がん闘病中の森永卓郎、重大メッセージ「資本主義はもう終わる」富裕層と庶民の格差は1万倍になっても、環境破壊はとまらない(みんかぶマガジン) - Yahoo!ニュース

がん闘病中の森永卓郎、重大メッセージ「資本主義はもう終わる」富裕層と庶民の格差は1万倍になっても、環境破壊はとまらない

配信

みんかぶマガジン

AdobeStock

 経済アナリストとして日本人に経済のあるべき姿を説き続ける森永卓郎氏。昨年12月にステージ4のがんと診断されながらも精力的に発信を続ける森永氏は、「資本主義はもうすぐ終わりを迎える」と話す。森永氏がそう断言する“4つの理由”についてうかがった。 

資本主義はもうもたない 

 私は、資本主義はもうもたないと思っています。ドイツの経済学者であるマルクスは、150年も前に「資本主義は必ず行き詰まる」と言いました。その理由は複数あります。   一つ目は地球環境の破壊。二つ目は許容できないほどの格差の拡大。  具体的に見てみましょう。まず一つ目の地球環境の破壊。2015年、国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP21)で採択されたパリ協定では、「世界平均気温の上昇を産業化以前と比較して2℃より十分低く抑え、さらに1.5℃未満に抑える努力を追求する」 との長期目標で合意しました。   1.5℃気温が上昇すると、異常気象や海面上昇など、さまざまなリスクが非常に大きくなります。ただし、気温の上昇を止めるためには、2050年前後時点で世界全体のCO2排出量を実質ゼロにしなければなりません。でも現実の世界をみると、まったくその方向には向かっていないですよね。   世界気象機関(WMO)は昨年5月、「2027年までに世界の気温が産業革命前の水準より1.5℃以上高くなる可能性は66%にのぼる」とする年次報告書を発表しました。大規模な干ばつや山火事といった暴力的な気象状況は、すでに世界中で観測されています。 

富裕層と庶民の格差は1万倍 

 気温の上昇を止めるためには、資本主義を止めるしかありません。しかしある経済学者が、アメリカの富裕層と庶民が使用しているエネルギーの差を試算したところ、なんと約1万倍もの差があったそうです。   アメリカの富裕層は、普段の買い物や仕事、レジャーにもプライベートジェットを使います。そんなことを続けていたら、地球は壊れるに決まっていますよね。日本でも、同じような状況が起こっています。プライベートジェットを乗り回す人こそごく限られてはいますが、東京ではタワーマンションが林立しています。家に帰るだけでもエレベーターに乗らなければいけませんし、洗濯物を外に干せないのですべて乾燥機で乾かしたり、床暖房で人のいない部屋まで温めたりといったことが普通に行われています。   こんな生活を送るためには、エネルギーをいくらつぎ込んだって足りません。ところが資本主義は、そのような生活に価値を置く構造になっているのです。 

 

 

世界の下位半数の資産=上位26人の資産 

 次に格差拡大。2019年、国際NGOの「オックスファム」は、世界の富の状況についての報告書を発表しました。それによると、当時の世界の人口である76億人のうち、所得の低い順から数えた38億人の人たちの総資産は、世界で最も裕福なたった26人の総資産とほぼ同じとの結果になりました。   真面目に一生懸命額に汗して働いている人たちの暮らしがどんどん悪化していく一方で、働かなくてもお金にお金を稼がせている人が豊かになっている。「1%が金持ちで、99%が貧乏」―。そんな状況が始まっているわけです。   日本でも格差は広がっています。近頃は「春闘賃上げ率が33年ぶりに5%台に乗った」というニュースも流れていますが、そこに含まれているのは大手企業だけ。人口の7割を占める中小企業労働者や非正社員の賃金は、ほとんど上がっていないんです。 

森永卓郎

 

【関連記事】

 
 

非正規雇用が増えすぎた結果…「中間層が崩壊すれば、日本は沈没する」という深刻な危機

配信

現代ビジネス

〔PHOTO〕iStock

 平均年収443万円――これでは普通に生活できない国になってしまった。なぜ日本社会はこうなってしまったのか?   重版7刷の話題書『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』では、〈昼食は必ず500円以内、スタバのフラペチーノを我慢、月1万5000円のお小遣いでやりくり、スマホの機種変で月5000円節約、ウーバーイーツの副業収入で成城石井に行ける、ラーメンが贅沢、サイゼリヤは神、子どもの教育費がとにかく心配……〉といった切実な声を紹介している。 

 

【写真】じつは知らない、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃!

