イスラム教では「政治・社会」と「心の中、宗教」とは、分離できない。

西洋では、過酷な宗教戦争を行って、ようやく「政治」と「宗教」を分離できた。

 

「民主主義」は「キリスト教の信仰」に過ぎない。

米国が、外国に押し付けるから、様々な戦争が起きる!

 

 

実は仲がよかったイランとイスラエル、領土の直接攻撃にまで発展した憎悪の連鎖はなぜ始まったか?(JBpress) - Yahoo!ニュース

 

実は仲がよかったイランとイスラエル、領土の直接攻撃にまで発展した憎悪の連鎖はなぜ始まったか?

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イランのミサイルを迎撃するイスラエルのアイアンドーム(写真:新華社/アフロ)

 

 ついにお互いの領土を直接攻撃するに至ったイスラエルとイランだが、旧約聖書にも描かれている通り、歴史を振り返れば、両者の関係は長年良好だった。  かの有名な「バビロン捕囚」からユダヤ人を解き放ったのはペルシャであり、その後もペルシャ帝国でペルシャ人とユダヤ人は共存していた。  米国とイランの関係が改善しない限り、イスラエルとイランの関係が改善することはないが、核合意を成立させたオバマ元大統領のケースもある。対話を重視する新しい指導者の登場が待たれる。  (山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)

 

  イランによるミサイル攻撃の残骸。こうしてみると、かなり大きい。

 

■ 旧約聖書にも描かれるユダヤとペルシャの意外な関係

 

  「パンドラの箱をあけてしまった」  多くの中東ウォッチャーがそう感じているに違いない。イスラエルとイランが相互の領土を直接攻撃したことについてである。  イスラエルによるシリアのイラン大使館への攻撃で、イラン・イスラム革命防衛隊の将軍2人を含む軍幹部らが死亡した。その攻撃に対する報復として、イランが300を超すドローンなどでイスラエルに反撃、負傷者が出た。イスラエルは、イランの古都イスファハンも攻撃したとの報道もある。  中東の二大軍事大国であり敵対関係にあるイスラエルとイランは、お互い暗殺やサイバー攻撃などを繰り返してきた。しかし、相手国領土において直接軍事対決することは初めてのことだ。  こういった報道に接すると、イランとイスラエルは不俱戴天の敵といったように見えるかもしれない。だが、歴史的には必ずしも正しくない。本稿では、イランとイスラエルの歴史を振り返って、簡単ではない事態の打開のための何らかのヒントを探りたい。  イスラエルに住むユダヤ人が、旧約聖書の時代からの長い歴史を持っていることはよく知られる通りである。また、イランに住むペルシャ人も、古代ギリシャとペルシャ戦争を戦うなど、紀元前からの歴史を持つ古い国家である。  こういった古い歴史を持つ両民族が、長きにわたって戦争もしくは緊迫した関係にあったかというと、そのようなことは決していない。むしろ良好と言ってもいい時代が長かった。

 

 

 

■ ユダヤ人を救ったペルシャ人  世界史の教科書にも記載される重要なユダヤ人の出来事としては、紀元前6世紀に起こった有名なバビロンの捕囚がある。これは、ユダヤ人が新バビロニアのネブカドネザル2世に連行され約60年にもわたり抑留された事件である。  ヴェルディの有名なオペラ「ナブッコ」は、バビロンの捕囚にヒントを得て創造された作品だ。第三幕で歌われる「行け、わが想いよ、黄金の翼に乗って」は誰でも聞いたことがあるだろう。抑留されたユダヤ人の思いを知ることができる。  このユダヤ人の苦しみを救ったのが、ペルシャだった。  ペルシャ帝国(アケメネス朝ペルシャ)の創始者であるキュロス2世(クロス)は、紀元前539年に新バビロニアの首都バビロンを征服し、ユダヤ人のバビロン捕囚を終わらせた。当然にユダヤ人は歓喜して、キュロスは救世主として称えられたのだ。  さらにペルシャ帝国は、ユダヤ人がエルサレムに戻り、第二神殿の再建まで支援した。この時期には、ユダヤ人は自分たちの信仰を守り、地域の自治を行うことが許されるようになっている。  古代のオリエントで、ユダヤ人が地歩を築くためにペルシャ帝国が果たした役割は小さくない。  バビロン捕囚を巡る歴史は旧約聖書に描かれている。現在のイスラエルとイランの関係を知る我々にとっては意外なことかもしれない。  その後、ユダヤ人はローマ帝国の圧迫・迫害を受け、紀元1世紀には世界各地に離散(ディアスポラ)する憂き目にあう。  ペルシャ帝国内に離散したユダヤ人も存在し、ユダヤ人コミュニティも存在した。両者は長きにわたって共存した。  離散が終わり国家としてのイスラエル・イラン関係が復活するのは、第二次大戦後のイスラエル建国時である。この時期イランは、親米・新西側のパフラヴィ―朝。イランはイスラエルを国家承認したトルコに次ぐイスラム圏の国だった。  当時のイランは西欧化を進めていた親米国家である。西欧国家に習ってイスラエルを承認したのだ。

