ジョージア州「トランプ魔女狩り裁判」でまたしても見せつけられたアメリカ司法制度の「深すぎる闇」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 

 

 

 

ジョージア州「トランプ魔女狩り裁判」でまたしても見せつけられたアメリカ司法制度の「深すぎる闇」

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4つの刑事裁判が進行中

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 今年の11月の大統領選挙で、共和党から出馬しているトランプ前大統領が、民主党現職のバイデン大統領に勝ちそうだという話が広がっている。その確度をどう見るかで表現は違うが、「もしトラ」「ほぼトラ」「確トラ」といったワードもよく目にする。

 

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 確かに、支持率では、トランプはバイデンを上回る世論調査が相次いでいる。しかしながら、現実には、トランプは非常に厳しい選挙戦を強いられている。それは今、トランプに対して4つの刑事裁判が引き起こされているからだ。  当然ながら、目下、トランプは選挙戦略を練り込み、アメリカ全土を精力的に遊説して回ることに集中したいはずだが、並行的に進められているこれらの刑事裁判の対策や、出廷に時間を使うことを余儀なくされているからだ。かかるのは時間や手間だけではない。膨大な資金もだ。  2月にはニューヨーク地方裁判所で実に不可解な判決が下された。そもそもこの裁判は、詐欺被害に遭ったと訴えた者がいないのに、ニューヨーク州司法長官の職権によって、トランプ側が詐欺罪で訴えられたものだ。  担保不動産について、市場で取引されそうな実勢価格で評価する書類を銀行側に提出したら、地方政府の評価額を大幅に上回っているからこれは詐欺に当たるのだと、裁判で認定されてしまった。実勢価格で資産評価をすると詐欺罪に該当するという、凄まじい判決が下されたわけだ。  そもそもトランプ側が銀行に提出した財務諸表には、責任排除の文言、つまり銀行が融資を行うにあたって、提出書類の物件評価は銀行側が独自査定して評価して構わないとし、自分たちの資産評価を絶対視していないことが記されていた。それでもなぜか詐欺罪だという話にされてしまったのだ。  ニューヨーク地裁は利息を含めて4億5420万ドル(約680億円)の罰金を支払うことを求め、これに対するトランプ側の異議申し立てを、ニューヨーク州控訴裁判所(高裁)は却下する決定を下した。つまり、680億円の罰金をすぐさま支払えと命じたのである。  この裁判を訴えたニューヨーク州司法長官は民主党員である。そして裁判を取り仕切り判決を下した判事も民主党員だった。これはトランプの選挙資金に打撃を与えることを狙った民主党側の政治的な動きではないのか。ちなみにトランプは事業用の資金を新たに借りることも禁じられている。

 

 

 

 

 

なぜか「RICO法」違反の疑いで訴追

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 トランプを相手に起こされている刑事裁判は、私にはどれもでたらめなものに見える。ジョージア州のフルトン郡で起こされた裁判も随分とひどいものだ。  この裁判は、2020年に行われた大統領選挙に関するものだ。当時、トランプがジョージア州の選挙で不正があったとして、選挙結果に異議を唱える行動に出ていたことを覚えている方も多いだろう。フルトン郡はジョージア州最大の選挙区で、ここで大規模な不正が行われたと主張した。  この選挙不正を訴えて様々な動きを見せたことが、本来はマフィアなどを取り締まる「RICO法(威力脅迫及び腐敗組織に関する連邦法)」に違反する行為、つまりマフィアが暴れる際の組織的犯罪に等しいということにされたのである。  トランプを訴追したジョージア州フルトン郡地区の検事長は、ファニ・ウィリスという女性検事で、やはり民主党員だ。  ちなみにファニ・ウィリスの父親のジョン・フロイドは、暴力傾向の強いマルクス主義政治組織である「ブラックパンサー党」の系列組織の幹部だった人物で、ファニ・ウィリスはこの父親から強い影響を受けたことを認めている。  ところで、この裁判も実に不思議だ。確かにトランプはジョージア州の選挙結果に対して意義を申し立て様々な動きを見せたが、結局、選挙結果を覆せる証明をする機会を与えられないまま大統領の任期が終了し、もちろん仕方なくだが、バイデンに大統領の地位を譲り渡した。これの一体何が犯罪なのだろうか。  そもそも、トランプが立候補したのはアメリカ大統領選挙、つまり連邦レベルの話だ。連邦地方裁判所でトランプが訴追されているならばまだわかる。ところが、大統領選挙という連邦レベルの話を、ジョージア州内のことを扱うべき州の地方検事が訴追したのだ。  この訴追が行われたのは昨年の8月のことで、今年の11月に行われる大統領選挙まであと1年3ヵ月という時期であったことにも違和感がある。大統領選挙への準備がいよいよ始まるというタイミングに訴追するよう動いたのは、トランプをこれから迎える大統領選挙に集中できないようにするためなのではないかとの疑いを禁じ得ないのだ。  このように司法を武器化して、気に入らない人物を選挙で不利な状況に陥れるかのような行為は、断じて許されるものではない。公正な選挙を望むのであれば、大統領選挙期間中にはこの手の裁判は中断するのが当然の配慮ではないか。

