは、以上のような、いわば加害者側のイギリスの歴史的な事情です。そこの理解は欠かせません。いずれもイギリスが当時すすめていた産業革命との関わりがあり、したがってイギリス一国にとどまらず、中国もふくむ世界史全体の動向と深く関連しているからです。

 イギリスが中国と貿易を本格的にはじめたのは、そう昔にさかのぼることではありません。大航海時代から先発していたポルトガルや、それに代わったオランダなどよりも遅くて、十八世紀に入ってからでした。この二国は、日本に渡来した「南蛮(なんばん)」や「紅毛(こうもう)」としても有名でしょう。

 こうした動きはヨーロッパの経済的な競争・覇権の推移とパラレルです。以後のイギリスの発展はめざましく、とりわけ海軍を中核とする武力とそれを支えた財力で優越し、最終的な勝者となりました。環大西洋の経済圏を中核とした世界経済のヘゲモニーを掌握して、以後のアジアとの貿易を主導します。

 そのなかで起こったのが産業革命です。これでさらに新たな段階への「離陸(テイク・オフ)」が始まりました。現代世界の出発点となります。機械制工業を通じた未曽有の大量生産とそこに関連する大規模な資金移動=金融、それにともなう商品・生活の激変など、われわれも現在進行形で日々経験していることがらの起源です。

 当時のイギリスは、そうした産業革命で綿工業が興隆していました。機械工業の大量生産ですから、製品を販売する市場(マーケット)が必要ですし、原料綿花を調達する産地供給地も欠かせません。いずれもヨーロッパ近隣だけでは、とても足らないので、前者はアジア、後者はアメリカに頼ったわけです。そのためには、いよいよ世界規模の市場・経済を形成しなくてはなりません。

アヘン戦争が起こらざるをえない世界史的な必然性──欠かせぬ世界経済

 つとに大西洋を挟んでアメリカ大陸と一体の経済圏をつくっていたイギリスは、インドの植民地化をもすすめて、その世界経済を完成させていきます。経済の規模拡大とともに、水準が向上したイギリスの生活文化が欧米にひろがり、喫茶の風習も普及し消費も急増していきました。お茶の輸入が増える道理です。かたや大量生産の綿製品も作りますので、いよいよ多くの綿花や穀物をアメリカから輸入しなければなりません。

 

 

 イギリスの工場で作った綿製品の販売で、そうした輸入をまかなえればよいのですが、

中国はお茶の対価として、イギリス製品を買ってくれませんでした。

綿糸・綿布はすでにあっていらないからです。

 

 綿製品はかねて植民地のインドに売り込んでいます。インドはもともと綿花の原産地・綿製品のふるさとでした。その産品がヨーロッパを席巻したことも、そしてその魅力が自分たちで生産したいという欲求をかきたて、やがて産業革命を引きおこす一因になったことも、よく知られているでしょう。

 ところがインドがイギリスの植民地になると、イギリスは関税率などを操作して、欧米にその手工業生産の綿製品が入らないようにして、逆にイギリスの工業製品をインドに輸出し、インドは一方的な輸入国の地位に追い込まれてしまいました。インドにひきつづきイギリス産品を買ってもらうには、インドがそれなりに儲って購買力をつけないといけません。

 

 かたやインドの産物は綿花をはじめ、一定の需要が中国にありました。

イギリス本国の製品が中国ではあまり売れなかったのとは、対蹠的(たいせきてき)です。

ところが、もはやそれだけでは十分ではなく、ほかもいろいろ試みました。

やがて図に当たったのが、麻薬のアヘンだったのです。

 

 このようにイギリスも、長期的な見こみがあって、アヘン貿易を始めたわけではありません。麻薬・禁制品ですので、当初は売り込めるかどうかすら、わからなかったのです。やってみると存外うまくいったので、産地で本格的に商品作物として大量生産を始めました。ベンガルやマルワなど、それぞれブランドにすらなってきます。

 うまくいったのは、中国内にアヘンを買う人がいたからです。買ったのは、中国側の秘密結社*でして、かれらが内地で売りさばき、アヘン中毒の人も増えていきました。

 当時、清朝政府がイギリスに認めていた唯一の貿易港・広州(こうしゅう)で水揚げされたアヘンは、山を越え湖南(こなん)省に入って長江(ちょうこう)まで運ばれ、水路を伝って各地にばらまかれます。また広州から沿海を北上し、ひろがってもいました。末端価格はその間にどんどん跳ね上がっていきます。秘密結社にとっては、またとない資金源になりました。

 もちろん売り込む側も、売り上げが急速に伸びています。十八世紀末のインドアヘン輸入は、統計上およそ四十万人分の消費量だったのが、一八三八年には十倍の四百万人分に増えました。

