【ウクライナの反撃開始】戦況を左右するクリミア半島、アメリカ兵器使用制限緩和でロシアへ打撃に(Wedge(ウェッジ)) - Yahoo!ニュース

 

【ウクライナの反撃開始】戦況を左右するクリミア半島、アメリカ兵器使用制限緩和でロシアへ打撃に

配信

Wedge(ウェッジ)

(Dmytro Sheremeta/gettyimages)

 Economist誌が「クリミアでウクライナはロシアを負かしている。

半島はロシアの兵力にとり死の罠になってきている」との解説記事を掲載している。

その要旨、次の通り。

 

  4月のバイデン政権の610億ドルの軍事支援パケージは影響を与えている。特に300キロメートル(㎞)の射程を持つATACMSの到着はウクライナがクリミアの如何なる目標も打撃できることを意味する。

 

  もっと大きな意味があるのは、5月30日、バイデン大統領がロシアの核のエスカレーションを懸念し、米国の兵器でロシア領内の軍事目標を攻撃することに課していた制約を緩和したことである。

 

  クリミアでのウクライナの作戦の有効性は、何ができるかを示している。

欧州駐留米軍の元司令官ホッジ将軍によれば、

ウクライナ側は、クリミアをロシア軍にとり居住不可能にしている

 

  プーチンは2018年以来ケルチ橋でロシア本土とつながるクリミアを不沈空母と見てきた。

その兵站、空軍基地、セヴァストポリの黒海艦隊は

ウクライナの南部を支配し、その重要な穀物輸出路を閉鎖できた。

 

プーチンはクリミアの軍事インフラに巨額を投じてきたが、

そのすべてがいま脅かされている。

 

  英国の戦略家ローレンス・フリードマンによれば、

クリミアはロシアにとりそこで守るべきものが多すぎて、弱点になっている。

クリミアは将来譲歩を引き出すためにプーチンに圧力をかける最善の道を提供する。

 

  ウクライナがやろうとしているのは

クリミアをプーチンにとり資産ではなく重荷にすることである。

目的はクリミアを孤立させ、

南部ウクライナからロシアの海・空戦力を追い出し、

兵站を窒息させることである。

 

 

 ウクライナは既に無人機とミサイルにより、強大であった黒海艦隊の半分の行動力を奪ったかもしれない。残された全ての軍艦は300㎞離れたロシア本土のノヴォロシースク港に移転を強制された。ノヴォロシースクも5月17日、無人機で鉄道の駅や発電所、海軍基地が攻撃された。  4月以降、ウクライナはクリミアのジャンスコイ空軍基地、ベルベクの空軍基地などのロシアの軍事拠点にATACMS攻撃を加え大きな被害を与えている。  北大西洋条約機構(NATO)同盟国の衛星情報、空中偵察、領土についてのウクライナ側の深い知識と地上にいる秘密部隊で、ウクライナ側はすべての動きを把握している。ATACMSの到着とウクライナの無人機の性能向上で、クリミアでの航空機、道路や鉄道は射程内にある。

 

  ホッジ将軍によれば、ウクライナ側は、準備できればケルチ橋を取り壊すことに自信を持っている。

 

 *   *   *

 

クリミアを失うことのプーチンのダメージ

 この解説記事はウクライナ側がクリミアでの戦いを有利に進めていることを的確に描写している。ウクライナ戦争の戦線は長く、多くの場所で戦いは行われているが、クリミアでは、米の長距離ATACMSの到着とウクライナの海空無人機の活躍でウクライナ側が有利になってきていると思われる。  黒海艦隊はこの記事が指摘するように約半分が活動不能になり、残りの艦隊はロシア領のノヴォロシースク港に避難しているような状況にある。クリミアの空軍基地もウクライナ側の攻撃の対象になっている。防空のためのS-400システムも攻撃されている。

 

  クリミアはロシアにとっての戦略的資産から戦略的重荷になってきているとのフリードマンの評価やホッジ将軍の評価は的を射ているだろう。

 

  プーチンは14年、

一兵も失うことなくクリミアをロシアに併合することに成功し、

プーチンの国内での支持率も急騰した。

プーチンにとり、クリミアを失う事は心理的に受け入れられないことに思われる

 

 

 クリミア併合後、プーチンはロシア本土とクリミアを結ぶケルチ橋を建設、

自ら車を運転して渡り初めをしたが、

このケルチ橋がウクライナの攻撃で破壊されることも心理的に受け入れがたいことであろう。

ただホッジ将軍が言うように、

今やそれは現実になる可能性はかなりある。

 

  プーチンはその場合、核兵器の使用を含め、

極端な対応に出る可能性も排除できないと思われる。

プーチンをどう抑止するか、米国を含む西側の対応をシミュレーションしておく必要があろう。

プーチンのおかしな発言

 プーチンを今度のウクライナ侵攻に向かわせたのは14年のクリミア併合の成功体験と見て間違いないだろう。

プーチンは、ウクライナ侵攻と併合も同じように簡単にできると考えたから、

ウクライナ戦争を始めた。

 

クリミアでのウクライナの反撃がこの戦争の終りに貢献するのであれば、皮肉な結果になるだろう。

 

  なおバイデンの米国供与兵器のロシア領内攻撃への使用の一部容認に対して、

プーチンは「米国などに対し同じことをする。

ロシアの兵器を米国攻撃に使えるように供与する」としているが、

プーチンは少しおかしくなっている気がする。

 

ロシアはウクライナを侵略し、ウクライナは自衛権行使をしている

その中での供与兵器の使用基準の話と、

侵略などしていない米欧に対し、

他国が自衛ではなく武力行使をするために

ロシアが兵器を供与する話とは全く違う。

岡崎研究所

 

 

【関連記事】