他者と“ともに"学ぶこと——

他者と向き合い、ともに生きるとは、どういうことか。
人類学は、未来を切り拓くことができるのか。

現代思想、アートをはじめ、ジャンルを超えた影響と挑発をあたえつづけるティム・インゴルド。
世界の知をリードする巨人が語る、人類学と人類の未来。

世界が直面する未曾有の危機にどう立ち向かうべきか。

インゴルドの思想の核心にして最良の人類学入門。


【目次】
第1章 他者を真剣に受け取ること
第2章 類似と差異
第3章 ある分断された学
第4章 社会的なるものを再考する
第5章 未来に向けた人類学
解説
原注
読書案内

 

 

 

 

 

 

 

生きていること

2021/11/5 ティム インゴルド(著), 

柳澤 田実 柴田 崇, 野中 哲士, 佐古 仁志, 原島 大輔, 青山 慶 (翻訳)

 

ティム・インゴルド(Tim Ingold)
1948年英国バークシャー州レディング生まれ。社会人類学者。
トナカイの狩猟や飼育をめぐる

フィンランド北東部のサーミ人の社会と経済の変遷についてフィールドワークを行なう。
線という観点からあらゆるものを捉えなおす『ラインズ 線の文化史』(原著2007)、

手の仕事を通じて人類学を編みなおす『メイキング 人類学・考古学・芸術・建築』(原著2013)のほか、
『ライフ・オブ・ラインズ 線の生態人類学』(原著2015)、

『人類学とは何か』(原著2018)、

未邦訳の著書としてThe Appropriation of Nature(1986)、
アカデミズムにおける進化の概念を俯瞰するEvolution and Social Life(1986)、

世界の知覚のあり方を問い直すThe Perception of the Environment(2000)などの著書がある。

 

 

 

《人類が生きることを取り戻すために》
ひとが生きるということ、
それはこの世界の終わりなき流動のなかに身を置き、
世界を変えながら自らも変わり続けてゆくことだ。

芸術・哲学・建築などのジャンルと人類学の交わるところに、
未知の学問領域を切り拓いてきたインゴルド。
その探究を凝縮する主著、待望の邦訳!
【大澤真幸、磯野真穂、佐藤卓推薦】

生きることと知ることは完全にひとつになる。
この本を読めばそれがわかる。──大澤真幸(社会学者)

あなたの生に出逢うため、世界という命に己を浸せ。
そして「共に」運動せよ。──磯野真穂(文化人類学者)

この本で人類学は、これからのデザインの視座になった。──佐藤卓(デザイナー)

私の探究を人類学ではなく、
芸術や哲学、建築といったジャンルなのではないかという人もいる。
だが私は人類学者である。
なぜならあらゆる注意を払い、
動くこと、知ること、記すことを通じて

世界に向かって生きながら、
生きていることそのものを探求する
のが人類学者だから──。

地面とはいかなる場か、
線を引くとはどういうことか、
板を挽くとき職人たちは何をしているのか、
大地・天空と応答すること、
散歩することと物語ること、
観察するとはどういうことか。

さまざまな問いから、人類学や哲学が取り逃してきた〈生きること〉の姿をみつけ、
生を肯定する人類学〉の可能性と価値を擁護する。
インゴルドの豊穣なるアイデアのすべてを込めた「Being Alive」、いよいよ刊行!


序文、および謝辞
プロローグ1 生に還る人類学
第一部 地面を切り拓く
2 素材対物質
3 地面の文化 足を通して知覚される世界
4 板を歩く 技術に熟練する過程を考える


第二部 メッシュワーク
5 動くものを再考すること、思考を再び動かすこと
6 点・線・対位法 環境から流動空間へ
7 アントがスパイダーと会うとき 節足動物のための社会理論


第三部 大地と天空
8 大地のかたち
9 大地、天空、風、そして気象
10 ランドスケープか気象世界か
11 サウンドスケープ概念に対する四つの反論


第四部 物語られた世界
12 空間に逆らって 場所、動き、知識
13 分類に逆らう物語 輸送・散歩・知識の統合
14 物語ることとしての名づけ アラスカのコユコン族が動物について話すこと


第五部 線描すること、つくること、書くこと
15 Aという文字の七つのヴァリエーション
16 精神の歩き方 読むこと、書くこと、描くこと
17 つくることのテクスティリティ
18 線を束ねる 行なうこと、観察すること、記述すること


エピローグ19 人類学はエスノグラフィーではない

解題|生きている世界へのまなざし(野中哲士)
謝辞
索引/文献一覧