頼清徳氏当選の舞台裏 馬英九前総統の発言で吹いた「神風」 50万票が動いていなければ結果は逆転(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース
頼清徳氏当選の舞台裏 馬英九前総統の発言で吹いた「神風」 50万票が動いていなければ結果は逆転
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【ニュース裏表 峯村健司】 筆者はいま台北で、13日の台湾総統選に当選した与党・民進党の頼清徳(らい・せいとく)陣営の幹部らと意見交換を重ねている。
頼氏は、最大野党・国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長と、台湾民衆党の柯文哲(か・ぶんてつ)前台北市長との三つどもえの激戦を制し、初当選した。
にもかかわらず、陣営幹部らに高揚感はない。
その理由について、陣営幹部の一人は神妙な面持ちで語る。
「厳しい結果となった。有権者は『頼清徳』には信任を与えてくれたが、
わが党が担ってきた、これまでの8年間の成果には『NO』を突きつけた。
中でも20代、30代の支持がほとんど得られなかった衝撃は大きい。
政権のインフレ対策や不動産価格の高騰に対して強い不満を抱いている。
新政権はまず、効果的な経済政策を打ち出すことが急務だ」
頼氏の得票率は40%にとどまり、総統選に直接選挙が導入された1996年以来、2番目の低さとなった。
若者の票は、批判票となって第3勢力である柯氏に流れた。
頼氏が辛勝できたのは、ライバルである
国民党の馬英九(ば・えいきゅう)前総統の投開票日3日前に公開されたインタビューが影響したようだ。
ドイツの国際公共放送「ドイチェ・ヴェレ(DW)」の記者から
「(中国の)習近平(国家主席)を信用するか」と尋ねられ、
馬氏はこう即答した。
「両岸(中台)関係については、信頼しなければいけない。
統一は憲法に書いてあり、本来は受け入れられる」
馬氏は総統だった2015年にシンガポールで、中台が分断して初めて最高指導者として習氏と会談している。昨年3月には、総統経験者として初めて中国を訪れてもいる。
「親中派」の馬氏の発言は、中国との統一に反対する有権者の反感を招いた。
前出の頼陣営の最高幹部は続ける。
「馬氏の発言によって、候陣営は50万票前後失ったと試算している。
まさに『神風』が吹いた」
慌てた国民党候補の候氏は「私と馬前総統の意見は同じではない」と火消しを図ったが、
時すでに遅し。
中国とは距離を置いて台湾の独自性を強調する民進党政権の継続を有権者は選択したのだ。
今回の得票数は頼氏が558万票で、候氏が467万票。
この幹部の言うように、もし馬発言がなく50万票が移動しなかったと仮定した場合、
頼氏が508万票で、候氏は517万票で逆転する。
「中国との統一は断固として受け入れない」という有権者の意思が、
対中強硬派の頼氏の勝利を押し上げたのだ。
頼氏は勝利確定後の記者会見で、
蔡英文政権の外交・国防路線が評価されたとの認識を示し、胸を張った。
「世界に対して、台湾は引き続き国際社会と民主主義の盟友とともにあることを示した」
(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)
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台湾総統選挙「民進党優位の終わり」「国民党長期衰退傾向」…研究者の受け止め
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研究会で報告した東京外国語大学名誉教授・小笠原欣幸氏(左)と東京大学教授・松田康博氏(右)(2024年1月26日 都内)
今月行われた台湾総統選挙。その結果について分析する研究会が、26日、都内で開かれました。総統選挙は、与党・民進党の候補が当選しましたが、登壇した台湾政治の研究者からは、「民進党の優位時代が終わった」などと厳しい見方も。今回の結果から見えてきたものとは?(国際部・坂井英人) 今月13日に行われた台湾総統選挙は、中国と距離を置きアメリカとの関係を重視する民進党の頼清徳氏が勝利し、民進党政権の継続が決まりました。
■「民進党の優位時代が終わった」
東京外国語大学名誉教授で台湾政治研究者の小笠原欣幸氏は、26日に早稲田大学で行われた「台湾総統選挙研究会」で、今回の結果について、得票率が相当接近している点を指摘しました。 国民党・侯友宜氏と民衆党・柯文哲氏の合計の得票率(60.0%)が、当選した頼氏(40.1%)を上回ったことから、「総統選挙における民進党の優位時代が終わった」と分析しています。 同じ日に行われた立法院(日本の国会に相当)の選挙では、全113議席のうち、中国との対話を重視する国民党が最多の52議席を獲得。民進党(51議席)を1議席上回って第一党の座を確保しています。 ただ、両党とも過半数(57議席)に達せず、8議席を獲得した第三政党の民衆党がキャスチングボートを握っている状態に。今後の政権運営にとってこの8議席が大きな意味を持つと強調しました。 小笠原氏はさらに「選挙の争点」について、頼氏と侯氏が明確に「中台関係」の争点化を図ったものの、中間派の有権者にはあまり響かなかったとみているということです。 柯氏が中台関係について、あいまいなスタンスをとったことも影響し、「中台関係が争点であったか」は「頼氏・侯氏の選挙戦略をみれば『争点だった』となるし、柯氏の選挙戦略をみれば『大きな争点ではなかった』となる。どこを見るかで(争点は)変わる」と指摘しました。
