「習近平は弱い人間なんです」駐車場で突然、数人の男たちに囲まれ…次々と失踪する在日中国人…日本を狙う中国スパイのヤバすぎる実態(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 

「習近平は弱い人間なんです」駐車場で突然、数人の男たちに囲まれ…次々と失踪する在日中国人…日本を狙う中国スパイのヤバすぎる実態

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現代ビジネス

コロナ禍が終わっても

 

 コロナ禍が終わり、円安の風に押され急増する海外観光客に比べて、激減していた中国人観光客。しかし、今年の春節は前年比12,6倍の459、400人へと、ピーク時には劣るが、急激に回復の兆しを見せている。

 

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 しかし、逆に中国本土を訪れる日本人の数はいまだ最悪の状態だ

 

大手旅行代理店も中国へのパッケージツアーを中止したままで回復のメドがまったく立っていない。  その理由は、観光旅行にもビザが必要になった点や円安の影響が大きい。そして渡航を控えるもうひとつの理由が、昨年施工された「改正反スパイ法」への恐怖だ。  2014年11月に成立したものを昨年7月に「その他の国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品の窃取」など40条から71条に大幅に追加修正された。なかでも昨年改正された「国家の安全と利益」は具体的で明確な定義がなく、国家安全部のさじ加減ひとつで「中国の安全を脅かす」と解釈されて「スパイ罪」が確定されてしまう。大変危険な法律だ。  しかし、現実的には中国ビジネスに関わる人以外の日本人は、その危険性や実態をあまり実感していない。外務省も海外安全ホームページで「改正反スパイ法」の危険性を注意喚起しているが、多くの人は「ビザを取るのが面倒だ」とか「円安で物価が高く感じるからとりあえず、行くのはやめよう」という程度が本音だろう。事実、中国以外のタイなどかつて日本人であふれていた観光地も同様に日本人観光客が激減している。  「スパイ防止法」が存在せず、日頃からインテリジェンス活動などにはまったく関心のない日本社会では仕方ない事かもしれない。しかし、昨年3月のアストラル製薬社員の拘束から、今年に入って神戸学院大学の胡士雲教授、亜細亜大学の范雲濤教授と相次いで何か月も連絡の取れない失踪状態が続き、タイミングを見計らったように2019年に拘束された北海道教育大学の袁克勤教授も有罪判決と懲役6年の刑期が今年5月に公表された。  そして今年3月には香港でも「香港国家安全維持法」をさらに拡大・補充した「国家安全条例」が異例の速さで全会一致で可決、施行された。早速5月にはこの法律で初めて男女6人が拘束された。オーストラリア政府は「意図せず拘束される恐れがある」と自国民に香港への渡航を警告し、すでにアメリカ含む外資系企業の撤退も加速している。もうはや、自由経済の象徴だった国際金融センターの香港は消滅したといえるだろう。トランジット空港としての利用さえも今後は敬遠されるに違いない。  この不穏な流れはすべて習近平政権誕生時からの「総体的国家安全保障観」の拡大に基づいた強権政策の一環だ。経済活動から国民の監視義務まで含めた「国家安全法」に沿って、次々と発表され施行される各種国家安全関連の法律。習近平の手段を択ばない国家・社会統制への執着心と異様さは、習近平第二次政権でその集大成として加速し始めている。そして我々日本社会もすでに新たなチャイナリスクの渦に巻き込まれ始めているのだ。

 

 

 

人権無視の取り調べ

劉勝徳 岡山華僑総会 会長

 亜細亜大学范教授の失踪を受けて林官房長官は「今後も動向を注視していく」と国会で答弁した。が、実はいっさい、公表されず国家安全部に闇から闇へと葬られた中国人たちも数多く存在する。  島根県出雲に生まれ育った在日華僑二世の劉勝徳氏(78歳)。岡山華僑総会会長として在日華僑の交流や日中友好に尽くした華僑界の重鎮だ。生まれてから日本の学校教育を受け、日本食を好み、親族すべても日本で暮らす彼は、日中交流活動での訪日客の対応は多いが、訪中の機会はあまりなかった。そんな劉氏が8年前、中国蘇州の友人の病院長から「最先端技術の人間ドックを受けないか」と誘われる。一泊2日の蘇州観光も含めた医療ツアーだ。さらに「飛行機代も出すよ」と言われた、という。  親しい友人だった院長の言葉に何ら疑問を持たず、劉氏は蘇州に向かった。そして検査を終えた翌日、蘇州の名所「拙政園」を観光、昼食の後、空港に向かおうとした駐車場で突然、数人の男たちに囲まれた。「蘇州国家安全部」を名乗る彼らは、驚く劉氏に目隠しをして車に乗せ、市内をぐるぐる回って場所を特定されないように「居住監視」といわれる尋問用のホテルに移動した。  この窓もない一室で24時間監視され、尋問され続ける「居住監視」は中国で拘束されたすべての人たちが経験する人権無視の国家安全部専権の最悪の取り調べ方法だ。拘束容疑の説明も理由もいっさい伝えられない。大使館含め外部との連絡も一切できない。  同様に6年間スパイ容疑で逮捕され収監された、元日中青年交流協会理事長・鈴木英司氏なども「誰とも接触できないこの時期が一番辛かった」と告白している。  自殺防止のため鉛筆もテレビも一切ない。シャワーのドアもない。劉氏はうそ発見器にもかけられ、「銃殺もあるぞ」「最低刑期は10年だ」などと、朝昼晩と厳しく脅された。「人生ここで終わるのだ」と劉氏は覚悟した、という。  その彼らが連日尋問してくるのは、現在の中国外交部トップの「王毅」の情報だったという。蘇州でひと月、新幹線で天津に移動して3か月と、取り調べは続いた。  1989年、当時の最先端技術を導入した瀬戸大橋の視察に李鵬総理や共産党幹部が来日する際、外交部から先遣隊として事前に派遣された王毅氏を幹部から紹介された。その後、個人的にも懇意になり日本大使となって再来日してからも講演会を依頼するなどとても親しい関係だった。しかし、政治的な話は一切しなかったという。なぜ安全部が王毅氏の行動や交友関係を探るのか、その背景にどんな権力闘争や習近平政権との確執があったのか、劉氏にはまったくわからなかった。当然、なぜ自分が狙われたか、なども知る余地もなかった、という。