 この利益でお茶の代価を相殺(そうさい)できたことから、インドと清朝との貿易はインドの黒字、英清貿易はイギリスの赤字、これにインドが赤字の英印貿易を組み合わせて決済する、史上有名な三角貿易が成立します。

 また同じくお茶を買うアメリカからも、イギリスは原料・穀物を買っていましたので、その支払いもアヘン輸出の黒字でまかなえるように、ロンドンの国際金融市場に決済を集約させるグローバルな金融システムをつくりあげました。

 かくて工業生産が増せば増すほど、イギリスのインド貿易が増え、必然的により多くのアヘンが中国に流入しなくてはなりません。逆にアヘン貿易がなくなったら、産業革命のイギリス経済のみならず、世界経済もたちゆかなくなります。そこにアヘンの存亡をかけたアヘン戦争が起こらざるをえない世界史的な必然性がありました。

*当時の漢語では「会党」などと総称し、個別には天地会・洪門・三合会などとも呼ばれる。「反清復明」を掲げつつ密輸・地下経済に関与し、アヘン流通の仲介や護衛を担った。

 

『世界史のリテラシー 清朝は、「中国」に何をもたらしたか アヘン戦争』では、

・なぜ、アヘンをめぐって戦ったのか?
・清朝は、明朝のアンチテーゼだったのか?
・アヘン戦争は、清朝の秩序・体制を変えたのか?
・現代の中国は、清代からどのように変わったのか?

という4章構成で、アヘン戦争の歴史的意義と「中国」の核心に迫ります。

著者

岡本 隆司(おかもと・たかし)
早稲田大学教授・京都府立大学名誉教授。1965年、京都府生まれ。神戸大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科修士課程修了、京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。専門は東洋史、近代アジア史。著書に『近代中国と海関』『属国と自主のあいだ』『中国の誕生』『世界史序説』『近代日本の中国観』『歴史で読む中国の不可解』『君主号の世界史』『東アジアの論理』『二十四史』『塩政・関税・国家』など。編著に『宗主権の世界史』『交隣と東アジア』『NHK3か月でマスターするMOOK もっと深く知る アジアから見る世界史』など。
※刊行時の情報です。

■『世界史のリテラシー 清朝は、「中国」に何をもたらしたか アヘン戦争』より抜粋
■脚注、図版、写真、ルビ等は権利などの関係上、記事から割愛しています。
■TOP画像:via Wikimedelia commons 1850年頃、インドのパトナにあるイギリス東インド会社の工場にある、アヘンで満たされた倉庫を描いたイギリスの石版画。作者のページを見る, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

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2026/04/30 #crossdig #tbs #tcdb

   / @tbs_bloomberg   👆チャンネル登録・高評価をよろしくお願いします ニュースでは見えないアメリカの“B面”(ウラ側)の思想を 深掘りする番組「BACKSTAGE AMERICA」。 今回のテーマは「宗教」です。 米軍パイロットの救出劇を「イエスの復活」に重ね合わせたヘグセス米国防長官、 パランティア・テクノロジーズ創業者のピーター・ティールが語った『ワンピース』のルフィ=“キリスト説”。そして、イラン攻撃をめぐり対立の様相を呈しているトランプ大統領とローマ教皇。 政教分離の国であるはずのアメリカで、なぜここまで政治と宗教が密接に絡み合っているのか。 アメリカを理解する上で避けて通れない「宗教」について、 思想史・宗教学が専門の立教大学文学部・加藤喜之教授と、 TBS CROSSDIGの竹下隆一郎が、 宗教の歴史や、アメリカで暮らしたリアルな実体験を交えながら紐解きます。 テーマの理解を深める「杖(つえ)」として、 おすすめの書籍や映画も紹介しています。 ご感想や今後取り上げてほしいテーマなどもコメント欄にお寄せください!

 

 

 <出演> 

▼加藤喜之 立教大学文学部教授/地経学研究所 主任客員研究員 プリンストン神学大学院 博士課程を修了 東京基督教大学准教授やケンブリッジ大学客員フェローなどを経て 現在は立教大学で教鞭を執る 専門は思想史や宗教学、宗教学に関する著作なども手掛ける 著書『福音派ー終末論に引き裂かれるアメリカ社会』は「新書大賞2026」で3位に選ばれる。 X(旧ツイッター): @yoshiyuki79

 

 

 ◆書籍◆ 『福音派ー終末論に引き裂かれるアメリカ社会』 加藤喜之/中央公論新社 https://amzn.to/3WEGrQF ※上記リンクはAmazonアソシエイトを利用しています。

 

