民進党、少数与党に 議会で鍵握る野党第2党(共同通信) - Yahoo!ニュース

民進党、少数与党に 議会で鍵握る野党第2党

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共同通信

 【台北共同】13日の台湾総統選と同時実施された立法委員(国会議員)選(議席113)では与党、民主進歩党(民進党)が過半数の議席を確保できなかった。

 

総統選では民進党の頼清徳副総統が当選したが、政権安定のためには野党との協力が不可欠。

法案や予算案の採決で、野党第2党の台湾民衆党の動向が鍵を握りそうだ。

 

  民進党は立法院で現有62議席。最大野党、国民党の37議席、台湾民衆党の5議席を上回り、

単独で過半数を占めている。

台湾メディアの集計によると、

民進党の議席は51前後まで減り、国民党が52前後まで伸ばす勢い。民衆党は8議席を獲得したとみられる。

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蔡政権路線の継続は国際社会に利点 松田康博・東大教授 台湾・総統選(産経新聞) - Yahoo!ニュース

 

蔡政権路線の継続は国際社会に利点 松田康博・東大教授 台湾・総統選

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産経新聞

中台関係が専門の松田康博・東大教授

台湾の総統選で与党、民主進歩党の頼清徳副総統が初当選した。東大教授の松田康博氏は、蔡英文政権の政策の継続は国際社会にとって利点があると指摘した。 民主進歩党の蔡英文政権は政権交代を招いた過去2代の政権と異なり、任期中を通じて支持率が高かった。頼清徳氏はその路線を継承する候補とみなされたことが勝因となった。 政権交代すべきだという雰囲気はあり、野党が期待を集める候補に統一していればチャンスはあった。だが、支持者の構造を見ると、

柯文哲氏の台湾民衆党は第3勢力とはいえ

「第2民進党」といえる存在で、国民党との候補統一は実現できなかった。

 

全体としては「(台湾の)本土勢力」が強まり、

(注:蒋介石の)国民党の長期的な衰退傾向が顕著になった。

 

 国際社会では米国を中心に対中包囲網の形成が進んできた。

その前提は台湾に中国の武力の脅しに屈しない強い意志を持つ政権が存在することだ。

その意味で、蔡政権の政策の継続性が担保できるならば国際社会にとり利点だ。

 

一方で、立法院(国会に相当)がねじれた場合、政権の政策を実行しにくくなる。 中国にとり民進党が勝利すれば不本意だろうが、今回が初めてではない。5月の総統就任演説の内容を把握し台湾側に影響力を及ぼすため、水面下で台湾側と意思疎通を始めるはずだ。

11月の米大統領選も見据えて慎重に対応するだろう。

 

 日本を含む国際社会は、中国が武力や威圧で台湾海峡の現状変更を試みないよう監視を強め、

中国に責任ある行動を促すことが大切だ。(聞き手 田中靖人)

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「正しい候補選んだ」 頼氏支持者、喜び爆発

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共同通信

台湾総統選で民進党の頼清徳氏が当選し盛り上がる支持者ら=13日、台北(共同)

 【台北、新北共同】13日の台湾総統選で民主進歩党(民進党)候補の頼清徳副総統が勝利し、支持者は喜びを爆発させた。台北市の事務所周辺に駆け付けた女性(54)は「台湾人は正しい候補を選んだ。これからも正しい道を歩む」と興奮した様子で話した。

 

  頼氏陣営の担当者によると、事務所近くで開かれた集会には約1万人が詰めかけた。周辺の路上も支持者で埋め尽くされ、頼氏のリードが伝わるたびに「当選」のシュプレヒコールが上がった。

30代の女性は、中国の統制が強まり民主化の芽がつまれた香港を引き合いに

「頼氏は台湾を守ってくれる。台湾を第二の香港にしてはならない」と話した。

 

  大勢が判明した13日午後8時ごろ、最大野党、国民党の侯友宜・新北市長は同市の演説会場に姿を見せ、

支持者らを前に「政権交代を達成できずに失望させた」と敗北を宣言し10秒ほど頭を下げた。

 

野党第2党、台湾民衆党の柯文哲・前台北市長も敗北を認めつつ

「台湾に国民党と民進党以外の声が必要だと証明した」と手応えを口にした。

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「親米vs親中」だけでない台湾選挙――‘大胆な改革者’に率いられる第三勢力とは

六辻彰二国際政治学者

 

台南の投票所(2024.1.13)(写真:ロイター/アフロ)

