記録的な猛暑が欧米を襲う 暑さの危険性を軽視する人々の心理とは(Forbes JAPAN) - Yahoo!ニュース
記録的な猛暑が欧米を襲う 暑さの危険性を軽視する人々の心理とは
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猛暑の中、英首都ロンドンを歩く観光客。2026年6月19日撮影(Richard Baker / In Pictures via Getty Images)
異常な猛暑が欧州を襲っている。
英国は6月の過去最高気温を更新し、フランスでは観測史上最高気温を記録した。
欧州全土で生活基盤が混乱し、猛暑による死者も出ている。
米国では7月4日の週末までに東海岸の一部で気温が38度を超える熱波が襲うと予想され、
国内の多くの地域が備えている。
この異常な暑さはエネルギー生産や公衆衛生、農業、社会基盤、航空業界などに影響を及ぼしている。
だが、一般の人々の多くは夏の暑さを非常に狭い視野でしか捉えていない。
気象予報士が暑さの危険性を警告する一方で、ソーシャルメディア(SNS)や日常の会話では、
「夏だから暑いのは当たり前だ」といった単純化した反論があふれている。
こうした誤った認識は危険だ。
では、どうすればこの危険を避けられるだろうか?
本稿を書くきっかけとなったのは、米ノースジョージア気象局の気象予報士リリー・チェーニーがSNSに投稿した記事だった。
筆者がフォローしている優秀な気象学者であるチェーニーは、
6月末から7月にかけて気温がかなり高くなると警告した。
これに対し、「夏は暑いのが当たり前だ」という理由で、不必要な警告だというコメントが寄せられた。
これを見て、筆者は気象当局者が暑さによる危険性を伝える上で、
いかに困難な戦いを強いられているかを痛感した。
6~7月は確かに暑い。
しかし、多くの人はそれが何を意味するのか、
そして気温がどのように変化していくのかについて、
例年との微妙な違いを見落としている。
米南部ジョージア州アテネの
7月1日の平均気温は32度前後だが、
今年は38度近くになる可能性がある。
この6度の差は大きな意味を持つ。
熱波による危険性を高め、
社会基盤を弱体化させ、
家庭の光熱費にも負担をかけるからだ。
日中にこれほど温度が上昇すると
夜間の気温も下がりにくくなり、
高齢者や子ども、あるいは
十分な冷房設備のない家庭にとっては
特に過酷な状況となる。
これが、欧州での記録的な高温が問題視されている理由だ。
欧州では、冷房設備を備えた家庭は
4軒に1軒程度しかない。
現在の熱波では、夜間でも気温が30度以上にとどまることもある。
この状況について、米海洋大気局(NOAA)の元気象予報士リチャード・ヘニングは、筆者にこう語った。
「都市部の最大の問題が、夜間の最低気温の急激な上昇にある
ことを説明するのは実に難しいと感じている。
多くの人は簡単な説明を聞くだけの集中力を持っておらず、
『暑いのは当然だ』という大ざっぱな理解で冷笑に付してしまう」
筆者の取材に応じた米サウスアラバマ大学の元気象学講師ジョーダン・マクラウドは、
「異常なのは極端な湿度の高さだが、多くの人は暑さを気温という一面的な視点のみで捉えがちだ」と指摘した。
「暑さ指数」や「不快指数」は、気温と湿度がもたらす危険性を人々に伝えるために設定された。
米国で毎年最も多くの死者を出している気象現象は?
もし「米国で毎年最も多くの死者を出している気象現象は何か?」と一般の人に尋ねたら、ほとんどの人が竜巻やハリケーン、あるいは落雷と答えるだろう。ところが、米国立気象局(NWS)の統計によると、実際には熱波なのだ。
ハリケーンの危険性を伝えるために使われている「サファ・シンプソン・スケール」のような指標こそが、
熱波の脅威を周知する上で解決策になり得ると筆者は考えている。
欠点はあるにせよ、人々はそうした指標を受け入れやすいからだ。
欧州では、極端な気象の脅威の水準を示すために色分けされた等級が使用されている。
英気象庁は26日、猛暑に対する「赤色警報」を発令した。
これにより、猛暑に対する赤色警報が3日連続で出されたことになる。
これは英国で現在の気象警報制度が整備されて以降初となる。
■猛暑を軽視する人々の心理とは?
2022年に米オレゴン公共放送(OPB)が掲載した論説の中で、米公共ラジオ放送(NPR)の気象予報士ローレン・ソマーは、米国で猛暑に関する情報発信が十分でない理由について、以下の点を挙げた。
○ NWSが発する不快指数に対する誤解や、それに伴う危険性の過小評価。不快指数はかなり限定的な指標であり、活動的な人や屋外労働者、スポーツをする人が直面する暑さに伴う危険性の全容を捉えきれていない。
○ 多くの人は暑さを「毎年夏に訪れる厄介なもの」と捉えているが、
危険性を伴う極端な気象現象を見分けるための基準を持っていない。
これは、極端な降雨でもよく見られる現象だ。
人々は日常的に雨を経験しているため、昨年、米南部テキサス州ヒルカントリーを襲った
洪水のような極端な降雨が警告されても、その危険性を過小評価したり誤解したりしがちだ。
○ 人々は気候変動によって熱波の強度と頻度が上昇していることに気づいていないかもしれない。言い換えれば、現代の熱波は、母親や祖母の時代の夏の暑さとは異なるのだ。これは統計によっても裏付けられている。
■油断は禁物
朗報としては、NWSが現在、熱波注意報や警報に加え、欧州の制度に類似する「熱波リスク」尺度を導入していることだ。こうした尺度が一般の人々に浸透することを願っているが、専門家である筆者の感覚としては、ほとんどの人は熱波リスクが何なのかを全く理解しておらず、単に天気アプリの気温を見て「暑い!」と結論付けているだけだろう。
私たちは人生の中で毎年夏を経験しているが、過去の暑さを基準にすると、誤った安心感や油断が生じる。人々は6月下旬のたまたま暑い日と、その週の例年の平均気温を大幅に上回る異常な熱波を、誤って同一視してしまいがちだ。
米公共リスク管理協会(PRIMA)は次のように指摘する。
「油断とは、脳が前頭前野の活動や実行機能をあまり必要としない神経経路を活性化させることで、
外部の危険に対する認識と感受性が低下する状態だ。
油断は習慣の副産物だ」
気象分野の専門家としての経験を通じて、
筆者は暑さに対する一般の人々の認識に関して、危険な構図があることに気づいた。
熱波の危険性は、暑さに対する弱さ、適応能力や対処能力、油断、そして
気候変動という新たな現実に対する誤解といった要素の複合的な結果として生じる。
Marshall Shepherd
