仏教瞑想論

2008/12/20 蓑輪顕量(著)

 

体験の宗教・仏教,

その瞑想の具体的なあり方を明快に語り,

あわせて,東アジア世界の瞑想修行を示し,

現代アジアに展開する現在の瞑想の姿を描く,

画期的な「仏教瞑想」論。

 

1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科単位取得満期退学。博士(文学、東京大学)。

現在、東京大学人文社会系研究科教授。

主な著書に、

『中世初期南都戒律復興の研究』(法藏館)、『日本仏教の教理形成』(大蔵出版)、

『仏教瞑想論』『日本仏教史』(春秋社)など。

 

 

==或る書評より

仏教関係の本というと、「思想」や「教理」の視点から論じるものが多いが、

本書は「瞑想」という体験・実践の体系から、

その来歴を辿ろうとする斬新な試み。

著者の筆致は、ペダンティックではなく、

生きた人間という読者を見据えて語りかける。

全体は、4部構成で、

(1)仏教瞑想とはなにか、

(2)東アジア世界の仏教瞑想、

(3)日本における瞑想修行、

(4)現代アジアの瞑想の実践、

というテーマをわかりやすく紐解いていく。

仏教の瞑想を本格的に述べた一般向けの本としては、最良だろう。

ただ、仏教を、

心の観察」、つまり、自己の心の問題

扱う行という視点から捉えるあまり、

「慈悲の心」が取り残されている感は否めない

(その点では、利他行よりも、

自己の修養に集中する上座部系のアプローチで、

仏教史全体を解説しているように感じる)。

 

他者への暖かい眼差しを持ち、何があっても平らかに生きることのできる、

そういった人間になることが仏教の目標」(205)というならば、

「瞑想」がどのように「慈悲の涵養」(「他者への暖かい眼差し」)と関わるのか

を説いてほしかった。

また、そのような意味での瞑想は、

根本仏教ないし上座部仏教にはないのだろうか。

この点は続編に期待したい。

 

 

==或る書評より

とても分かりやすい言葉で書かれています。しかし、

解説の行間に含まれる意味の深さが伝わり、

著者自身がかなりの訓練の進んだ方であろうと推測され、

テーラワーダ仏教の瞑想法を知るには有用な本です。

日本の禅宗については、瞑想法は受け継がれているが、

教えや意味付けにおいては相当に変節している部分があることも

推察できます


プロの禅僧自身が「手法としての禅の理解」に悩みを抱えながら禅じている

ことも推測できます。(「アップデートする仏教」に少し書いてある)

また、後半には、他の研究者の論文を参考にしたとして
「臨済禅の公案は、『矛盾して答えが出ない話頭に向かい合うことで 

思考を止める』を目的としたサマタ瞑想の手法のひとつと考えられる」

との解説には その卓見に大変驚いたし、納得がいくものだった。

本書とは関係ないが、

日本のプロ禅僧でも 「禅」を理解できていない方の方が圧倒的多数だという現実に、

これでいいのか 日本の禅師たち」と残念に思わずにいられない

 

==或る書評より

2021年4月から9月にNHKこころの時代で放映された「瞑想でたどる仏教」が面白くて

再放送を録画し何度も鑑賞させていただきました。
蓑輪先生と陸上の為末選手の6回シリーズの対談で「瞑想の歴史」を解説する内容でしたが、

いまだに第1回目だけは削除できずたまに拝見しております。
番組の解説テキストの参考文献欄に本書がありましたので最初は図書館で借りて読んでみたのですが、

内容が深く面白ろそうでしたので、Amazonで購入し3回ほど熟読玩味させていただきました。

本書は読むたびにその行間の深さを感じる素晴らしい良書だと思いました。
仏教学に理論と実践があるとすれば(先生自身も述べておられますが)

本書は実践の歴史を解説したものです。

学術的正確さがあり、かつ分かりやすいという点でも本書は他に類を見ないものだと思います。

少し残念なのは、本書には参考文献や索引がなく少しもったいない気もします。

折角興味をもってもう少し勉強したい人にはNHKテキスト(バックナンバー)にある

参考文献をご覧になるとよいと思います。

仏教の理論の部分や、近年注目度の高いマインドフルネスに関する図書なども厳選されて紹介されています。

私自身蓑輪先生の影響で、仏教学に関するさまざまな文献に触れることができました。

お陰様で自らの行動指針に「四梵住」(慈悲喜捨)の心を持ち合わせるようになりました。

色んな意味で蓑輪先生には感謝の気持ちを伝えたいです。

 

仏典とマインドフルネス

 負の反応とその対処法

2021/6/11 蓑輪顕量(編集)

最新の異分野融合研究はこんなにも面白い! 仏教学・心理学・脳科学による挑戦的研究

どうしてマインドフルネスはストレス軽減につながるのだろう?
 世界中で流行するマインドフルネスですが、
意外なことに、この問いへの科学的解明はいまだなされていません。
多分野の研究者が協働し、
マインドフルネスの源流である仏教の瞑想法(身心の観察)を問い直したとき、
果たしてその答えはみえてくるのでしょうか。
科学と仏教を架橋する待望の入門書。


【目次】

序 論(蓑輪顕量)

第一部 仏教学からのアプローチ
第一章 パーリ仏教に見る身心の観察(林隆嗣)
第二章 止観の分類とマイナスの反応への対処法(蓑輪顕量)
第三章 中世禅宗における身心の観察(余新星)

第二部 異分野の架け橋となるために
第一章 瞑想修行と計測の可能性(佐久間秀範)

第三部 心理学からのアプローチ
第一章 うつ・不安が解消しないとき
――マインドフルネス療法でうまく進まないケースの特徴(杉山風輝子・内田太朗・熊野宏昭)
第二章 瞑想実践の効果と副作用
一 臨床心理学におけるマインドフルネス瞑想(越川房子)
二 止観修習の順序問題(一):瞑想初学者が感じる困難さ(阿部哲理)
三 止観修習の順序問題(二):初学者にみられる効果/みえにくい効果(石川遥至)
第三章 マインドフルネスと戒の関係(牟田季純)
第四章 注意機能とマインドフルネス瞑想(中島亮一・田中大・今水寛)

第四部 脳科学からのアプローチ
第一章 瞑想中の雑念を脳波で可視化する
――マインドフルネス療法がうつ・不安を改善するメカニズム(髙橋徹・熊野宏昭)
第二章 脳のネットワークから見た瞑想状態(今水寛・浅井智久・弘光健太郎)

終 章(蓑輪顕量)

あとがき/索 引