あなたが知らない太平洋戦争の裏話
(新人物文庫)
新名 丈夫(著)
==或る書評より
昭和19年2月毎日新聞記者として「竹やりでは勝てぬ」との記事を書き懲罰召集をうけた
という気骨のある著者の、開戦から敗戦までの裏話は興味ぶかいものがある。
近衛の密使の章は全く初耳で、若し実現していたら太平洋戦争は回避できたのではなかろうか。
その他「電探で負けた日本海軍」「逃げ帰った将軍たち」等々の裏話は
初めて目にする希少価値のある読み物と思う。
==或る書評より
単行本は1970年(昭和45年)、原題は『昭和史追跡―暗黒時代の記録』。
従軍記者だったからこそ書き得た、報道されなかった話が多い。
著者は東京日日(毎日)紙面で「竹槍では勝てぬ」と軍部を批判し、時の首相・東條英機の逆鱗に触れて南方の最前線に飛ばされた硬骨漢(この記者以外に対しても東條は同じ真似を何度かやらかしている)。
記者だけになかなか視野が広く読みやすいので、本書は戦争関連の入門書にも良さそうだ。
次はドイツの極東政策でも調べてみよう。
目次。
【太平洋戦争】ついに全面戦争へ、朝日と毎日・空の競争、ヒットラーに欺かれた三国同盟、近衛の密使、電探で負けた日本海軍、ガダルカナル撤退、陸軍病院の怪事件(上・下)、「烈風」間に合わず
【敗戦と占領】降伏を無視した原爆投下、逃げ帰った将軍たち、首相官邸襲撃事件、天皇を裁かず、占領政治の舞台裏
(全286P)
補足。
双方に発砲して国民党軍と日本軍を戦わせたのは劉少奇の部隊。
釈放された戦犯容疑者は河辺、牟田口だとか。
==或る書評より
ちょっと期待はずれ。
それは筆者が自分の視点がすべてだと思ってしまいがちなことが目に付くからだ。
一昔前、「海軍飯炊き物語」という本があった。
航空母艦に乗り組んでいる者で、だれも実はすべてを分かっている人はいない訳で、飯炊き担当は炊飯施設のことしか分からないし、艦長だってエンジンルームの実態は分からない。
それと同じで海軍省詰めの記者だった筆者が自分の知見の中ですべてを構築してしまい、妙な自信をもってしまっているのが、残念。
歴史の1証人としての謙虚な姿勢を保っていれば、もっとちがう読み物になった気がする。例えば三國一郎が編んだ「わたしの昭和史」のような姿勢があれば。
昭和に入って、中国革命の発展は日本を揺り動かした。
日本は中国革命に敵対し、戦いをいどむにいたった。……
中国に対する干渉と侵略がついに世界戦争に拡大、国を亡ぼすにいたったのである。(本文より)
軍靴の音がしだいに高まる昭和戦前は、暗黒の時代といわれ、幾多の暗殺やテロ、クーデターが続出する。
注目すべきは、それらのほとんどが、中国問題が真の背景にあったことである。
陸軍が、外では中国侵略、内では独裁政権を目的として、つぎつぎに“事変”をひきおこした。
その大きな背景となったのが昭和2年に開催された「東方会議」だった―。
戦争は、実は昭和2年にはじまっていたのである……。