金正恩の韓国政策の変更へ日本人が備えるべきこと 韓国世論の変化と日米韓協力関係の重要性(Wedge(ウェッジ)) - Yahoo!ニュース

 

金正恩の韓国政策の変更へ日本人が備えるべきこと 韓国世論の変化と日米韓協力関係の重要性

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 ジョン・ボルトン元米国家安全保障担当大統領補佐官が、2024年1月24日付のウォールストリート・ジャーナル紙に、「金正恩が仮面を脱ぐ。北朝鮮は公式“平和的再統一”を完全支配のために拒絶する」との論説を書いている。  金正恩は先週、朝鮮半島の平和的統一を求めることはしないと表明した。北朝鮮がICBM(大陸間弾道ミサイル)で核弾頭を届ける能力をほぼ開発した今、金は、北朝鮮の「憲法」から平和的再統一への言及を一掃し、この問題を取り扱う政府組織を撤廃すると発表した。朝鮮半島には二つの国家があることを事実上認め、戦争が起こった場合、北朝鮮は「韓国を完全に占領し従属させ、われわれの共和国の領土の一部として併合する」計画であると述べた。   彼の言辞は、韓国の左派のデタントと宥和を求める「太陽政策」が間違っているのみならず、危険であることを暴露した。金は、韓国を北朝鮮の「第1の変わらない主要な敵」であると述べた。  騙されやすい韓国と米国の指導者は、北朝鮮は攻撃される恐怖ゆえに、核兵器を追求しているとの北朝鮮の主張を受け入れてきた。彼らは金王朝が核を放棄するように説得するためには米国が北朝鮮に対して「敵対的意図」を持っていないと証明することであると考えていた。  この議論は北朝鮮の政権は再統一を北が南を吸収して行う考えであることを把握し損なった。北朝鮮は、韓国の同盟国や隣国を核兵器で脅し、韓国からの米軍撤退を求めた。金は侵攻の際に米国が韓国を見捨てるように説得したがっていた。  金らは鄧小平の「隠して時を待つ」方法に倣い、核、ミサイル計画の進展を隠し、米国での御しやすい政権を待つ方法を取ってきた。今日、北朝鮮は弱いバイデン、あるいは無責任なトランプを見て、自分たちの時が来たと考えている。  ソ連崩壊後、北朝鮮でのロシアの影響力は弱まり、北朝鮮は生き残りのために中国に依存した。いまは核能力とその運搬手段を持ち、ウクライナでのロシアの失敗は関係の再編の機会を与え、金はそれを利用し重要な時期にロシアに武器援助をした。プーチンは「早期に」北朝鮮を訪問する計画を発表した。

 

 

 バイデン政権がイスラエル等で手一杯になり、大統領選挙が近づく中、北朝鮮と中国は機会が来たと信じるかもしれない。北朝鮮の人民を結集させ、憲法を変え、再統一の制度を撤廃し、金はそのための準備をしている可能性がある。 *   *   *  ボルトンらしい論説である。論旨は明快で、今回の金正恩の南北朝鮮関係についての政策変更を重視し、その危険を解説している。戦争を避けるつもりはないと金正恩は明言しているので、それなりに警戒心を持つべきであろう。しかし吠え立てる犬は嚙みつかないという見方もあり、それほど心配することはないとも考えられる。  南北朝鮮の間の同族意識はかなり強いところがあり、韓国の世論、特に左派の世論形成に大きな意味を持ってきた。金正恩が韓国を主要な敵と規定したことは、韓国の世論で北朝鮮に宥和政策を主張してきた勢力には打撃になり、彼らの韓国での主張を掘り崩す効果を持つ。  愛憎が交錯する韓国での対北世論は、対北憎悪の比重が増えてきて、対北政策はより現実を踏まえたものになる可能性がある。これは、歓迎されることである。

韓国の反日感情を抑える側面

 こういうことが起こってきたのは、尹大統領就任以来、韓国が日米両国との関係の改善にかじを切ったことが背景としてある。日韓関係についても、徴用工問題での判決など、摩擦のもとになることはあるが、日米韓の3国協力を進めていくことが今は優先されるべき課題であると考えられる。

 

  ボルトンは、金正恩の政策変更に危険を見ている。

それを否定はしないが、

この政策変更は、韓国国内での北朝鮮シンパの発言力を弱めるものであり、

反日の統一戦線がしにくくなったということでは、

地政学的には良い面もあると思われる。

 

 金日成が同族意識を再統一への主たる根拠としたのは正しく、それを否定した金正恩の今回の決定は、北朝鮮にとっては将来に禍根を残す可能性があると思われる。

岡崎研究所

 

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