「歴戦の猛将」が語る日米同盟の変化 日本は「一緒に戦う国にもなると理解している」「時間の利は中国に」防衛力強化急げ

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夕刊フジ

シンポジウムで講演するローレンス・D・ニコルソン米海兵隊退役中将=15日、都内

【ニュース裏表 有元隆志】 米海兵隊退役中将で、元第3海兵遠征軍司令官のローレンス・D・ニコルソン氏は今も「熱い男」だった。15日に、旧陸軍将校や陸上自衛隊幹部のOBで組織する公益財団法人「陸修偕行社」主催のシンポジウムで、日米同盟の強化にかける思いを聞いた。

 

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ニコルソン氏が海兵隊中尉として初めて日本の地を踏んだのは1981年。東西冷戦の真っただ中で、「(日本防衛のために)戦わなければならないかもしれない」と思っていた。 在沖米軍トップとして3年間勤務したが、米軍基地に対する反対論が強い地元自治体やメディアとの間で、時に軋轢(あつれき)が生じても、「同盟のために必要だ」と思ったことは日本側に伝えた。 現在、ニコルソン氏の息子2人を含め、現役の海兵隊員たちは、日本防衛のために戦わなければならないかもしれないが、同時に日本は「一緒に戦う国にもなると理解している」という。米軍内の大きな認識の変化は、昨今の日本の防衛力強化と、それに伴い自衛隊と米軍による共同訓練が増えたことも影響しているだろう。 筆者はシンポジウムのモデレーターとして、ニコルソン氏には13日(日本時間14日)に起きたドナルド・トランプ前米大統領銃撃事件をはじめ、大統領選についてどう思うか聞きたかった。 ニコルソン氏が仕えたのが元海兵隊大将で、トランプ政権で国防長官を務めたジェームズ・マティス氏だった。マティス氏はシリアからの米軍撤退などをめぐってトランプ氏と対立し、国防長官を辞任した。マティス氏ら「大人の枢軸」と呼ばれた面々と、トランプ氏との溝は解消されないまでも、現在どの程度なのか探りたかった。 ニコルソン氏は以前、マティス氏とのエピソードを教えてくれたことがある。ニコルソン氏は2004年9月、イラク戦争の激戦地ファルージャで武装勢力による攻撃で重傷を負った。ワシントン近郊の海軍病院に転送されたとき、看護師から「昨日、ジェームズという男性があなたの横に座って2時間ほど本を読んでいました」と言われた。これを聞いたニコルソン氏は「この人にはどこまでもついていく」と誓ったという。 ニコルソン氏は今もマティス氏と連絡を取り合っているが、この日は「政治を論じるのは私たち戦士の領分ではない」と述べるにとどまった。「トランプ氏と、ジョー・バイデン大統領が唯一合意しているのが中国政策だ」と言及した。

 

01年9月11日の米中枢同時テロ後、米国はテロに焦点を当て、中国の急速な軍事的発展に強く関心を払ってこなかった。ニコルソン氏は「われわれは砂の中に頭を突っ込んでいた」と表現した。

「時間の利は中国にある」という同氏の忠告を重く受け止め、防衛力強化を急ぎ、米軍との連携を密にする必要がある。

 (産経新聞特別記者)

 

 

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