 

 

 

 

検事長と特別検察官に浮上した重大疑惑

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 今年1月になって、トランプを訴追したファニ・ウィリス検事長に、重大な疑惑が浮上した。彼女がこのトランプ問題を捜査する特別検察官に選んだネイサン・ウェイドが彼女の恋人であり、二人が不倫関係にあったことが明らかになったのだ。  ネイサン・ウェイドの事務所には、特別検察官の報酬として、65万ドル(1億円)という法外な報酬が支払われていた。二人はフロリダ州やカリブ海などで豪華な休暇を過ごしていたが、その費用は、ネイサン・ウェイドに支払われた報酬を使っていたと目されている。  疑惑浮上後にファニ・ウィリスは、二人が大人の関係にあったことを認めたが、二人が恋愛関係になったのは、ネイサン・ウェイドが特別検察官になってからのことだと言い訳した。つまり、自分の恋人を引き立てたり、金儲けをさせる目的で特別検察官に任命したのではなく、任命後にたまたま仲良くなったにすぎないと宣誓供述したのだ。  ところが携帯電話の記録から、ネイサン・ウェイドが特別検察官になる前の11ヵ月で、すでに2000回を超える通話と11865件のメッセージ交換を行なっていたことが判明した。1日平均6件の通話と35件のメッセージ交換だ。普通の関係ではあり得ないだろう。  ネイサン・ウェイドが同じ期間にファニ・ウィリスの自宅付近のエリアに少なくとも35回滞在していることも明らかになった。携帯の位置情報からは厳密な場所の特定までには至らず、自宅付近のエリアにいたところまでしかわからないが、普通に考えればファニ・ウィリスの自宅にいて、夜を共に過ごしたと推定されるものだろう。  ファニ・ウィリスのかつての同僚のロビン・ヤーティーは、二人が2019年には人前でハグやキスをする間柄になっており、間違いなく交際を始めていたことを証言した。  そもそも、マフィアの取り締まりのための法律であるRICO法(威力脅迫および腐敗組織法)違反で前大統領を追い詰めるという前代未聞の裁判を扱うことを考えた場合、ネイサン・ウェイドは明らかに経験不足と言わざるをえない。ネイサン・ウェイドは交通違反切符を扱う程度のことしか、刑事事件に関わってこなかったからだ。  事実、ネイサン・ウェイドは、特別検察官としての仕事を始める前の段階で提出すべき宣誓書を提出しないまま公務についていたことが後に明らかになり、問題になっている。この程度の法的手続きにも杜撰な対応をしてしまう人物なのだ。

 

 

 

 

アメリカの司法制度の深い闇

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 このように、

目立った業績があるわけでもなく、

能力的にも疑問符のつく

ネイサン・ウェイドが、この重大な事案での特別検察官に

なぜか抜擢された背景には、

ファニ・ウィリスとの私的に濃密な関係があったからではないか

というのは、当然、疑惑になる。

 

ジョージア州議会は調査委員会を設置し、この重大疑惑を調査することを決定した。

 

  事件を担当するスコット・マカフィー判事もこの重大疑惑について無視できなくなり、

ファニ・ウィリスかネイサン・ウェイドのどちらかが、

この事件の担当から外れることを求めた。

 

  ファニ・ウィリスが身を引くと、地区検察内で後任を決める審議が必要となるなど手続き的に煩雑で、裁判自体に致命的なダメージを与えることになる。

結果、事実上はネイサン・ウェイドが降りる選択肢しかなかった。

そして彼は特別検察官から降りることを表明した。

 

  ただし、スコット・マカフィー判事は、

ファニ・ウィリスとネイサン・ウェイドの疑惑に対する疑問を立証する決定的な証拠はないとして、

二人を追い込むことはしないという、極めて甘い判断を下した。

 

  ここにも裏事情がある。

スコット・マカフィーはファニ・ウィリスの部下だったことがあり、

ファニ・ウィリスによって上級地方検事補に昇進させられた過去がある。

 

ちなみに2020年に行われた、地区検事長を選ぶ選挙では、

マカフィー判事はファニ・ウィリスを応援する立場からファニ・ウィリス陣営に寄付を行っているのだ。

 

  検事と判事がこうした深い関係にあることが

問題にされないで裁判が進められていることにも、

アメリカの司法制度の深い闇を感じないだろうか。

 

  法の下の平等が無視され、民主党側には徹底的に甘く、トランプ側には徹底的に厳しい

司法のあり方を象徴するゴタゴタを、改めて見せつけられた思いだ。

朝香 豊(経済評論家)

 

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