  • 台湾では独立を掲げる民主党、対中融和を打ち出す国民党の二大政党の構図が定着してきた。
  • しかし、今回の選挙では「アメリカとも中国とも関係をもつ」方針の第三政党、民衆党が台風の目になっている。
  • その獲得議席数次第では、民衆党がキングメーカーになる可能性も指摘されている。

 

 台湾の総統選挙と立法院選挙では、これまでの「民進党(独立派)vs国民党(対中融和派)」の二項対立で収まらない構図が表面化している。その台風の目になっているのは若者だ。

 

台頭する第三勢力

 台湾の選挙はこれまでにない複雑さを浮き彫りにしている。本稿執筆段階では1月13日朝から始まった投票の結果は不明だが、それでも事前の世論調査からは「親米vs親中」の二者択一にとらわれない有権者が増えていることがうかがえる。

 

投票所で投票する頼清徳候補(2024.1.13)。副総統という知名度を活かして総統選挙を有利に戦った。
投票所で投票する頼清徳候補(2024.1.13)。副総統という知名度を活かして総統選挙を有利に戦った。(写真:ロイター/アフロ

 

 まず事前に行われたエコノミスト誌の世論調査から全体の情勢を簡単にまとめると、総統選挙では民進党の頼清徳副大統領が約40%の支持を集め、これに国民党で親北市長の侯友宜候補(約31%)、そして台湾民衆党で元台北市長の柯文哲候補(約22%)と続いた。

 

 現職の蔡英文総統の後継候補である頼清徳が総統選で有利な情勢は、他の世論調査からもうかがえる。

 

 一方、国会にあたる立法院選挙では、多くの事前調査が単独過半数を得る政党はないと示唆している。

このうちエコノミスト誌の調査は、国民党が113議席中50~55議席、民進党が40~48、民衆党が10~12と予測している。

 

 これ以外の多くの調査も、民進党は現状の61から議席数を減らすとみている点ではほぼ共通する。

その場合、事実上の国家元首にあたる総統と立法を司る立法院に「ねじれ」が生じることになる。

 

民衆党の柯文哲党首(2024.1.12)。医師から政治家に転身し、台北市長時代には「改革者」として剛腕を振るった一方、女性蔑視と取られる発言も目立つ。
民衆党の柯文哲党首(2024.1.12)。医師から政治家に転身し、台北市長時代には「改革者」として剛腕を振るった一方、女性蔑視と取られる発言も目立つ。(写真:ロイター/アフロ

 

 その場合のキーは、第三党になると見込まれる民衆党で、「キングメーカーになり得る」という観測もある。実際、国民党はすでに民衆党との連携に向けた動きを活発化させている。

 

柯文哲とは何者か

 台湾政治で台風の目になった民衆党とそれを率いる柯文哲とは何者か。

 

 1959年生まれで64歳の柯文哲は、医師から政治家に転身した変わり種だ。台湾の最高峰、国立台湾大学の医学部附属病院などで勤務し、台湾で初めてECMO(体外式膜型人工肺)を導入したといわれる。

 

 その後、2014年の台北市長選挙に無所属で立候補し、民進党の候補を破って当選。市長時代は行政改革を進め、1469億台湾ドルあった市の負債を571億台湾ドル削った一方、政府が大幅に減らしていた年金を市独自に増やすといった取り組みもみせた。

 

高雄市で行われた民衆党の集会(2024.1.7)。若者の姿が目立つ。
高雄市で行われた民衆党の集会(2024.1.7)。若者の姿が目立つ。(写真:ロイター/アフロ

 

 支持者から「大胆な改革者」と評される一方、いわゆる政治家らしい政治家ではなく、放言・暴言が少なくないので、政敵からは「差別主義者」とも呼ばれる。

 

 昨年7月、台北ミュージックセンターでの集会を拒絶された際、黃韻玲センター長(女性)を指して「皇帝を喜ばせようとする宦官みたいなもの」と表現して物議を醸した。国立のミュージックセンターではどんな政治集会も禁じられていて、センター長は法律に従ったに過ぎなかった。

 

 その一方で、国防費増額などを打ち出しているものの、海外が関心を集中させる「親米vs親中」の対立軸からは距離を置いている。

 

 市長時代の上海・台北フォーラムの実績を強調して中国政府とのパイプを印象づける一方、アメリカとの友好関係も同じく重要と示唆する。柯文哲自身の言い方でいうと「総統選候補のなかで自分だけがアメリカでも中国でも受け入れられる…これが最大のアドバンテージだ」。

 