「就職氷河期」に入って30年

 私は株式新聞で働いて1年後に転職。経済誌の週刊「エコノミスト」で契約社員として働いた。  ITバブルは2001年にあっけなく崩壊した。それでも企業利益がV字回復して、1991年のバブル崩壊から始まった「失われた10年」が終わりを告げるかに見えていた。  しかし私は、この利益の回復というのは、中高年のリストラや新卒採用の絞り込み、正社員を非正社員に置き換える人件費削減によるものに過ぎないのではないかと考えた。そして、これでは経済を支える労働者が弱体化する。きっとマクロ経済にも大きく影響するはずだと睨んだ。2003年に若者のフリーター問題、つまり非正規雇用の問題について企画を提案したが、企画は通らなかった。  本書『年収443万円』が発刊されるちょうど30年前、リクルートが1992年に就職雑誌「就職ジャーナル」11月号で「就職氷河期」という造語を掲載した。  だが、同じくリクルートのアルバイト情報誌「フロム・エー」に1987年に掲載されて有名になった「フリーター」の言葉の響きが、1980年代に流行語となった、自由を謳歌する「フリーアルバイター」のイメージを植え付けていたため、世間は「フリーター? 若者は甘いんだ」「選ばなければ仕事はある」と受け止めていた。そして、自己責任論が台頭し始めていた。

「中間層が崩壊すれば、日本は沈没する」丹羽宇一郎さんの言葉

 私が若者のフリーター問題の企画を提起しても、社会の冷たい風潮もあって企画は通らず、大手商社のトップである丹羽さんに相談したいと連絡をし、アポイントをとりつけたのだった。  私が若者に広がる非正規雇用の問題について話すと、丹羽さんは、私にこうアドバイスしてくれた。  「若者の非正規雇用化は中間層を崩壊させ、やがて消費や経済に影を落としていく。このまま中間層が崩壊すれば、日本は沈没する。  その企画、同じことを3度、上司に言ってごらんなさい。3度も言われれば根負けして、上司は必ず折れるから」  そして3人のデスクに3度ずつ企画を提案して粘ると、ついに企画が通った。  2004年5月、週刊「エコノミスト」誌の第2特集で「お父さんお母さんは知っているか 息子と娘の“悲惨”な雇用」を組むことが実現した。非正規雇用に関するデータを探し、マクロ経済への影響など存在しなかったデータはシンクタンクのエコノミストに試算してもらった。  この特集について、当時の慶応大学の金子勝教授や東京大学の児玉龍彦教授がそれぞれ大手新聞の論壇コーナーで取り上げてくれたことで、続編が決定。第1特集となって「娘、息子の悲惨な職場」がシリーズ化した。以降の取材でも、丹羽さんはご意見番として、大きな影響を与えてくれた。  2005年1月4日号の週刊「エコノミスト」では、ワイドインタビュー「問答有用」のコーナーで丹羽さん(伊藤忠商事会長・当時)に中間層の崩壊について語ってもらった。この時点で、若者の労働問題について本気で危機感を持つ経営者は、私の知る限りでは、丹羽さんの他にはいなかった。  17年前のインタビューで丹羽さんは、こう語った。 ---------- 富(所得)の2極分化で中間層が崩壊する。中間層が強いことで成り立ってきた日本の技術力の良さを失わせ、日本経済に非常に大きな影響を与えることになる。中間層の没落により、モノ作りの力がなくなる。同じ労働者のなかで「私は正社員、あなたはフリーター」という序列ができ、貧富の差が拡大しては、社会的な亀裂が生まれてしまう。 戦後の日本は差別をなくし、平等な社会を築き、強い経済を作り上げたのに、今はその強さを失っている。雇用や所得の2極分化が教育の崩壊をもたらし、若い人が将来の希望を失う。そして少子化も加速する。10~15年たつと崩壊し始めた社会構造が明確に姿を現す。その時になって気づいても「too late」だ。 企業はコスト競争力を高め、人件費や社会保障負担を削減するためにフリーターや派遣社員を増やしているが、長い目でみると日本の企業社会を歪なものにしてしまう。非正社員の増加は、消費を弱め、産業を弱めていく。 若者が明日どうやってご飯を食べるかという状況にあっては、天下国家は語れない。人のため、社会のため、国のために仕事をしようという人が減っていく。 ----------  それが今、現実のものとなっている。私たちが抱える漠然とした不安の正体は何なのか。私たちが思考停止してしまった原因はどこにあるのか。この30年に起こったことを、私たちは振り返らなければならない。

小林 美希(ジャーナリスト)

 

【関連記事】