「EV」が日本で普及しない超シンプルな理由 航続距離? 充電インフラ? いやいや違います
- 2023.12.20
- 川名美知太郎(EVライター)
なぜ日本ではEVが普及しないのか。さまざまな理由が挙げられるが、結局、車両価格が高いからだろう。
HVの増加とEVの遅れ
さまざまな技術的課題を抱えながらも、世界的に普及が進む電気自動車(EV)。その一方で、日本での状況は立ち遅れているといわざるを得ない。
2023年11月の日本国内での軽自動車を含む乗用車全体の販売台数は、34万4045台だ。この数字は新型コロナウイルスの影響を受ける以前の、
・2018年11月:35万7307台
・2019年11月:31万5735台
に匹敵する。
ただし、この数字に占めるEVの割合は小さく、34万4045台のうち、EVが占める割合はわずか
「3.2%」
である。このうち、
・バッテリー式電気自動車(BEV)のシェア:1.9%
・プラグインハイブリッド車(PHV)のシェア:1.35%
である。
一方、ハイブリッド車(HV)を含む電動車全体のシェアは、前年の48.6%から53.6%へと大きく伸びている。この伸びは、環境意識の高まりや燃費の良さから、多くの消費者がHVへの乗り換えを選択していることを反映している。
本来、HVはEVへの橋渡し役として期待されるべきだ。しかし、実際はそうではなく、多くの消費者はHVに満足しているようだ。
国際エネルギー機関(IEA)が発行したリポート「Global EV Outlook 2023」によると、2022年の新車販売台数に基づく日本のEV普及率はわずか
「3%」
である。これは他国に比べて明らかに低い。欧州ではEVへのシフトが著しく、同リポートによれば欧州各国の普及率は高い順に
・ノルウェー:88%
・アイスランド:70%
・スウェーデン:54%
・デンマーク:39%
・フィンランド:38%
となっている。なお、中国は29%である。これに比べると、日本はもはや絶望的な低さである。
なぜ日本ではEVが普及しないのか。さまざまな理由が挙げられるが、結局、車両価格が高いからだろう。
EV普及の妨げとなる価格
その結果、日本も市場参入の機会を失っている。
2022年の世界のEV販売台数は約1020万台。このうち、約590万台は中国メーカーが占める。次いで米国が約99万台である。さらに欧州連合(EU)諸国では、ドイツが約83万台、英国が約37万台。一方、日本は約41万台である。割合で見ると、中国が世界市場の57.8%を占め、次いでEU諸国が25.5%。米国は9.7%。
日本はなんと
「1%」
である。なぜ日本ではEVが普及しないのか。これまで、次のような理由が挙げられている。
・車両価格が高い
・航続距離が短い
・電力供給インフラの不足
筆者(川名美知太郎、EVライター)は、なんやかんや車両価格の高さを最大の理由と考えている。
遠い未来の“主流”になると予想されるEVだが、
同クラスのガソリン車に比べて約100万円高い傾向にある。
小難しいことを抜きにして、この価格差が消費者にとって
購入の大きな障壁となっていることは想像に難くない。
一例として、軽EVの日産「サクラ」や三菱「eKクロス EV」を見てみると、
これらの車両は政府のクリーンエネルギー自動車(CEV)補助金を利用しても、
上級グレードのスーパーハイトワゴンとほぼ同じ価格である。
つまり、補助金があるとはいえ、ガソリン車と比較してEVを選ぶ際には、まだ大きな価格差があるのだ。
もちろん、維持費はガソリン車やディーゼル車より安いし、
動力系統の構造がシンプルで部品点数が少ないため、メンテナンス費用も安い。
それでも手を出さないのだ。
車両価格の高さに戸惑うのは、いうまでもなく
「今の日本が貧しい国」
だからである。実にシンプルだ。
低迷するGDP
2023年10月に発表された国際通貨基金(IMF)の最新予測によると、
2023年の日本の名目GDPはドルベースで
前年比0.2%減の4兆2308億ドル(約633兆円)となり、
ドイツ(4兆4290億ドル、8.4%増)に抜かれ、
4位に転落した。
名目GDPとは、一定期間に国内で生産された商品やサービスの総額(GDP)を、
その時点の市場価格で評価したものだ。「まぁドイツならいいか……」なんて考えてはいけない。
ドイツの人口は、日本のわずか
「約3分の2」
である。そんなドイツに抜かれたのだ。
かつて、日本は経済成長によって世界第2位の経済大国の地位を確立した。
しかし、1990年代以降の景気低迷により経済成長は鈍化。
名目GDPは2010年に中国に抜かれ、世界第3位に転落した。
2015年、当時の安倍内閣は名目GDPの増加を掲げたが、達成されなかった。
現在、中国の名目GDPは17兆7090億ドルで、日本は4倍近い差をつけられている。
日本経済研究センターが12月18日に発表した推計によると、経済成長は低迷を続け、
ひとり当たり名目GDPは2031年には韓国を、2033年には台湾を下回るという。
日本の経済課題
これに可処分所得(税金と社会保険料を除いた所得。個人が自由に使える手取り収入)の伸び悩みが加わる。
12月4日付の『日本経済新聞』電子版に掲載された記事では、
2000(平成12)年から2021年にかけて、可処分所得は
・米国:約2.6倍
・欧州:約1.6倍
に増加した。それに対し、日本は
「ほぼ横ばい」
にとどまったと指摘している。
「そのぶん物価が安い」なんて、何の慰めにもならない。
「ほぼ横ばい」の理由として、
収入の伸び悩みと社会保障負担の増加が挙げられている。
収入が伸び悩む一方で、物価高を反映してエンゲル係数(世帯消費支出に占める食費の割合)は
2023年1月から8月までの平均で
「27.3%」
となっている。今後、経済成長が期待できないだけでなく、
十分に食べていけるかどうかさえ心配の種になりつつある。
もうわかっただろう。
・航続距離が短い
・電力供給インフラの不足
確かにこれらもEVの普及を妨げている要因である。
しかし、結局のところ、日本人がEVを買えなくなっていることが最大の要因である。
ブルジョアでもない限り、一般庶民にそんな余裕は全然ないのだ。
ちなみに、国税庁の最新データによると、日本人の平均年収は458万円である。