【解説】米とイランの合意、米の支配力の限界示したトランプ氏の戦争が終了へ……BBC国際編集長(BBC News) - Yahoo!ニュース
【解説】米とイランの合意、米の支配力の限界示したトランプ氏の戦争が終了へ……BBC国際編集長
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【解説】米とイランの合意、米の支配力の限界示したトランプ氏の戦争が終了へ……BBC国際編集長
ジェレミー・ボウエンBBC国際編集長(ベイルート)
この戦争は、ドナルド・トランプ米大統領にとって最悪の外交上の失敗となった。
今のところ。 この戦争の結果、アメリカは敵を抑止しづらくなった。
この戦争の結果、湾岸で石油を生産するアラブ諸国との同盟関係が損なわれた。
激動の中東において、君主制の湾岸諸国は
安定のよりどころだというビジネスモデルは損なわれ、
修復するのに今後何年もかかるだろう。
湾岸諸国の政府高官たちは内々ではすでに、同盟関係の多様化について話している。
ペルシャ湾の向こう側という近所にいるイランと、今後どうやって共存していくか、
その方法を模索する必要についても話している。
今回の戦争でアメリカは、補充が難しい武器をあっという間に使いまくり、自分たちの力の限界に直面した。
その様子を、中国はじっと注視していたはずだ。
土壇場でこれ以上の問題が生じないことを前提として、アメリカとイランの合意は、
アメリカとイスラエルが始めた戦争を終わらせることになる。
この戦争は、テヘランにいる敵の強さをアメリカとイスラエルが読み違えたことで始まったものだ。
戦争の標的となった民間人を筆頭に、この戦争が終われば、生活をひっくり返された大勢が、
安堵(あんど)して大きなため息をつくはずだ。
トランプ氏によると、アメリカとイランの合意によって、ホルムズ海峡が再び開かれる。
そうすれば、世界経済への圧力はやわらぎ、日々の生活に苦しむ世界中の何百万人もの人の、
本物の生活への圧力がやわらぐ。
中東では、1万人前後の人が殺された。
家屋や企業が破壊された。
海峡経由で運ばれる原材料に依存していた肥料の製造が打撃を受けたことで、
今年後半には貧困国で大勢が飢えに苦しむ可能性がある。
特にサハラ以南のアフリカが危険にさらされている。
この合意は和平協定ではない。
交渉担当者によると、2ページの文書に14項目が書かれているそうだが、全文はまだ公表されていない。
しかし、この覚書は海峡を再開するだけでなく、
停戦を延長し、米海軍によるイランの港湾封鎖を解除するものだ。
特に厄介な問題は将来の交渉に委ねられる。
イランの核計画の今後と、譲歩と引き換えにどこまで対イラン制裁を緩和するのかが、将来的な交渉の議題となる。
アメリカとイスラエルが2月28日に始めた戦争で、ついに一線が引かれた。
では、時計を2月27日に戻してみよう。
アメリカ軍とイスラエル軍は攻撃の準備をしていて、軍用機に武器を搭載し、乗組員に作戦を説明し、
ミサイルの標的をプログラムに入力していた。
スイス・ジュネーヴでは、イランとアメリカの代表団が交渉していた。
イランの核計画の統制を目的とした重要な話し合いだと、世界にはそう説明されていた。
交渉に臨んだイランの代表団も、これは真剣なプロセスだと信じていたし、
要求だけでなく譲歩も、アメリカ側に提示していた。
ペルシャ湾の入り口では、ホルムズ海峡が開いていた。世界の石油と天然ガスの需要の約20%だけでなく、農業用肥料や半導体など、現代生活に不可欠な石油化学産業の副産物も通過できていた。
今回の米・イランの覚書によって、核交渉の担当者たちは再び集まることができる。
船は、海峡を通過できるようになる。つまり、アメリカとイスラエルが戦争を始める24時間前、
まさにあの状態に戻ることになるのだ。
一連の激しい奇襲攻撃によって、イスラエルはイランの最高指導者アリ・ハメネイ師と側近たちを殺害した。
同じ頃、イラン南部のミナブにある学校が破壊された。
これはアメリカ軍の攻撃によるものだと、複数の調査が示している。
現場では、少なくとも学童120人を含む150人以上の民間人が殺害された。
そのほとんどは12歳未満の女児だった。
限定的な攻撃で素早く勝利できるはずだと信じていたトランプ大統領と
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はそれぞれ、動画で開戦を発表した。