台湾海峡を通過していた米海軍駆逐艦チャン・フーに接近する中国の昆明級駆逐艦(2023.6.3)。台湾海峡をはさんだ緊張は台湾政治に大きな影響を及ぼしてきた。
台湾海峡を通過していた米海軍駆逐艦チャン・フーに接近する中国の昆明級駆逐艦(2023.6.3)。台湾海峡をはさんだ緊張は台湾政治に大きな影響を及ぼしてきた。(提供:U.S. Navy/Mass Communication Specialist 1st Class Andre T. Richard/ロイター/アフロ

 

第三勢力に集まる若者

 良くも悪くも注目を集める柯文哲や民衆党の主な支持基盤は若者とみられている。ローカルTVの行った世論調査では、柯文哲支持者の54%は20代だった。

 

 台湾の全人口のうち20代は約14%、30代は約15%を占める。

 

 台湾にある国立政治大学のレフ・ナフマン准教授は

年長者には国民党支持者も多いが、若者の支持は民進党と民衆党に向かっている」と指摘する。

蔡英文政権はアジアで初めて同性婚を合法化するなど多様性に配慮する姿勢が若者から一定の評価を集めてきた

 

 ただし、現在の総統である蔡英文の支持率は下落していて、政府系シンクタンク台湾民意基金会の調査でさえ、

昨年末に「支持しない(45.4%)」が「支持する(37.5%)」を上回った。

 

民進党の選挙集会に出席する蔡英文総統(2024.1.11)。初の女性総統で、アジアで初めて同性婚を合法化するなど多様性を尊重する方針は若者から支持を集める一因になってきた。
民進党の選挙集会に出席する蔡英文総統(2024.1.11)。初の女性総統で、アジアで初めて同性婚を合法化するなど多様性を尊重する方針は若者から支持を集める一因になってきた。(写真:ロイター/アフロ

 

 こうした批判の大きな原因は生活の悪化にある。

 

 日本では「半導体産業が好調」といった文脈で賞賛の目立つ台湾経済だが、2023年のGDP成長率は予想を大きく下回る1.42%を記録した。これはリーマンショック後の最低水準だ。

 

 その一方で、金利引き下げもあってインフレは進み、とりわけ住宅価格は昨年までに、蔡英文政権が発足した2016年と比べて約1.5倍上昇した。さらに、若年失業率は11.42% にまで上昇している。

 

 こうしたなか将来への悲観も広がっている。32歳の会社員はニッケイ・アジアのインタビューに

クレイジーな住宅価格と経済的なプレッシャーが強くて、

家族を持つとか子供を持つとか考えられない」と現状への不満を口にしている。

 

【資料】台北の市場(2023.12.21)。生活不安の広がるなか、若者の間には民進党離れも目立つ。
【資料】台北の市場(2023.12.21)。生活不安の広がるなか、若者の間には民進党離れも目立つ。(写真:ロイター/アフロ

 

生活重視の機運と外交・安全保障

 こうしてみた時、「保守的・旧世代的な国民党は論外だが、生活悪化に歯止めをかけられない民進党にも不満がある」という若者の受け皿として、柯文哲や民衆党は急速に勢力を伸ばしてきたといえる。そこには台北市長時代に柯文哲が剛腕をふるった行政改革や生活支援への期待があるとみていいだろう。

 

 「だからといって中国とまともにつき合うことを否定しない民衆党を支持するなんて、脅威を理解していないのではないか」と息巻く人がいるのは簡単に想像される。もちろん、台湾の若者の間にも中国に対する警戒感は少なくない。

 

 しかし、現代では多くの国で生活がそれなりに安定した中高年より、若者の方が将来への不安が切迫した問題になりやすい。さらに、年長者が優先される社会への不満が募る構図も世界全体に共通する。

 

 そのうえ、そもそも台湾では「中国を警戒すべきでも、まともに独立を叫ぶのも危険」という意識が広がる状況もうかがえる。一昨年の調査では、「有事の際にアメリカは部隊を派遣してくれると思うか」という問いに対して「そう思う」は36.3%、「そう思わない」は53.8%にのぼったのだ。

 

 とすると、蔡英文のように勇ましくはないかもしれないが、過度に中国を刺激しない柯文哲や民衆党の方針が、若者に安心材料となったとしても不思議ではない。

 

 そこにアプローチする柯文哲と民衆党がどのくらい票を伸ばすかは、ひいては台湾海峡を挟んだ緊張の行方にも関わってくるとみられるのである。

 

六辻彰二

国際政治学者

博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。アフリカをメインフィールドに、国際情勢を幅広く調査・研究中。最新刊に『終わりなき戦争紛争の100年史』(さくら舎)。その他、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『世界の独裁者』(幻冬社)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『日本の「水」が危ない』(ベストセラーズ)など。