BYDの「快進撃」はインチキだった…習近平も後戻りできない「隠れ負債7兆円超」を生んだ中国EV産業の末路(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース

 

BYDの「快進撃」はインチキだった…習近平も後戻りできない「隠れ負債7兆円超」を生んだ中国EV産業の末路

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プレジデントオンライン

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Alfribeiro

なぜ中国EV市場は急成長できたのか。

評論家の白川司さんは

「圧倒的な価格競争力のおかげだが、

中国国内で繰り広げられる値引き競争によって、

王者BYDにも陰りが見えている。

さらにBYDの資金繰りには大きな問題があることが指摘されている」という――。

 

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■「テスラを超えた」中国EVの時限爆弾

 

  これまで中国の電気自動車(EV)産業は、世界を席巻する成功物語として語られてきた。その代表が、2025年にBEV販売でテスラを抜き、世界を代表するEVメーカーとなった中国のBYDである。  その輝かしい名声の裏で、いま中国EV産業は出口の見えない消耗戦に沈み込んでいる。EVにおいて最強の勝者とされるBYDですら、いまや巨大な時限爆弾を抱え込んでいる。  公式の財務諸表では有利子負債に入れられていない、7兆円をはるかに超える「隠れ負債」である。BYDの債務は中国EV企業の中でも突出しているが、これは一社の経営リスクではなく、中国のEVメーカー全体が抱える脆弱性と考えるべきだろう。  最も成功したはずの企業がなぜこれほど危うい資金繰りに頼らざるをえないのか。その構造を深掘りすると、中国のEV戦略全体が「後戻りできない」袋小路に入り込んだことを物語っている。

 

 

 ■香港の調査会社が暴いた「巨大隠れ負債」

 

  ことの発端は、香港の調査会社であるGMTリサーチが発表した一本のレポートだった。

同社は、かつて中国恒大集団の財務問題を早い段階で見抜いた実績を持ち、次なるターゲットとしてBYDの財務体質に疑義を突きつけた。

 

 

  GMTリサーチの試算によれば、2024年6月末時点でBYDの実質的な純負債は3230億元、約7兆6000億円に達する。一方、BYDが公式に開示している純負債は277億元にとどまっており、GMTの推計額はその10倍を超える。  ※Reuters「BYD shifts away from in-house payment system that strained suppliers, sources say」(2025年11月14日)  この乖離の背景にあるのが、サプライヤーへの支払いを長期化させる「サプライチェーン・ファイナンス」である。たとえるなら、BYDグループで通用するいわば「グループ内手形」といったイメージだ。

 

 

 

■支払代金を「塩漬け」にする代償  BYDは部品を納入したサプライヤーへの代金支払いを、サプライチェーン・ファイナンスで代替することで極端に長く先延ばしする。2023年時点で、BYDがサプライヤーに代金を支払うまでの平均期間は275日に及んでいる。一般的な決済サイクルが45〜60日であることを考えると、異常な長さだ。  ※The Business Times「BYD’s supply chain financing masks ballooning debt: GMT」(2025年1月20日)  即座に支払うべき仕入れ代金を半年以上も塩漬けにすれば、BYD本体は助かるだろうが、請負会社は資金繰りを自分でやりくりするしかない。  また、その間、BYDの手元には支払うべき現金が残り、帳簿上の資金繰りは潤沢になる。だがその実態は、サプライヤーへの未払い金という「事実上の借金」であり、BYD側にとっては将来の支払い圧力となり、サプライヤー側にとっては、最悪の場合、不良債権化するリスクを抱える。  GMTが3230億元という「隠れ負債」をあぶり出せたのは、この仕組みに気づいて、売掛金や90日以上の未払い買掛金が尋常ではないと気づいたからだった。 ■未払い金が雪だるま式に膨れ上がる  この異常さは、買掛金の推移を追うと、さらに鮮明になる。  BYDの「その他の買掛金」は、2021年末の約413億元から、2023年末には1650億元へと、わずか2年で4倍に膨れ上がっている。販売台数の急拡大に歩調を合わせるように、サプライヤーへの未払い金が雪だるま式に積み上がっていたのである。  GMTの分析については評価が分かれているが、米メディアはBYDの実質純負債が帳簿上の負債の10倍以上に達すると伝え、この分析を適切なものと評価しているようだ。  大メディアが伝えるBYDの快進撃と、裏で雪だるま的に積み上がっていく巨大な「隠れ負債」。同じ企業の話なのに、まるでパラレルワールドにいるような錯覚に陥る。

 

  巨大利益を世界中から吸い上げるBYDと、

その躍進に貢献した身内企業にまともに資金を回そうとしないBYD。

いったいどちらが本当の姿なのか。

 

■万が一、BYDが破綻してしまったら… 

 