 

 

 

■ すべてを変えたイラン革命と米国大使館人質事件

 

  この関係が一気に崩れたのは、1978年に勃発したイラン革命と、革命に続く米国大使館人質事件である。

 

  イラン革命ではパフラヴィー朝が倒れ、ホメイニ師を指導者とするイスラム原理主義国家が生まれた

  これまで西欧風の服装を着て、ワインとフランス料理を楽しんでいた女性たちはスカーフの着用を義務付けられ、宗教警察の監視下、行動の制約を受けるようになった。

  さらに、イランと米国の関係が決定的に悪化したのが、革命の影響から起きたテヘランの米国大使館人質事件である。  パフラヴィー皇帝の米国亡命に対して、皇帝を受け入れた米国大使館の前に多数の学生が集まり、抗議のデモを行った。そして、暴徒と化した学生らが大使館に乱入し、52人もの大使館員とその家族が人質となったのだ。

 

  幸い死者でなかったものの、人質とされた期間は1年2カ月、444日にも及んだ。歴史上最大・最長級の大使館員人質事件となった。

 

  この事件によって、世界最大の経済大国で軍事大国であった米国の面目は丸つぶれになった。この事件は、米国国務省関係者のみならず、米国人の心に深いトラウマを残した。

 

  私はこれまで、米国国務省をはじめ有識者とイラン情勢について議論をする機会を得てきたが、イランに対する嫌悪感は相当強いと感じている。「イランだけは許さない」と。  米国とイランの外交関係は断絶。米国から多くの軍事支援を得ている同盟国とイランの関係も一気に悪化した。  イスラム原理主義国家となったイランがユダヤ教の国、イスラエルを敵視した面はあるが、それ以上に大きいのは米国の存在だと思う。結果、中東における米国の代理国家、イスラエルは反イランを明確化。2000年以上にわたる比較的良好だった関係は滅び去ったのだ。

 

 

■ イスラエルとイランの関係を悪化させるヒズボラ

 

  イスラエルは核兵器を開発。イランも核兵器開発を目指した。中東における二大軍事大国として不俱戴天の敵となった。  さらに、イスラエルとイランの関係を悪化させているのが、レバノンのヒズボラの存在である。  ヒズボラは、1982年に結成されたイスラム教シーア派の政治・軍事組織である。レバノンにおいて、イラン型のイスラム原理主義国家の設立を目指している。イランが積極的に支援していることは言うまでもない。  ヒズボラとは、アラビア語で政党を意味するヒズブと神を意味するアッラーが合わさった言葉で、「神の党」などと訳される。ヒズボラは、レバノンに侵攻する、しようとするイスラエルに対して、たびたび攻撃をしかけている。ヒズボラとイスラエルとの関係は最悪に近い。  これらの点から、イランとイスラエルの関係は、イラン革命後は修復が極めて困難なほど、複雑な要因で悪化していると言っていい。

 

  今後の展開はどうなるだろうか。

 

  イスラエルに強い影響力を持つ米国とイランの関係が良好にならない限り、イスラエルとイランの関係は変わらない。現在の体制では米国とイランの関係改善は画餅であろう。  ただ、イランの核開発をとん挫させる核合意を成立させたオバマ大統領の事例もある(トランプ氏によって反故にされてしまったが)。困難な外交交渉の末に核合意を成立させたオバマ政権は画期的と評された。

 

  イスラエルとイラン両国の関係が悪いのは過去50年ほどに過ぎないことを認識するべきであろう。中東の長期的な安定のため対話を重視する指導者が生まれてほしいと思う。

 

  山中俊之(やまなか・としゆき) 著述家/芸術文化観光専門職大学教授

  1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。

対中東外交、地球環境問題などを担当する。

首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、

2000年、日本総合研究所入社。

2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。  2010年、企業・行政の経営幹部育成を目的としたグローバルダイナミクスを設立。累計で世界96カ国を訪問し、先端企業から貧民街・農村、博物館・美術館を徹底視察。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士。京都芸術大学学士。コウノトリで有名な兵庫県但馬の地を拠点に、自然との共生、多文化共生の視点からの新たな地球文明のあり方を思索している。五感を満たす風光明媚な街・香美町(兵庫県)観光大使。神戸情報大学院大学教授兼任。  著書に『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)。近著は『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)。

山中 俊之

 

 

 

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