昔、鎌倉での講演会で、

講師の三國連太郎に質問した

「浄土とは何か?」と。

大分、長い時間、沈黙があって、ようやく応答があった、

彼は『歎異抄』を暗記していて、「浄土」の言葉を確認していたのである。

 

その直前に、上田義文の『浄土』という本を読んだ直後だったので、

思わず質問したのであったので、

自分が、頭でしか理解していないことに、恥ずかしくなった。

 

なお、司会は、丸山照雄だった。

 

 

 

親鸞から親鸞へ 〔現代文明へのまなざし〕

2013/6/10 野間宏,三國連太郎(著)

 

なぜ今、「親鸞」なのか。
戦後文学の巨人・野間宏と稀代の“怪優"・三國連太郎が20数時間をかけて語りあった熱論の記録。
三國連太郎初監督作品「親鸞・白い道」(カンヌ国際映画祭審査員特別賞)の核心を語り尽くした幻の名著、

装いを新たに待望の復刊!

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新版にあたって
1 環境破壊の現代を切り裂く――映画『親鸞・白い道』に寄せて 野間宏
2 今、「親鸞・白い道」を撮り終えて 三國連太郎
3 野間宏さんとの出会い 三國連太郎

I 親鸞から親鸞へ
一 親鸞へ――自分を疑う・三國連太郎
二 親鸞から――自然・野間宏
三 現代の状況と課題
四 庶民思想の凝結――法然と親鸞
五 共同体づくり
六 法然と当時の仏教権力の構造
七 当時の越後の国際的状況
八 一念義と多念義
九 国家暴力と親鸞

II 映画「親鸞・白い道」をめぐって
一 はじめに――ラストシーンから映画は始まる
二 日本文化観をからかう――田楽の場合
三 親鸞と太子信仰――射鹿
四 百姓と行者――大自然
五 太子堂から土炉の爆発へ――綾衣と一斗
六 性と暴力――恵信とちよ
七 実朝暗殺と弁円――親鸞の対峙
八 宝来の死――差別と公害
九 現代と親鸞――いまなぜ親鸞か

III 映画的視点から現代を問う
一 カンヌ映画祭をめぐって
二 「親鸞・白い道」制作現場から
三 映画づくりの姿勢を問う――映画「ミッション」と「親鸞・白い道」
四 三國連太郎、次作を語る――「家」から「個」へ

〈補〉

鎌倉仏教と現代――「親鸞・白い道」の時代背景を読む 丸山照雄
鎌倉仏教の範囲/旧仏教と新仏教のかかわり/仏教の成立史的意味/
信仰主義の成立/仏教の歴史意識/宗教倫理と自我の形成/知識人にとっての親鸞/
世界史成立の普遍性と仏教/民族と文化共同体/アイデンティティの模索と仏教

あとがき――野間宏先生との対談記録の整理を終えて 三國連太郎

親鸞略年譜/編集後記/新版への後記

 

●野間 宏(のま・ひろし)
1915年2月23日、神戸市生まれ。

在家門徒たる父、卯一の影響下、幼少時より親鸞の思想に触れる。

三高在学中に詩人、竹内勝太郎と出会い、富士正晴、竹之内静雄らと同人誌『三人』を創刊。35年、京都帝国大学文学部仏文科に入学。西田幾多郎、田辺元の哲学に傾倒する一方、マルクス主義運動に参加。38年に大学卒業後、大阪市役所に就職、社会部福利課で融和事業を担当。水平社以来の被差別部落の活動家たちと深い交流を結ぶ。42年1月、応召しフィリピン戦線に従軍。

帰国して原隊に復帰後、治安維持法違反容疑で陸軍刑務所に収監される

44年2月、富士光子と結婚。
戦後すぐに文学活動を再開し上京。46年「暗い絵」で注目を集め、「顔の中の赤い月」「崩解感覚」など、荒廃した人間の身体と感覚を象徴派的文体で描き出し、第一次戦後派と命名された。人間をトータルにとらえる全体小説の理念を提唱。52年、『真空地帯』で毎日出版文化賞を受賞。64年10月、日本共産党除名。71年には最大の長篇『青年の環』を完成し、谷崎賞を受賞、および73年にはアジアのノーベル賞といわれるロータス賞を日本人として初めて受賞した。75年2月より雑誌『世界』に「狭山裁判」の連載を開始する(~91年4月。没後、『完本 狭山裁判』として藤原書店より97年刊行)。晩年は、差別問題、環境問題に深くかかわり、新たな生命観・人間観の構築をめざした。著書に『野間宏全集』(全22巻・別巻1、筑摩書房)『野間宏作品集』(全14巻、岩波書店)『作家の戦中日記』(全2巻、藤原書店)がある。89年朝日賞受賞。

1991年1月2日死去

●三國連太郎(みくに・れんたろう)
1923年1月20日、群馬県太田市生まれ。現在の静岡県伊豆市で育つ。

43年12月、徴兵検査の通知が届き甲種合格。逃亡を図るものの、

佐賀県唐津呼子で憲兵に捕まり、中国大陸の前線へ送られる。

漢口の兵器勤務課に配属され、この部隊で終戦を迎える。
戦後は様々な職に就いたあと、スカウトされて松竹大船撮影所に演技研究生として入る。51年、木下恵介監督の「善魔」でデビュー、役名の「三國連太郎」を芸名にする。以後、「本日休診」(52年)「ビルマの竪琴」(56年)「異母兄弟」(57年)「荷車の歌」(59年)「大いなる旅路」(60年)「飢餓海峡」「にっぽん泥棒物語」(65年)「神々の深き欲望」(68年)

「戦争と人間」(70-71年)「襤褸の旗」(74年)「金環蝕」(75年)「復讐するは我にあり」(79年)「マルサの女2」(88年)「利休」(89年)「ひかりごけ」(92年)「三たびの海峡」(95年)「わが母の記」(2011年)など多数に出演し、主演男優賞、男優演技賞をはじめ、数々の賞を受賞。「人間の約束」(86年)「美味しんぼ」(96年)で子息の佐藤浩市と共演。

「釣りバカ日誌」シリーズ(1988-2009年)では20年にわたり“スーさん"役を演じる。

企画・原作・脚本・初監督を務め、15年の歳月を費やした

「親鸞・白い道」(86年)は、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞

84年に紫綬褒章、93年には勲四等旭日小綬章を受章。

映画、テレビドラマで社会派作品から娯楽大作まで幅広い役をこなす一方、

仏教、差別問題などに深い関心をもち、

著作、講演、社会運動への協力などを通して関わり続けた。

2013年4月14日死去。