 先述したBYDの「サプライチェーン・ファイナンス」を支えているのが、「迪鏈(ディーチェーン)」と呼ばれる独自の金融ツールである。これは電子的な債権証書の一種で、BYDはサプライヤーへの支払いに、現金の代わりにこの証書を発行する。  証書を受け取ったサプライヤーは、満期まで保有して現金化するか、満期前に割り引いて早期に資金化するか、あるいは別のサプライヤーへの支払いに転用できる。  一見すると便利な仕組みだが、現金をすぐに必要とするサプライヤーは、満期前に証書を割り引かざるをえない。その際の割引率は一説には年6%にも達するとされ、サプライヤーの利益を確実に削り取っていく。  問題の本質は、この「迪鏈」が銀行を介さず、BYDのプラットフォーム上で発行されて、グループ外で使えるとは限らない点だ。その価値と流動性は、最終的にBYDの信用力と販売能力だけに支えられており、デフォルトが発生した場合に保護してもらえるかどうかは不透明だ。

 

 ■しわ寄せはすべてサプライヤーに

 

  売上が伸び続けているあいだは資金が回るが、中国企業の場合、日本企業より「内部留保」というクッションが薄いことが多く、ひとたび販売の伸びが止まれば、サプライヤーへの支払いが滞り、資金繰りが止まる。そのしわ寄せはサプライヤーが背負い込むことになる。  納品から入金まで9カ月から12カ月も待たされ、その間の資金繰りのために高い金利を払って証書を割り引く。完成車メーカーが価格競争を激化させれば、その圧力はそのまま部品価格の引き下げ要求として下請けに転嫁される。  利幅を削られたサプライヤーが、コスト削減のために品質に手を抜けば、最終的に素材や部品などの品質に反映されることになる。日本企業もかつてデフレ不況の中でコスト削減の中でいくつもの問題が発覚したが、中国企業の場合、その監視体制についても信頼性は低い。

 

 

■「値引き競争」でEV販売が伸び悩み  さきほどBYDの持続可能性を考える際に、「売上が伸び続けているあいだは資金が回る」と述べたが、この前提もここに来て崩れてきている。  2025年7〜9月期、BYDの売上高は前年同期比3.05%減の1949億元、純利益は同32.6%減の78億元と、四半期ベースでは2020年1〜3月期以来となる減収減益に沈んだ。新エネルギー車の販売台数も同1.82%減の111万台と、少なくとも2021年第1四半期以降で初めて前年を下回った。  ※日本経済新聞「BYDの7〜9月、22四半期ぶり減収減益 国内の競争激化」(2025年10月30日) ※CnEVPost「BYD Q3 net income drops 32.6% as car sales decline」(2025年10月30日)  原因は明白だ。中国国内で繰り広げられる過当競争による際限のない値引き競争である。実際、BYDの車両平均単価はこの3年で2割も下落している。  シェアを維持するために価格を下げ、価格を下げたのでさらに薄利になる。薄利の中で利益を確保するために、台数を確保しようとさらに価格を下げる――。まさに絵に描いたような悪循環である。  中国EV企業はすでにこのような過当な消耗戦に入っていると考えられる。 ■BYDは本当に「勝ち組」なのか?  さらに、2025年1〜9月累計の営業活動によるキャッシュフローは前年同期比27.4%減と細り、運転資金が圧迫されている。研究開発投資や生産能力増強を続けた結果、同期間のキャッシュ流出は100億ドルを超えたと報じられている。  ※Business Standard「BYD's $100 billion EV success turns into a $10 billion cash outflow problem」(2025年11月3日)  ここで思い出してほしいのは、BYDの資金繰りがサプライヤーへの支払い先送りによって成り立っている点だ。販売が鈍化し、キャッシュフローが細るということは、その先送りを支える生産や研究開発の原資そのものが揺らぐことを意味する。  EV市場の今後の動向次第では、「隠れ負債」という時限爆弾の導火線に、ついに火がつきかねない局面に入っているのである。  BYDは中国EV業界において、大きな黒字を稼ぎ出す貴重な「勝ち組」の代表格とされてきた。その勝者にしてなお、7兆円超の隠れ負債を抱え、本業の採算は値引き戦争で崩れ始めている。特に肝心の国内販売で不振が続いている。  BYDの強さは研究開発費の潤沢さにある。EVはまだ発達の途中にあり、研究開発競争で後れを取れば、すぐに他者に追い抜かれかねない。過当競争で目先の研究開発費が捻出しにくくなったことをなんとかするために、「迪鏈」という方法に頼りだしたのだろう。

 

 

