「プーチン電撃訪朝」でもまさかの「ロシア空軍による事前偵察ゼロ」...そこから推測される「ロシアの窮状」と「中国の動向」

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現代ビジネス

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 19日の未明、深夜2時過ぎという時刻にロシアのプーチン大統領が北朝鮮の首都平壌(ピョンヤン)の空港に到着し、金正恩総書記がこれを出迎えた。 

 

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 一国の首脳が他国を親善訪問する時間帯として、これは極めて異例である。  しかも、このような時間帯に到着する相手を、受け入れ国の首脳が直接空港まで出迎えに行くというのも尋常ではない。まさに、これは「戦時下の国家元首が警戒心を強めつつ、重要かつ緊急な用件で同盟(に相当する)国を訪れた」という在りようなのだろう。そして、このような在りようを裏付けるような軍事的活動が、わが国や朝鮮半島周辺で起きている。

 

  前編記事『「電撃訪朝」のウラでプーチンと金正恩が最も恐怖していた「米韓特殊作戦部隊」の正体』より続く。

 

  米軍は、(プーチン大統領が訪朝するとされた)18日、グアム周辺で米空軍のステルス戦略爆撃機「B-2:スピリット」、ステルス戦闘機「F-22:ラプター」、米海兵隊の垂直/短距離離着陸戦闘機「F-35B」らが編隊で飛行している様子を公開した。これは、太平洋地域で7日から行われている米軍の大規模な実動演習「バリアント・シールド」に参加していたものである。  本演習は、グアム周辺などで隔年実施されているものだが、今回初めて日本国内を含めた地域で、陸海空の自衛隊からも約4,000人の隊員が参加して行われた。そして、グアムなどから飛来した米軍戦闘機などが、初めて青森県の海上自衛隊八戸基地や宮城県の航空自衛隊松島基地に展開し、航空自衛隊戦闘機などと共同訓練を行った。

北朝鮮の動向

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 一方で北朝鮮は、このような日米韓の動きに対し、何もせずに指をくわえて見ているはずはない。このような活動に対抗して、弾道ミサイルを実戦配備につけていつでも発射できる態勢をとっていたであろうことは容易に想像がつく。  というのも、在日米空軍嘉手納基地に展開してきた弾道ミサイル追尾専用機であるRC-135S「コブラボール」が、14日以降、連日北朝鮮東方沖の日本海上空で偵察活動を行っていることが(民間の航空機追跡サイトで)確認されていたからだ。  これは、何らかの関連情報によって、北朝鮮で弾道ミサイルの発射兆候があることを米軍が探知していることを示している。特に、この機体が偵察に来るのは、通常長射程の弾道ミサイルの発射兆候がある場合であり、今回米本土まで届くICBM級弾道ミサイルの活動が確認されていた可能性もある。

 

 

 

 

 

極東ロシア軍の動向

統合幕僚監部報道発表資料より(24/6/19)

 これら米韓の動きに対応しているのは、北朝鮮だけではない。  ロシア国防省は18日、ロシア太平洋艦隊による約40隻の艦船、約20機の航空機(海軍のヘリKa-29、Ka-27等、対潜哨戒機Tu-142M3、II-38等)が参加する海軍演習を日本海、オホーツク海及び太平洋の海域で行うと発表した。

 

  しかし、実際にわが国周辺で確認されたのは、ロシア海軍の駆逐艦「ウダロイI級/8,500トン級」1隻(艦番号「548」)と、戦車揚陸艦「ロプチャーI級/4,000トン級」1隻(艦番号「066」)及び戦車揚陸艦「ロプチャーII級/同」1隻(艦番号「077」)の計3隻のみであり、海上自衛隊が津軽海峡を通狭して太平洋へ進出したこれら3隻の警戒に当たった。  つまり、これが、今の極東ロシア軍にとってできる精一杯の対抗措置だったのだろう。  それにしても、このような日本海の情勢にも拘わらず、この周辺においてロシア空軍の偵察活動や戦闘機による警戒飛行などの活動が全く行われなかったのは驚きである。本年3月4日の拙稿(相次ぐ空軍の主力損失でロシア軍の国防力は「ガタ落ち」した)で触れたようなロシア空軍の窮状は、想像以上に深刻なのかも知れない。https://www.mod.go.jp/js/pdf/2024/p20240619_01.pdf

近い将来に歴史の審判は下るだろう

 今回のプーチン大統領の訪朝がもたらすわが国などへの影響については、様々な識者がすでに述べられているので、ここであえて触れることはしない。

 

しかし、日米韓の結束の強化やNATOを含む民主主義国間の軍事的連携の強化で、

ロシアや北朝鮮がかなり苦しい立場に立たされ、

それが今回のように露朝の軍事同盟化へと駆り立てていることだけは間違いないだろう。

 

  これは、金総書記にとっては大きな賭けである。

 

  今のところ、少し引いてこの露朝の姿勢を静観している中国。

 

場合によっては、トランプ政権が誕生するかも知れない米国。

 

そして、何よりも置き去りにされているロシアや北朝鮮の国民。

 

これらすべてが今後の露朝情勢を左右する要素となり得る。

 

  この会談が、露朝両国にとって

復調の兆しであるのか、崩壊の兆しであるのか、これが判明するまでには、

それほど長くかからないような気がする。

 

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  【さらに読む】「プーチン訪朝」「ロ朝軍事同盟」に中国はどう反応したか…?

 外交部報道官のあまりにそっけないコメントの真意とは

鈴木 衛士(元航空自衛隊情報幹部)

 

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