時枝誠記・橋本進吉に感謝!
1900-67年。国語学者。東京帝国大学卒業。
京城帝国大学教授を経て、東京帝国大学教授。
ヨーロッパの言語学に依拠した明治以降の国語学に抗して独自の考察を深め、
「時枝文法」と称される体系を築いた。
本書(「口語篇」1950年、「文語篇」1954年)は、その集大成である。
他の主要な著作に、『国語学史』(1940年)、『国語学原論』(1941年)、『国語学原論 続篇』(1955年)など。
日本文法 口語篇・文語篇 (講談社学術文庫 2607)
2020/3/12 時枝誠記(著)
日本を代表する国語学者の代表作「口語篇」(1950年)と「文語篇」(1954年)を1冊に収録した初の文庫版。
ヨーロッパの言語学に依拠した明治以降の国語学に抗して
独自の体系を築いた稀代の学者・時枝誠記(1900-67年)。
人間の心の中で起きる言語の働きに注目し、
言語を実体的な対象として捉えることを拒む時枝は、
文の構成要素となってそれに対応する意味を生み出す「詞」と、
それを心の中で生きさせる働きそのものである「辞」を区別する。
そして、「辞」が「詞」を包含し、そのまとまりがより大きなまとまりに包含されていく
「入れ子構造」を基本に据え、「言語過程説」と呼ばれる独自の理論を築き上げた。
言語過程説は『国語学原論』(1941年)として発表されたが、
この一般理論は具体的な日本語を説明できなければ、単なる理論で終わってしまう。
だから、時枝は口語と文語のそれぞれについて、
文法の詳細な解説を形にする必要があった。
それこそが、本書にほかならない。
「時枝文法」の全容を明らかにした本書は、
日本語に潜む文法の実相を、広い読者に向けて、
全力で説き明かそうとした渾身の作であり、
日本語について考える上で避けて通ることのできない不滅の古典である。
読みやすさに配慮して旧字体は新字体に変えつつも、
かな遣いについては時枝自身が望んだ「旧かな遣い」を保持した本文庫版を、
前田英樹氏による情熱あふれる「解説」とともに味読する喜び。
【本書の内容】
[口語篇]
はしがき
第一章 総 論
第二章 語 論
第三章 文 論
第四章 文章論
[文語篇]
はしがき
第一章 総 論
第二章 語 論
第三章 文 論
第四章 文章論
注意すべき動詞活用例
解 説(前田英樹)
==或る書評より
欧米の概念思想は、明治になって、大量に輸入されて、それが「漢語」に翻訳された。
それを用いて、日本人は、高度な思考を、日本語を使って、できるように改良された。
大学教育も日本語だけで学ぶことができるのも「漢字仮名交じり文」という強力な道具の威力である。
また、世界中の思想も、日本語に翻訳されていて、日本語で理解できる。
これは「漢字」表意文字の造語力の凄さによる。
日本人は、この「漢字」「漢字の音」で、単語の区切りを認識する。
だから、英語のような分かち書きは必要はない。
「和語」と「漢語」と「助詞」などで区切りがはっきりと認識できるからだ。
更に、漢字だけをを拾い読みして、斜め読みして、大意が把握可能になる。
だから、
外国人に日本語を教える場合、
単語の「切れ目」を、明確に教えて、
それをキチンと「聞き取り」ができるように、練習させなければならない。
国語100年:
20世紀、日本語はどのような道を歩んできたか
2002/4/1 倉島長正(著)