 ▼竹下隆一郎 TBS CROSS DIG with Bloomberg チーフ・コンテンツ・オフィサー(CCO) 朝日新聞経済部記者を経て、朝日新聞を退社。 2016年から2021年6月までハフポスト日本版編集長。 2021年8月にビジネス映像メディアPIVOTの創業メンバーに。 2024年11月よりTBSテレビ特任執行役員。 X: @ryuichirot メール:takeshita.ryuichiro@tbs.co.jp <紹介した“杖”>今回の議論のベースとなった書籍・映画など

 

 ▼加藤喜之 ①『キリスト教でたどるアメリカ史』 (森本あんり/角川ソフィア文庫) https://amzn.to/4mQEpcg ②論文『見えないリベラル宗教:なぜ米国の宗教報道は保守派ばかりを追うのか』 (木村智/「現代宗教2026」掲載) https://www.iisr.jp/journal/journal2026/ ③映画『魂のゆくえ』 (監督・脚本:ポール・シュレイダー) https://amzn.to/4cDsvzf ▼竹下隆一郎 ①『First Things』(宗教系の論壇誌) https://firstthings.com/ ②『アメリカの恩寵ー宗教は社会をいかに分かち、結びつけるのか』 (ロバート・D・パットナム、デヴィッド・E・キャンベル、柴内康文 訳/柏書房) https://amzn.to/4d9Z8of ③『宗教のアメリカ』 (藤本龍児/岩波新書) https://amzn.to/4cLhsCM ※上記リンクはAmazonアソシエイトを利用しています <ほか参考書籍など> ・『宗教からアメリカ社会を知るための48章 (エリア・スタディーズ 193)』 (上坂昇/明石書店) https://amzn.to/3P31Gvc ※上記リンクはAmazonアソシエイトを利用しています。 ・『First Things』に掲載されたピーター・ティール氏の論文 「Peter Thiel & Sam Wolfe, Voyages to the End of the World(原題)」 https://firstthings.com/voyages-to-th... ・『ピーター・ティールのワンピース論』 (邦訳・解説:会田弘継氏「文藝春秋PLUS」) https://bunshun.jp/bungeishunju/artic...

 

<チャプター>

  00:00 番組開始

  00:15 立教大学文学部・加藤喜之教授の紹介

  00:22 今回のテーマ紹介「宗教」

  02:14 トランプ氏がXに投稿した“キリスト姿”の画像

  02:25 ヘグセス米国防長官“キリストの復活”発言

  05:20 “杖となるアイテム”紹介(加藤教授)

  06:10 “杖となるアイテム”紹介(竹下)

  07:06 加藤の“杖”①『キリスト教でたどるアメリカ史』

  10:50 アメリカにおける宗教の自由の扱い

  14:47 竹下の“杖”①『First Things』

  18:47 竹下の“杖”②『アメリカの恩寵』

  22:49 加藤の“杖”②『見えないリベラル宗教』

  25:43 トランプ政権と宗教の距離感

  28:05 竹下の“杖”③『宗教のアメリカ』

  31:57 加藤の“杖”④『魂のゆくえ』

 

 <スタッフ>

 映像編集・特別協力:武石駿之介 サムネイルデザイン:石橋哲郎、天笠広規 ディレクター:岡本晃一、佐藤朱里、青木菫、杉本葵、小栗幸来 (※収録日:2026年4月22日) <お知らせ> CROSS DIGではこのたび、ニューズレターをはじめました! CROSS DIGのMCを務める3人が、ニューズレター読者に向けたオリジナルコラムをお届けします。

 

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臨済宗「山田無文」老師 VS 道元派の「南直哉」さん、

・・・「中国禅」VS「原始仏教」

 

山田無文:

臨済がみんなに求めるところは、人にだまされるな、ということです。

学問にだまされるな。社会の地位や名誉にだまされるな。外界のものにだまされるな。

 

何ものにもだまされぬ人になれ。それだけなのです。
鎮州臨済慧照禅師語録。

この一冊の本は、ことごとく臨済和尚のハラワタから飛び出した、

一句一句が天下人をして震えあがらせるようなすごい言葉ばかりです。

そういう言葉を集めた本が臨済録なのです。

 

 

山田無文老師が、若い頃、厳しい修行中、悟りも開けず、

病気にもなり、どうしようもない所まで、追い詰められた時に・・・

 

サーと「涼しい風」が流れて来て、顔に感じられて、その瞬間お悟りを開かれた。

 

自分が、生きているのではない。

自分は、生かされているのである。

大きな力が、今、ここで、自分を生かしているのだ。

自分は、ただ、それに信頼して、任せればよいのだ。

悟りを開こうとして、努力する、修行しようといたのが、そもそも、誤りだった。

すべての思いを放棄して、行けば、それだけでよいのだ。

という主旨(どこかの本で読んだ記憶で書いてます)を、告白しています。

 

「老荘思想」の「道」「天命「絶対無」に全てを任す。 途中ですがUPします。