 

 

居住監視の恐ろしさ

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 当時、王毅外相はアメリカで台湾関連の発言が物議を醸していた。蔡英文新総統就任に関した講演で、所轄する国務院台湾弁公室は「越権行為だ」と抗議した。それが要因なのか? いや、知日派ゆえの何らかの確執が習近平の怒りをよんだのか? なぜ、蘇州の安全部と天津の安全部が絡んだのか?   勝手な憶測ばかりで真相は全く藪の中だ。  この「居住監視」を利用した拘留、尋問は自由な延長期間も含め中国・国家安全部だけに認められた独断と偏見で行われる捜査手法だ。つまり、本丸のターゲットはまず拘束せず、その証拠や繋がる情報を得るために「別人を拘束」する。もちろん、確実な証拠を固めて直接「本丸」を拘束し逮捕する場合もある。しかし、多くはこの「別人拘束」で情報を引き出そうとする。  携帯電話やパソコン、手帳などの情報はすべて押収される。その中には当然、華僑関係者だけではなく、政治などには関係ない普通の多くの日本人たちの個人情報も含まれる。「拘束されたのは中国人だから」と他人事のように安心してはいられない。日本人の様々な個人情報やビジネス情報が漏洩する可能性も大きい。日本人も同様に知らないうちに危険な中国諜報活動の餌食になっているのだ。  そして狙った情報が何もでなければ解放するか、面子を守るため無理やり容疑をつけて起訴する。その「空振り」の責任も全く問われない。劉氏も合計4か月の拘留後、解放された。帰国の際には空港で天津安全部の人間に「日本での華僑運動を頑張ってください」と励まされたという。  いまや習近平の右腕として戦狼外交の代表選手のような王毅外相だが、中国共産党の権力闘争の闇は深い。外交部は海外人脈との接触が多く安全部のターゲットにもなりやすい。また歴代外相の政治的地位も他国に比べて共産党政権では決して高くはない。

「空振り」の被害者

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 その火の粉を浴びた劉氏は、「表に出ないが他にも国家安全部に理由もなく捕まった華僑はいっぱいいる。帰化していない華僑は中国籍なので当然、日本政府にはなにも期待できない。中国側も自国民なので拘束の情報をいっさい出さない」という。しかし、彼らは中国にいる家族や親族への報復を脅され、一切口をつぐむ。そして闇から闇へ葬られあらゆる情報が国家安全部に流れていく。  2016年ごろ大阪領事館の隣で商売をしていたRさんは、突然拘束され6年の実刑判決を受けた。刑期を満了して出所したが日本にしか親族のいないRさんは帰国を希望した。しかし、パスポートの期限が切れ、日本への再入国への許可も中国側が認めず、人生を悲観して北京で自殺した、という。  そのほかにも、劉氏が把握しているだけでも居住監視で何か月も拘留され「空振り」で解放されたり、起訴され実刑を受けた人などが何人もいるという。しかし、彼らは一切報道されていない。  今年の春節、広島華僑総会のイベントで、大阪総領事・薛剣氏の隣に座った劉氏は、彼に友人で親しい神戸学院大学の胡教授が失踪している件について尋ねた。しかし、胡教授とも懇意にしていた総領事の返事はあまりにそっけなかったという。逆に彼らは劉氏はじめ失踪した胡士雲教授の家族たちを避けるようだった、ともいう。

 

 

  胡士雲教授の事実関係を調べる気もなかった、と劉氏は訝る。劉氏が過去に拘留されたことも彼らはほとんど把握していない。確かに領事館にも安全部の情報はまったく伝えられない。そして領事館ほか外交部も北京の国家安全部を恐れ、忖度し、自分たちの保身だけを考えている。

 

 

  「胡士雲さんがいま自分が経験した居住監視下に置かれていると想うと心配で心が痛い」と劉氏は言う。そして、厳しくこう言った。「しかし、領事館は中国政府の人間として、我々を守る義務がある。はっきり安全部に状況を確認するべきです。いつまでもこんな習近平の独裁恐怖政治は許されるわけがない。習近平は弱い人間なんです。こんな状況では国が持たないでしょう」  習近平が掲げる「総体的国家安全保障観」。これこそがいま、中国社会の「総体的国家危機観」を急速に増殖させているのだ。

鈴木 譲仁(ジャーナリスト)

 

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