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「トランプの逆襲」で世界はどうなる?(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

「トランプの逆襲」で世界はどうなる?

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ニューズウィーク日本版

<過剰反応、先走りは禁物だが、一番心配されるのは世界の文明の行き先をアメリカが変えてしまうこと>

故安倍元首相(右)はトランプと良好な関係を維持したが(17年) TORU HANAIーPOOLーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

 

『キングコングの逆襲』よろしく、いまアメリカではドナルド・トランプ前大統領が共和党予備選を制圧中。在任中、散々振り回された諸国では、識者らが集まって「トランプ2.0」でどうなるか、議論を重ねる。

 

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特にそれが目立つのは、NATOの欧州諸国。「トランプはウクライナを捨てて、ロシアと手を握る。そして在欧米軍も減らすだろう」というわけだ。実際には、在任中のトランプが欧州諸国に求めた自主防衛努力は強化されているし、ドイツのアンゲラ・メルケル前首相とけんかにまでなったロシアからの天然ガス輸入は、3分の1ほどに減少した。今更米欧対立の種はないのだが、欧州諸国の思い込みと先走りが事態をあらぬ方向に動かしてしまうだろう。 例えば、「トランプはロシアと手を握る」と思い込んだ欧州諸国、特に独仏首脳はトランプに先行して(そうしないと、自分の値が下がる)モスクワ詣でをするだろう。ばか正直な日本は、「気が付いてみたら、ロシアに厳しいのは自分だけだった」ということにならないよう、気を付けないと。 中東でトランプは第1期の政策を続けるだろう。アラブ諸国とイスラエルの和解(2020年の「アブラハム合意」)が彼の自慢の種だから、パレスチナはそのはざまで黙らされるだろう。強権主義の中東諸国政府はトランプと相性がいい。トランプのアメリカは中東諸国と同じ無原則、権益優先の行動を示すことになるだろう。 アジアでは、中国との関係がどうなるか。端的に言って、トランプに「戦略」はない。「何でもいい。アメリカの支持者にはっきり業績として示せること」が欲しいだけだ。例えば中国の対米貿易黒字の半減とか。

 

 ■日米同盟に変わりはないが......

 

 心配なのは、中国と貿易問題での「ディール」の最中、取引の道具としてお門違いの台湾を使う可能性があることだ。今、「台湾有事」の可能性は後退しているのだが、トランプは危機をあおり立てて中国に圧力をかけ、中国が貿易問題で譲歩すれば、台湾をソデにする......台湾ではこのようなシナリオが恐れられている。 トランプは、日本に対してどう出てくるか。読めない。在任中の彼は、「日本は日米安保にただ乗りしている。もっとカネを出せ」という、「古典的な」圧力をかけてきた。「日本がカネを出さなければ米軍は引く」という脅し文句をつけて。しかし彼は安倍首相(当時)に、日本は十分以上にカネを払っていることをゴルフ仲間として説得され、珍しく納得した。米軍からも、日本の基地はアジアでの米軍の運用に不可欠だと言われたことだろう。

 

 

<世界は中世の時代に逆戻り>

心配なのは、

彼が台湾防衛の前面に日本を立たせようとする、

そして途中ではしごを外すかもしれないことだ。

 

ただ、いずれにしても「トランプ再選で日米同盟は終わり」ということにはならない。

対中・対北朝鮮抑止に米軍と日米同盟は絶対必要なのだから、過剰反応、先走りは禁物だ。

 

 経済関係については、日本の対米貿易黒字はもう突出して多くないので問題にならない。

トランプが国内産業保護のために関税を上げても、日本はさして困らない。

トランプにとっては、米国内での日本企業の投資、米企業との提携のほうが重要だろう。

 

 一番心配なのは、トランプのアメリカが世界の文明の行き先を変えてしまうことだ。

他国の人間たちの権利・生活を思いやることがなければ、

世界はやらずぶったくりの中世に逆戻りとなる。

 

トランプを支えるアメリカの保守層には、自分たちの権利だけでなく、

世界に責任を持つことが、「アメリカを再び偉大な国にする(MAGA)」秘訣であることを分かってもらいたい。

河東哲夫(外交アナリスト)

 

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「米大統領選」について解説

 

いま知っておくべき国際問題を解説

世界で起こっている問題を、家庭内で子どもたちと一緒に学んでいきましょう。この連載では国際政治学者の国際政治先生が、いま知っておくべき国際問題を分かりやすく解説していきます。今回は「米大統領選」について取り上げます。

世界的な選挙イヤーの2024年。注目は11月の米大統領選挙

今年に入って既に台湾で総統選挙が実施されましたが、今後はインドやインドネシア、ロシアや韓国、メキシコや米国など各国で大統領選挙や議会選挙が行われる選挙イヤーです。どの選挙も世界情勢の今後にとっては目が離せない選挙ですが、最大のポイントは11月に行われる米大統領選挙の行方。これは今後の世界の行方を大きく左右する可能性があり、これまでの米大統領選の中でも特に注目されます。

バイデンVSトランプが再び!?

