もう「虐殺の犠牲者」には見えない? 米国人の「イスラエルの捉え方」が変わりつつある(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

もう「虐殺の犠牲者」には見えない? 米国人の「イスラエルの捉え方」が変わりつつある

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クーリエ・ジャポン

米国の学生たちの多くが、イスラエルではなくガザのために声をあげている理由とはPhoto by Chip Somodevilla/Getty Images

イスラエルによるガザへの攻撃に抗議するデモを米国中の学生たちが展開した結果、約2000人が拘束される事態にまで発展した。いまではヨーロッパでも同様の抗議活動が広まっている。

 

  米大学のガザ反戦デモは「トランプ再選」を後押しするのか?

 

イスラエルと緊密な関係を築いてきた米国だが、若い世代はイスラエルに対し、これまでの米国人とは違った感情を抱いているようだ。米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が、この問題の背景についてまとめている。

次世代は別の道を選ぶのか

76年前、ユダヤ人によってイスラエルが建国されて以来、同国と米国の関係はほぼずっと緊密であり続けてきた。 イスラエルは米国の資金、武器、外交や防衛を頼りながら存続・繁栄している。米国のこうしたイスラエルを支援する姿勢は、超党派の議会や政治家、多くの有権者から支持されており、最近までは揺るぎないものだった。 ホロコースト生存者の避難所として形成されたイスラエルは、しばしば犠牲者とされてきた。そして国際的に見て厳しく危うい地域にある同国は、米国の永続的な同盟国でもあった。 だが、ガザ地区の過激派組織ハマスとイスラエルの7ヵ月にわたる戦いは、両国の関係を試そうとしている。 何万人ものパレスチナ民間人の死を受け、米国の若者たちは、国中の大学キャンパスで抗議行動を起こしている。なかには親イスラエルのデモもあるが、その規模と抗議の声が最も大きいのは、パレスチナを支持するものだ。 彼らのデモは、両国の関係や米国の中東政策にどのような影響を及ぼすのだろうか? 次世代の米国人はこの先、イスラエルとの関係に関して別の道を選ぶのだろうか?

そもそも若者が中東に関心を持つようになったきっかけは?

1948年にイスラエルが建国されたのち、土地から追い出された何百万人ものパレスチナ人は、独立と主権国家を求めている。

 こうした「パレスチナの大義」は、トランプ政権時代には完全に無視されていた。

その後のバイデン政権は、イスラエルとアラブ近隣諸国の関係正常化を追求してきたため、

やはりパレスチナの問題は後回しにされたままだった。

 

 そうしてやってきたのが2023年10月7日だ。

ハマスとその同盟軍がガザからイスラエル南部に押し寄せ、人々を殺害し、焼き払い、人質にとった。

キブツで暮らしていた人々、そして音楽祭にいた人々など

1200人が殺され、

200人以上が捕らえられ、ガザへ連れ去られた

 

 これに対する

イスラエルの報復は残忍かつ大規模だ。

空爆と陸上攻撃によって

3万4000人以上のパレスチナ人が死亡しており、

その多くが女性と子供だ

 

ガザの人口は230万人だが、その大半は、破壊された家屋からの避難を余儀なくされている。

 イスラエル・パレスチナ紛争におけるこの新しくも恐ろしい局面が、問題を再び表面化させたのだ。

 

 

若い米国人はどちらを支持している?

世論調査によれば、ハマスの暴挙を受けたイスラエルがガザに侵攻する前から、米国の若者のあいだではイスラエルに「好意的ではない」意見がかなり多かった。 米シンクタンク「ピュー・リサーチ・センター」による2022年の調査では、イスラエルに好意的な見方をする30歳未満の成人は41%にとどまり、56%は好意的ではなかったという。対照的に、50歳以上の場合は過半数がイスラエルを好意的に見ていた。 ピュー・リサーチ・センターの今年2月の世論調査によると、民主党を支持する若者のあいだでは、パレスチナへの支持が圧倒的だ。イスラエルを支持する者が7%であったのに対し、パレスチナを支持すると答えた者は47%である。 米国の高齢者層でもイスラエルの支持率はやや低下し、過半数をわずかに下回っている。ただしこれは、パレスチナ人支持には結びつかなかった。

なぜ年齢層で差が出たのか?

イスラエルによるガザへの反撃が不評だったことに加え、これまでの歴史と考え方の違いが世代間格差に影響している。

 ジョージ・ワシントン大学でメディア・公共問題・政治学を教えるイーサン・ポーター教授によれば、

「世代交代が起きている」という。

 30年ほど前に遡れば、イスラエルとパレスチナをめぐる論調は、ホロコーストの記憶を強く意識していた。

だがこんにちの活動家たちは、イスラエルを「大量虐殺の生存者の故郷」ではなく、

むしろ「大量虐殺を続ける植民地的な占領国」として見る傾向が強い。

 

 若い米国人はまた、1970年代の航空機ハイジャック事件や、

1990年代後半から2000年代前半にかけて起きた自爆テロなど、

パレスチナ人によるテロの恐ろしさを直接記憶していない。

 

 さらに若者、特にいまの大学生は、公正、正義、公民権を求める

「ブラック・ライブス・マター」や「#MeToo」運動にならい、

抑圧されたり差別されたりしている人々のために活動する傾向がある。

Tracy Wilkinson

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