■「国民党の長期衰退傾向がはっきりした」
小笠原氏に続いて研究会で報告した東京大学教授の松田康博氏は、投票率が下がったにもかかわらず民進党が比例区で票数を伸ばしていることから「実は岩盤支持層が増えている」と分析。 一方で、国民党は総統選挙の得票率が、3回連続で40%に達していないことや、政党票も伸び悩んでいることから、「今回、非常によくわかったのは、国民党の長期衰退傾向だ」と指摘しました。 次回、2028年の総統選挙をめぐっては、民衆党の柯氏がすでに出馬の意向を示しており、再び3候補による争いになると予想されることから、「民進党が(得票率)40%を確保すれば、頼氏の再選は十分可能だ」との見方を示しました。
また、中国が選挙結果について
「民進党は台湾の主流の民意を代表できない」などと反応したことについて、
台湾で統一支持者が意味が無いほど少なくなっている現状を認めてしまうと、
武力による統一をしなくてはならなくなるため、
「武力行使をしなくてすむ理由を構築している。
中国は戦争をしたくないからだ」としました。
その上で、4年後の総統選挙に向けて野党候補一本化を目指し工作を行うだろうと指摘しています。
日本と非常に関係の深い台湾。東アジアの安全保障にも大きく関わる台湾の政治が、どう示されていくのか。
新総統の就任は5月です。
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恐るべき台湾統一シナリオ 習氏の〝戦略ブレーン〟が著作で示した、軍事侵攻しない「知能戦」「死者ゼロ」という戦い方
【八木秀次 突破する日本】
中国の習近平国家主席は「台湾統一」について、昨年12月26日の毛沢東生誕130年の演説で、「必ず実現する。いかなる方法であれ、台湾を中国から分裂させることを断固阻止する」と強い意欲を示した。それはどのような方法で行われるのか。 【比較してみる】中国と台湾の軍事力 習氏の戦略ブレーンとされる劉明福中国国防大学教授(上級大佐)は「台湾統一」のシナリオとも言うべき著書『中国「軍事強国」への夢』(文春新書)で「我々の願いは平和的統一だが、統一は平和より尊い。平和的手段によって統一が実現できないとき、平和のために統一を犠牲にしてはならず、放棄してはならない。平和のために統一を無期限に延期するようなことがあってはならないのだ」と武力統一を辞さない考えを示している。 一方で劉氏は「野蛮で陰惨な戦争ではなく、人類史のなかで前代未聞の『知能戦』『文明戦』そして『死者ゼロ』の戦い方でなければならない。この戦争は、『中国の特色ある新型戦争』と言え、世界戦争史上の奇跡を起こすもので、21世紀における知能戦争の新境地を切り開くものになるだろう」と単なる軍事力を使った戦争でないことを強調している。 2つの発言は矛盾するようにも思えるが、そうでもないようだ。 劉氏の著書の監訳者でもある、ジャーナリストでキヤノングローバル戦略研究所主任研究員、峯村健司氏が『文芸春秋』2月号に発表した「台湾『2025海上封鎖』シナリオ」は、その問題を解き明かしている。 簡単に言えば、中国は台湾に軍事侵攻しない。日本領土や自衛隊基地、在日米軍基地も攻撃しない。日本や米国が手出しのできない「知能戦」を展開する。 「国家統一法」なる国内法を制定して、改めて台湾は中国領土であることを内外に示すという。台湾海峡は中国の内海になり、外国船舶を相手国の同意なしで臨検できるようになる。台湾に発着する外国の航空会社の乗り入れも制限できるようになる。 その後に中国軍が台湾周辺で大規模な軍事演習を行い、台湾と外国との回路を断つ。そして、兵糧攻めに追い込む。干上がりかけたところで「人道回廊」を設置すると言い出し、その代わりに台湾統一を当局との「対話」で実現しようというものだ。
「これこそが、中国側の言う『平和的統一』だ」というのが峯村氏の見方だ。その「平和的統一」を、台湾独立派の頼清徳氏の政権に行わせようというところがミソなのだろう。統一後、劉氏は「台湾独立処罰法」を制定し、台湾独立勢力に刑罰を科すべきとし、そのために公開の「台北裁判」を実施するとも述べている。暗黒社会の到来だ。
以上のような事態に、日本はどう立ち向かうのか。台湾の次は沖縄かもしれない。
■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。
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