台湾は「多様性国家」なのに対立が起こらない…⁉その裏に隠された「地政学的」な理由(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 

台湾は「多様性国家」なのに対立が起こらない…⁉その裏に隠された「地政学的」な理由

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現代ビジネス

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 コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。

 

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 『自由への手紙』連載第33回 『「移民」や「LGBTQ+」日本に迫りくる“多様性の波”…「多国籍国家」台湾から学ぶ共存するための秘訣 』より続く

一枚岩の文化の日本

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 世界が抱える課題については承知しています。生まれた国、民族、人種、文化が異なる人々と共にあるとき、そこに対立構造ができてしまい、争いが引き起こされているのは事実です。  また、日本について言えば、「モノリシック(monolithic)」、つまり「一枚岩の文化」でしょう。  だからこそ、他者を受け入れられず、自分とは異なるものがいると対立してしまうという話も聞きました。 「日本に住む者からすると不思議です。台湾はこれだけ多様なのに、なぜ対立が生じないのでしょうか?」  このインタビューの際も、そうした質問を受けました。

台湾で対立が生じない理由

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 私はこれについては「物理的な距離の近さ」に留意することが重要だと考えています。  台湾島の北から南まで、高速鉄道で移動するにはわずか1時間半。その小さな台湾島に、2300万人が分布しています。  小ささゆえにここに住む人たちは、「人口密度が高いひとつの大きなコミュニティに住んでいる」と感じられるのではないでしょうか。  この物理的な距離感が、「私たちは共通する価値観をもつ者どうしだ」という感覚を生み出しています。それぞれが異なる独自の文化を保持しつつ、距離的な近さから醸し出される価値観を共有しているのです。  こちらとあちらがたった1時間半しか離れていなければ、単純な対立の図式も生まれません。  台湾高速鉄道が結ぶのは、台北と高雄。島の端から端までつながることで、「私たちは同じ台湾島に居住する隣人同士なのだ」という意識をもつことができる。これはとても大切なことです。  そう考えていくと、ブロードバンドの重要性はいっそう高まります。  インターネットにつながることは、情報格差をなくすために不可欠です。今やインフラであり人権のひとつですが、異なる多様な人たちが共通する価値観をもつために、今後は高速鉄道以上の意味を帯びてくるでしょう。  『わずか30年で多様性国家へ大変身…あらゆる人々との「共存」を目指す台湾の“ある合意”』へ続く

語り)オードリー・タン

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