なぜ、そこまで関心を寄せるのかと言えば、あのトランプ氏が再び共和党候補になる可能性が極めて濃厚だからです。そして、11月の本選に向けての戦いは既に始まっています。 「もしもトランプ氏が大統領になったら…」を略して、「もしトラ」という想像も盛り上がっています。 米中西部アイオワ州では1月15日、米大統領選に向けた共和党候補指名争いの初戦となる党員集会が行われ、トランプ氏が圧倒的大差で勝利しました。オハイオ州の地元紙「デモイン・レジスター」が直前に発表した世論調査では、党員集会参加者の48%がトランプ支持者で、2位のヘイリー氏が20%、デサンティス氏が16%、ラマスワミー氏が8%となり、既に共和党候補はトランプで事実上決まりという状況になっています。 そして、民主党ではバイデン大統領が再選を目指しており、秋の本選は4年前のバイデンVSトランプの再戦が濃厚。しかし、ここでバイデンが連勝できるかというと、そうとも限りません。現在バイデン大統領の支持率は33%あまりで高くはなく、両者の比較ではトランプ有利とのメディア報告もあります。

トランプ氏の勝利で影響を受けるウクライナ情勢

では、仮にトランプ氏が勝利することになれば、世界情勢はどのように変化する可能性があるのでしょうか。 まず、大きな影響を受けそうなのがウクライナ情勢です。トランプ氏は昨年春、大統領に返り咲けば最優先でウクライナへの支援を停止すると言及しました。もし、仮にそうなれば侵攻を続けるロシアの勢いが強まることになり、ウクライナでの戦況はいっそう厳しいものになるでしょう。 それに続きますが、米国と欧州との関係は再び悪化していくことになります。欧州ではロシアと距離が近い東欧の国々を中心にロシアへの警戒感が強く、ウクライナから離反した米国への不信感が広がることになります。また、トランプ氏は以前からNATOからの脱退をちらつかせるなど、英国やフランス、ドイツなどとの関係も急激に冷え込んだことから、欧州主要国も今年の大統領選の行方を注視しています。 今日、世界では欧米や日本などを中心とする民主主義陣営と、中国やロシアなどの権威主義との間で対立が深まっていますが、トランプ氏の復権は民主主義陣営の中での分断を深め、それが中国やロシアに利する可能性があるのです。ロシアがウクライナ侵攻をエスカレートさせたり、中国の台湾侵攻のハードルが下がったりと多くのリスクが考えられます。

 

 

米中の貿易摩擦が悪化し世界経済に影響を及ぼす可能性も

また、中国との間では再び貿易摩擦が激化することになるでしょう。

トランプ氏は大統領だった時、米国の雇用や利益が中国によって奪い取られているとの認識から、

中国への輸出入規制や関税引き上げなどを連発し、

米中の間では貿易摩擦が拡大し、世界経済に大きな影響を与えました。

 

バイデン政権下でも半導体を巡って中国への輸出規制が強化されましたが、

トランプ氏の復権は再び米中の貿易摩擦を激しくさせることになります。

 

 トランプ氏の勝利は米国民の決定であり、我々はそれを尊重する必要があります。

そしてそれも1つの民主主義であり、米国の1つの姿とも言えます。

しかし、トランプ氏の復権は今日の世界情勢を大きく変化させる可能性があり、

我々は今のうちからトランプ勝利による変化を考えておく必要があります。

この記事のPOINT

トランプ氏が復権すると起きる可能性があるものは?

 

 ウクライナへの支援を停止する

 米国と欧州の関係が悪化する 欧米や日本などを中心とする民主主義陣営と、

中国やロシアなどの権威主義との間で

対立が深まる可能性がある

 

 米中で貿易摩擦が激化する 

 

 

記事執筆:国際政治先生 国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。

大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

国際政治先生

 

 

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