あっという間に勝てるなど、とんでもない誤算だった。
両首脳は演説で、イランの政権が崩壊すると予想した。
しかし実際には、政権は生き残り、生き残ったことで力を増した。
アメリカとイスラエルが一緒になって全力でイランの体制転換を実現しようとすることこそ、
イランにとってかねて、最悪の悪夢だった。
いよいよそれが現実のことになったが、実現せず失敗した。
生き残ったテヘランの強硬派は、以前より勢いを増している。
殺害されたハメネイ師と側近たちの後任はあっという間に決まり、
ハメネイ師の息子モジタバ師が後任の最高指導者となった。
政権は、イスラム革命防衛隊(IRGC)の幹部が多数を占める新世代の指揮官へと、若返った。
新しい指導部は前の政権幹部と同じくらいイデオロギー的ではあるが、旧世代ほど慎重ではなく、
今回の戦争はイランのイスラム政権の存亡がかかった戦いだと正しく判断し、
そしてそのためにリスクをとる用意があった。
イランの新しい指導者たちはホルムズ海峡を封鎖し、
近隣のアラブ諸国と米軍や米軍基地、イスラエルそのものを攻撃するという、
よく練り上げられていた戦略をとことん推し進めた。
ピート・ヘグセス米国防長官はアメリカの威力がイランの軍隊を徹底的に打破したと、
血気盛んに主張したが、その言い分は結局、大げさで、事実とは異なっていた。
戦争において、イスラエルは全面的にアメリカのパートナーだった。
しかし、イスラエルは覚書に関する交渉から除外され、
その結果に落胆している。
ネタニヤフ首相は2月28日、イスラエルの最大の敵と見なすイスラム共和国を破壊する機会を政治家としてずっと待ち続けていたのだと述べた。そしてネタニヤフ氏は現在、イスラエルの安全を危険にさらしているとして、国内の政敵から攻撃されている。 イスラエルでは総選挙が差し迫っている。今年10月末までに総選挙を行う必要があるからだ。そのためネタニヤフ氏はそれまで、自分の行動の結果に直面し、非難され続けるだろう。 イスラエルは、レバノン南部の広大な土地を占領し続ける決意を表明している。これが、今後の交渉の障害になる可能性がある。イスラエルは、占領したレバノン南部から民間人を追放され、何千もの建物を破壊してきた。イスラエルの国防相は、レバノン、シリア、ガザの土地の占領を「無期限」継続すると述べている。 ネタニヤフ氏は、内閣の強硬派や政敵から、レバノンでさらに攻撃を強化するよう圧力をかけられている。レバノン南部の併合を求める声も、イスラエルにはある。 一方、トランプ氏はアメリカ・メディアによる一連のインタビューで、ネタニヤフ氏に対する不満をぶちまけてきた。つまりネタニヤフ氏は、イスラエルとアメリカの同盟関係をさらに傷つけるような、そのようなリスクを冒す余裕があるのかどうかを、考えなくてはならないのだ。 イスラエルは、14日にレバノンの首都ベイルートの南郊を空爆した。これは明らかに、米・イランの交渉を重要局面で脱線させようとしてのことだった。交渉は時間切れになりそうだった。しかし結果的に、イスラエルのしたことは、むしろ米・イランの交渉を加速させた。 今はだれもが一息をつける、そういう時間だ。今回の覚書が、アメリカとイランの間の包括的な協定へと拡大できるなど、そう結論するには時期尚早だ。そのような取引は中東を様変わりさせる可能性がある。しかし、イデオロギーのため、そしてお互いへの信頼がまったく欠けているため、それほどの大協定は遠い夢物語だ。 今回の戦争は、すべての当事者にとって、みじめな出来事だった。トランプ氏は2月28日にイラン国民に、自由の展望を約束したが、イランの人たちは今なお冷酷な政権に支配されている。この政権は今年1月にイラン各地の街頭で政府に抗議した多くの自国民を、次々と殺した。 アメリカは依然として巨大な経済力と軍事力を持つ大国だ。しかし、イランと戦争するとトランプ氏が衝動的に決めた結果、アメリカは今や、変わりゆく世界で自分たちの圧倒的な力を維持するのに苦心する、そういう超大国に見えている。 (英語記事 Bowen: Iran deal ends Trump's war that revealed limit of US dominance)
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