またも外れた中国指導部の目論見、生産増強で経済問題は深刻化するばかり(Forbes JAPAN) - Yahoo!ニュース

 

 

またも外れた中国指導部の目論見、生産増強で経済問題は深刻化するばかり

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Forbes JAPAN

中国・上海の港(Shutterstock.com)

先見の明があると賞賛に値する政治家はほとんどいないが、中国の指導者たちは、将来を見通す力が大多数の人より弱いようだ。現在も続く不動産危機で経済が停滞し、消費マインドは冷え込み、個人事業主らは慎重になっている状況にあり、指導者らは製造業でテコ入れを図ることにした。

 

中でも注力するのは半導体、電気自動車(EV)のバッテリー、ソーラーパネル、風力発電装置など「新たな質の生産力」と呼ぶ分野だ。 中国の経済政策はいまだにかなり統制的なものであるため、指導部の指示どおりに資金がこうした分野に注入された。

 

この強化によって生産されたものがどこに向かうかは、誰も考えていなかったようだ。

低迷する国内経済は生産したものを吸収できず、西側の先進国はさまざまな理由から中国との貿易を敬遠している。

 

中国は今、これらの分野で、吸収できる以上に生産する能力を持っている。この生産能力はすでに多くの問題を抱えている中国の経済にとってあまり助けにならない。 米国や欧州、そして日本はいずれもこの厄介な過剰生産能力について注意を喚起している。欧州連合(EU)は中国が安価なEVを欧州市場でダンピング販売しているのは過剰生産のためだと明確に指摘し、実際、EUは中国産EVにかなりの追加関税を課す構えを見せている。 予想できたことではあるが、中国の指導部は過剰生産を一切否定している。習近平国家主席の最近の発言によると、「いわゆる過剰生産の問題は存在しない」という。中国製のEVが欧州で数多く販売されているとすれば、それは単に価格に対して品質が良いためで、欧米の製品より競争力があるからだと習は主張する。中国製EVの競争力については習の言い分は正しいかもしれないが、そのことと過剰生産はあまり関係がない。この点に関しては、中国からの一連の情報で、習の過剰生産の否定は誤りであることが示されている。 「新たな質の生産力」の製品に指定されていない鉄鋼でさえ、過剰生産の兆候がある。鉄鋼生産は国内の需要をはるかに超えている。2001年の中国の鉄鋼生産量は国内消費量とほぼ同じだったが、2023年には生産が消費を5%上回り、今年は8%上回りそうだ。もちろん、こうした余剰の多くは不動産危機と建設活動の停滞を反映している。それでも、生産が過剰なのだ。

 

 

この失敗はしばらく尾を引き、現在抱えている別の経済問題をさらに深刻なものにするだろう

中国が注力している分野の1つであるソーラーパネルに目を向けると、生産超過の幅はもっと大きい。

国内でのソーラーパネル設置は、昨年の50ギガワット(GW)から今年は90GWとなることが見込まれ、急増している。

だが生産量の増加幅は設置をはるかに上回っており、今年の生産は150ギガワット超になりそうだ。

中国が余るソーラーパネルをどこに売るつもりなのか、なぜ指導部は生産強化を指示する際に販売先を考えなかったのか、疑問に思うのはもっともだ。

 これらの数字ほど直接的ではないものの、他の指標でも同じような状況が示されている。

昨年、「新たな質の生産力」を推し進めようとしたとき、電気機器とEVへの投資が急増し、電気機器で40%、EVで25%増加した。いずれも製造分野の一般的な増加幅である5%増をはるかに上回った。

 

 そうした投資の増加は正当なものでなかったことを発表するかのように、今年の投資額は減り、製造業全体への投資の増加幅よりもやや低調に推移している。

だが、その前の大幅な投資は明らかに生産過剰をもたらした。

 

それを直接示すデータはないにしても、製造業の粗利率の低下がその証拠だ。

現在、粗利率は長期の平均を2ポイントほど下回っている。

 中国の経済が急成長していた時代には、過剰生産の問題はわずか1、2年の需要増で改善された。

 

あるいは、中国が世界の工場であったなら、過剰生産は短期間で消滅しただろう。

 

だが中国経済は急成長しているわけでもなければ、世界の工場でもない。 そのため、生産能力の増強というこの失敗は今後しばらく尾を引き、現在抱えている別の経済問題をさらに深刻なものにするだろう。

 

西側諸国や日本は、少なくともかつてと同程度に中国との貿易から距離を置くようになっているため、中国の需給の不均衡を解消するにはさらに時間がかかりそうだ。

中国の指導部が国内の経済問題を悪化させたのは今回が初めてではない。

Milton Ezrati

 

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