イスラム世界で西側諸国に怒り!自由主義の人権はなくなったのか、米国は日本も眼中にない可能性(Wedge(ウェッジ)) - Yahoo!ニュース

 

イスラム世界で西側諸国に怒り!自由主義の人権はなくなったのか、米国は日本も眼中にない可能性

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Wedge(ウェッジ)

(seungyeon kim/ArLawKa AungTun/gettyimages)

 ケイトー研究所上級フェローのムスタファ・アクヨルは、Foreign Policy誌(電子版)に2月20日付で掲載された論説‘The West Is Losing Muslim Liberals’で、バイデン政権と西側諸国がガザで虐殺を行っているイスラエルを支持し続けることは、人権の尊重等の西側のイデオロギーを信じていた穏健なイスラム教徒を驚愕させており、ロシアや中国、イランという反自由主義勢力を勢いづけ、世界をも危険な淵に追いやる、と論じている。要旨は次の通り。  戦闘はレバノン、シリア、イラク、さらにヨルダン、イエメンに拡大している。十分に認識されていないが、中東のみならずイスラム世界で米国と西側同盟国に対する前例の無い程の怒りが生じている。連日、何百万人もの人々がガザで起きている恐るべき光景をテレビの生放送で見ているからだ。  もちろんイスラエルには自衛権がある。しかし、何十倍もの市民を殺害しているイスラエルの行動が、(ハマスの)テロ以上に正当化されるのであろうか。多くの人々、特にイスラム世界でイスラエル人の命はパレスチナ人の命よりも重いと感じている。  これは、第2次世界大戦以来、西側諸国の政府が指導して来た普遍的な人権と人間の尊厳という自由主義の価値観の明確な否定だ。西側の規範に対する信頼が失われたことは、反米主義者や西側が主導する秩序に批判的な人々のみならず、リベラルなイスラム教徒にも影響し、彼らは裏切られたと感じている。  もし、人権が全ての人々に適用されず、言論の自由が全ての言論に適用されないのならば、これらの原則はとるに足らないものということになる。このような「ポスト自由主義」の世界は、われわれ全てにとり恐ろしいものとなろう。

 

西側の民主主義がこれらの原則を捨てるならば、

ロシア、中国、そしてイランの様な反自由主義勢力がより力を得るであろうし、

イスラム世界でより残忍なイスラム過激主義グループが台頭するだろう。

 

 

 

 

 西側諸国の政府のイスラエル寄りの政策は、世界を危険な淵に追いやるばかりではなく、イスラエルの極右政権が行う戦争に対する無条件の支援はイスラエルにとっても良くない。イスラルの友好国は、白地小切手を「民族浄化」を主張するような最悪の相手(極右政権)に切るべきではない。  極右政権は、ガザを破壊し、イスラエルの未来のみならず、既に問題を抱えている世界の将来の自由と平和も危険に晒している。手遅れになる前にバイデン政権は、その政策を変えなければならない。即時停戦するよう圧力を加え、和平への明確な筋道を示さなければならない。自由主義的世界秩序が冷笑的で暴力と圧政の無秩序に代わるべきである。 *   *   *

グローバル・サウスとの亀裂

 この論説は、バイデン政権をはじめとする西側諸国がイスラエルのネタニヤフ極右政権を支持し、同政権がパレスチナ人を虐殺するのを止めないことは、人権の尊重や人間の尊厳等の西側の自由主義的価値観を信じていたイスラム世界のリベラルな人々にショックを与えているとしている。しかし、むしろ、今回のガザの衝突に対するアラブ世界の静けさに、より大きな衝撃を覚える。  イスラム原理主義のムスリム同胞団の系譜のハマスに対してほとんどの中東諸国が今回の衝突に対して冷たいのは、これらの中東諸国は独裁政治であり、中東の独裁国家はムスリム同胞団を自分達の独裁を脅かす存在と見なしているからなので驚きではない。しかし、民衆レベルでも、2010年のアラブの春の民衆蜂起に比較して、せいぜいイスラエル軍にハンバーガーを無償提供しているマクドナルドをボイコットする程度で動きは鈍い。一昔前までパレスチナ問題は、「アラブの大義」と呼ばれ、全アラブ民族の共通の問題とされていた時期があったことを思えば、この状況は謎だ。

 ガザの衝突でイスラエルを無条件に支持したことが、米国およびその同盟国の主張する人権尊重等のイデオロギーのダブルスタンダードさを露わにし、世界の信頼を失わせたという指摘は正しく、非常に懸念される事態だ。2月、ロシアのウクライナ侵攻から2年経ったが、十分な支持を得られる見込みがないので国連総会でロシア非難決議が提案すらされなかった。このことは、ガザの衝突がいまだかって無い程、米国および西側先進国とグローバル・サウスとの亀裂を広げていることを示唆している。

米国の同盟国は欧州諸国のみか

 なお、われわれはアジアの日本、韓国、台湾は米国の重要な同盟国だと当然視しているが、

この論説は米国の同盟国を欧州諸国と見なしており、

日本、韓国、台湾は眼中に無い。

 

通常、われわれは、アジアの問題に関心のある米国人と付き合い、

彼らと違和感無しに対話しているが、

実は大多数の米国人にとり、アジアは眼中に無いのではないか。

 

  米国第一主義のトランプ政権の復活も取り沙汰されているが、

今後、米国がますます孤立主義的な傾向を進めていく中で、

どのようにして中国、北朝鮮と緊張が高まりつつあるアジア情勢に

広く米国民の関心を喚起出来るかについて考えなければいけないだろう。

岡崎研究所

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