ヨルダン国王、ガザ情勢は「二国家解決が人類の勝利」(Wedge(ウェッジ)) - Yahoo!ニュース

 

ヨルダン国王、ガザ情勢は「二国家解決が人類の勝利」

配信

Wedge(ウェッジ)

アブドゥッラー2世(dvids)

 ヨルダンアブドゥッラー2世国王が11月14日付けワシントン・ポスト紙に

「二国家解決がわれわれ人類にとり勝利になる」

(King of Jordan: A two-state solution would be a victory for our common humanity)と題する寄稿をしている。

 

その論旨、次の通り。

 

 

  イスラエル人と同じく、パレスチナ人も独立した主権を持つ国家において、尊厳を持ち、安全で敬意を受ける生活をする権利を有する。  しかし、ここ20年間、イスラエルの一方的行動は和平プロセスを掘り崩し、双方に平和と安全の二国家解決を約束したオスロ合意を無視してきた。パレスチナの領土は国際法に反して小さな飛び地に分割された。

 

  イスラエルはオスロ合意によりパレスチナ国家の一部となるべき土地で「入植地」を3倍に増やした。エルサレムの住民は家から追い出され、イスラムとキリスト教の聖地は攻撃され、礼拝者は苦しめられた。今やガザの230万の住民の60%がその土地から追われた。

 

  18年前のイスラエルのガザ「撤退」は、

二国家解決への貢献ではなく先制攻撃であり、パレスチナ国家を否定する恒久的分裂を作り出した

 

  二国家解決を基本に和平の道を取る考えのないイスラエル指導部は、

必要な安全保障を国民に提供できないだろう。

イスラエル人は、パレスチナ人が悲惨と不正義の中で生きている中、

安全保障措置のみで自分達の安全を確保すると期待することはできない。

 

 

 

政治的展望なしには平和的な未来の約束はイスラエル人にもパレスチナ人にも実現しない。  二国家解決に代わる現実的な代案を想像することは難しい。一国家解決はイスラエルのアイデンティティがいくつかのアイデンティティを包摂することを強制する。国家なし解決はパレスチナ人の権利と尊厳を否定する。  もし現状が続けば、邪悪な政治とイデオロギーは宗教を利用しようと試みるだろう。過激主義、復讐心、迫害が地域のみならず世界において深まろう。  次に起こることは全世界の転換点になる。二国家解決に基盤を置いた地域の平和、安全保障、繁栄の構築に向けた協調的国際努力が優先事項である。  結果を出すのは責任ある指導者の仕事であり、それは今から始めねばならない。この仕事は容易ではないが必須である。今の大虐殺に勝利はない。パレスチナ人に権利と国家が与えられない限り、誰も勝者にならない。  これのみがパレスチナ人とイスラエル人双方にとって真実の勝利になるだろう。これはまたわれわれに共通の人間性にとっての勝利になるだろう。

 

 *   *   *

 

  ヨルダンは、国内に多くのパレスチナ人が居住しているほか、ヨルダン川の西岸は今後出来るパレスチナ国家の領土になることが想定されている地域である。また、イスラエルと平和条約を締結している。そのヨルダンの国王としてアブドゥッラー国王はイスラエルの利益も考えた上で、パレスチナ問題の解決について穏健で理性的な意見を表明してきた。

 

  今回のこの投稿もアブドゥッラー国王の考え方をよく反映している。アブドゥッラー国王のこの投稿で表明されている意見には強く賛同できる。パレスチナ問題については、二国家解決以外の解決策はないと確信する。

 

 

 10月7日のハマスのイスラエル攻撃は、サウジ・イスラエル国交正常化でパレスチナ問題が置き去りにされることを阻止しようとしたものであったと思われるが、民間人を対象としたテロ行為と言われて当然の暴挙であった。しかし、その後のイスラエルのガザ攻撃の態様は自衛権の行使として正当化される武力行使の範囲を明らかに逸脱したものであった。  ガザ北部での治安維持の責任をイスラエルは負うとネタニヤフ首相は言っているが、これはガザ北部のイスラエル占領になる。バイデン大統領は、ガザ再占領は大きな間違いであると言っている。

ネタニヤフ政権の〝実態〟認識を

 今のネタニヤフ政権は、オスロ合意を形骸化すべきであるとする極右政権であり、この政権の退場なしにはアブドゥッラー国王の極めて常識的な提案もイスラエルの受け入れるところにはならないだろう。ネタニヤフ連立政権は、西岸の併合を主張しアラブ人に対するテロを賛美する「ユダヤの力」党と「宗教的シオニズム」党の支持を得てようやく成り立っている政権である。  日本としては二国家解決以外にないということを粘り強く主張していくのが大切ではないかと思われる。かつ、イスラエルに国際人道法の順守を求めていくべきであろう。  シファ病院で武器があったなどといった、イスラエルの情報戦の一環としての主張については、余りイスラエル寄りと捉えられかねないようなコメントをすべきではないだろう。大体、そうしたイスラエルの主張は事実であるのか確認できない。ネタニヤフ政権はその閣僚の一人がガザへの原爆使用も「一つの選択肢」と言ったことに見られるようにどうしようもない政権であることを念頭に置く必要がある。

岡崎研究所

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