■「エンジン車では勝てない」とEVへ  中国のEVメーカーは、2018年に487社が乱立したが、2024年時点で販売実績のある企業は129社にまで減少した。コンサルティング会社アリックス・パートナーズは、2030年までに生き残れるのはわずか15社程度だと予測する。  ※The Wall Street Journal「China Has 487 Electric-Car Makers, and Local Governments Are Clamoring for More」(2018年7月19日)  この大量の乱立と淘汰は、市場の自然な競争の結果ではない。15年以上前、中国政府は「エンジン車では日米欧に勝てない」と判断し、新エネルギー車へ国家を挙げて巨額の資金を投じたことがきっかけだった。地方政府は企業誘致を競い、工場用地の無償提供、低利融資、直接出資を惜しみなく与えた。  中国政府は新興産業において、莫大な補助金を餌にして各企業から参入を促して、わざと過当競争を作り出し、イノベーションを起こすという独自の産業振興法をとってきた。これまでも、家電、鉄鋼、太陽光パネルなどいくつもの成功例を生み出している。  EVにおいても、大型補助金につられて参入を加速させ、IT、家電、不動産、バッテリーといった畑違いの業種までもがこぞってEV産業に殺到した。

 

 

 ■習近平政権はもう後戻りできない 

 

 問題は中国EVの供給過剰が修正できなかった場合だ。市場拡大を上回って生産能力が過剰になれば、今後は「勝者なき価格戦争」を繰り広げるしかない。  過当競争になれば、通常であれば政府は企業を絞るために撤退を促すものである。だが、そのような「後戻り策」ができないのが今の中国だ。  なぜ後戻りができないか。ごく乱暴にいえば、中国にとってEVは、今や経済合理性ではなく、政治的な力学によって動かされている産業になっているからである。  地方政府にとって、誘致したEV工場は雇用を生み出し、中央政府が課す成長目標を支える貴重な基盤の1つとなっている。「採算が合わない」という理由だけでは、工場を整理するわけにはいかないのである。  また、EV企業の側も、補助金と過剰投資という「ドーピング剤」に慣れきっており、自力で競争力を上げる努力ができない。赤字になることがわかっていても価格を下げ、シェアを守り続ける以外の行動がとれないのである。

 

■綱渡りの資金繰りに苦しむことになる

 

  誤りに気づいても引き返せない。

損失が膨らんでいるとわかっていても止められない。

この構造こそ、

権威主義体制が抱える宿痾(しゅくあ)である。

市場の淘汰機能が政治的な思惑によって歪められ、

本来退場すべき企業が補助金で延命され、過剰生産が積み上がっていく。

 

 

  中国当局はようやく過当競争の是正に乗り出し、

自動車メーカーにサプライヤーへの60日以内の支払いを求め始めた。

だが、支払期間を短くすれば、BYDの資金繰りが正常化するのではない。

 

  BYDは、今度は

サプライヤーに適正に支払いを続けながら、

多額の研究開発費を捻出するという綱渡りの資金繰りを続けなければならない。

いわば、

新たな課題を与えられただけである。

現状の課題は何も解決できていない。

 

 

  そして、この後戻りできない中国国内の構造的な歪みは、決して対岸の火事ではない。

国内で消化しきれない過剰生産の波が、他国へと押し寄せているからだ。

 

 

  そもそも

現在のBYDは、あまりに大きくなりすぎて、

簡単に潰すわけにはいかなくなっている。

改革を先送りにして、

市場拡大とBYDの自転車操業のチキンレースを繰り広げるしかないのである。

 

 

 ■日本政府は中国EVへの補助金を中止せよ

 

  日本政府はEVなどの環境車に「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」を出しており、

BYD製も対象になっている。

 

  果たして、中国政府が補助金を出して世界シェアを取り、

いまだに多額の政府補助金を受け続けている

BYDなどの中国EVに

日本政府が補助金を出すというのは、

公正な制度と言えるのだろうか。

 

  中国EVの脅威を語るとき、私たちはしばしば「安さ」だけに目を奪われる。BYDのEVは中国国内では約200万円で売られ、その価格競争力に日本メーカーが太刀打ちできないという論調も根強い。  だが、その安さは、売れなくなったEVを「投げ売り」せずに済むよう価格を下げて輸出することで、なんとかもたらされたものだ。そんな企業の経営戦略を賞賛する日本のマスコミは何を考えているか。これでは、国内生産を頑張っている日本企業をあまりに軽んじていないだろうか。

 

  過剰投資が過当競争を生み、

過当競争が資金繰りを困難にしている。

研究開発競争でつまずけば、

一気にシェアを落として先行者利益が一気に失われる。

そんな中国企業に未来があるかどうかはわからないが、

日本政府もそれを延命させる措置は中止すべきである。

 

 

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 白川 司(しらかわ・つかさ) 評論家・千代田区議会議員

 国際政治からアイドル論まで幅広いフィールドで活躍。『月刊WiLL』にて「Non-Fake News」を連載、YouTubeチャンネル「デイリーWiLL」のレギュラーコメンテーター。メルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評。著書に『14歳からのアイドル論』(青林堂)、『日本学術会議の研究』『議論の掟』(ワック)ほか。 ----------

評論家・千代田区議会議員 白川 司

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