「これでロシアは強大に」プーチン4州併合論理のあまりに異様な世界(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 

 

「これでロシアは強大に」プーチン4州併合論理のあまりに異様な世界

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現代ビジネス

 

 

 「プーチンは高支持率…? 真実を報道しただけで逮捕されるロシアの民意はどこに」

…国民の表面的な戦争支持と社会の不安定化が同居しているが、

それを牽引するのがプーチンをはじめとする指導層と支持層の異次元の世界観である。

 

  【写真】核もパイプラインも―「ありとあらゆる手段」にロシア国民は歓喜の声

プーチン第2次「併合」演説の何が衝撃なのか

9月30日、4州併合を宣言するプーチン大統領

 

 9月30日、ロシアの占領しているドネツク・ルハンスク、へルソンとザポリージャの4州における「住民投票」と称する行為の結果を受けて、

プーチンはクリミアに次ぐウクライナの領土の「併合」演説…

 

  クリミアと同様に、この選挙と称する行為そのものに合法性はなく、住民の意思が公平に反映されたというロシアの主張には説得力がない。

  …プーチンは自身の行為に「正当性」があるのだと信じ込んでいる

  この演説はA4で14ページ…「悪いのはロシアではなく、西側諸国だ」

 

併合演説の中身

 まずは「住民投票」の正当化が行われた。 ---------- 

・この住民投票は国連憲章の第1条に基づいたものであり、人民の同権と自決権は人から奪えないものである。 

・4州とロシアは運命と1000年もの歴史を共有し、この精神的なつながりというのは人々によって子や孫に受け継がれていったのであり、様々な試練があったのにも関わらずソ連崩壊後に誕生した若い世代も上の世代と同様に一体性と共通の未来のために投票した。 

・この8年もの間、ドンバスの住民はジェノサイドや銃撃に耐え、へルソンとザポリージャではロシアに対する憎悪を犯罪的に植え付けられようとしてきた。 

・キエフの政権とその本当の支配者である西側の人たちに聞いてもらいたい。ルガンスク、ドネツク、へルソンとザポリージャの住民は永遠にロシア人になる。

 

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  その後ウクライナのゼレンスキー政権に対して停戦交渉に戻るように呼びかけられている。 ---------- 

 

・キエフの政権よ、今すぐ攻撃と2014年から始めた戦争を止め、話し合いの場に戻れ。我々にはその用意がある。しかし、4州の選択の議論はしない。 

・ロシアは4州を裏切らないし、キエフはこの自由で住人の意思を尊重しなければならない。これが平和への唯一の道だ。 

・持ち合わせているありとあらゆる手段で、自分たちの住民を守るというのは我々の使命だ。必ず街を復興させ、社会インフラも復旧させる。

 

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  その後はだらだらとアメリカをはじめとした西側諸国に対する批判が繰り広げられた。プーチンの政治信条と世界観がよく表れている。 ---------- 

 

・ソ連の解体後、西側は世界に対して支配を押し付けようとしてきた。91年当時、西側は、ロシアは復興せず、さらに崩壊されるのだと期待していた。我々は空腹で、寒く、貧しく、希望のない恐ろしい90年代を覚えている。しかし、ロシアはこれを耐え、回復し、強くなって再び世界で威厳のある地位を取り戻した。 

・この期間、西側は我々を攻撃し、弱めるための新しい機会を模索し続けてきた。彼らには、全ての国の主権がアメリカに都合のいいものにすることが重要である。 

・彼らはロシアの考えと哲学を恐れている。我々の繁栄もだ。競合相手になるからだ。

 

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  そして最後はロシアとロシア語を愛することの大切さが訴えられ、演説の締めは「真実は我々の側にあり、我々はロシアだ」という旨の掛け声だった。

 

 

 

 

 

 

プーチンはまだ元気だ

 かつて、メルケル前独首相がプーチンについて「違う世界にいる」ともらしたとされているが、現在のロシアとプーチンはさらに遠い世界まで行ってしまった。しかし、今では「同じ世界にいたことがある」という話すらも悪い冗談に聞こえてしまう。  この演説はウクライナにおけるロシアの占領地が次々と取り返され、ドンバス地域の完全掌握が達成されていない中で行われているが、プーチンはまるでそれを知らないまま原稿を読み上げたのかと疑いたくなるくらいの内容である。しかし、それでもこの演説には重要なポイントがいくつかある。  第一に、ロシアからは何があっても、折れるつもりはないことが再度主張された。少なくとも、ロシアは自身の行いが「正当である」と信じて疑っておらず、クリミアと同様に4州の住民投票は現地では歓迎されていると国内外に向けて発信できる図太さをまだ持っている。つまり、プーチンはまだ元気である。  余談だが、プーチンは10月7日に70歳の誕生日を迎える。ロシアでは5や10周年記念は盛大に祝ってもらえるという風習があるが、その日はプーチンにとっての「7回目の誕生日10周年」にあたるため、ロシア国内から注目されている。  筆者もモスクワで心の許し合っている友人と会った際、「10月7日にはロシア軍からも『プレゼント』が送られるのではないか」という話になった。とはいえ、本当に盛り上がるのは「ウクライナ軍からは、もっと忘れられない日にしてもらえるだろう」という話だが…。  関連するが、第二に、ロシアは停戦のための要求ラインを下げるつもりがないことを再度主張した。ロシアはたびたび「今すぐ降伏した方が楽になるぞ」という旨のメッセージをウクライナに対して発しているが、効果はない。それどころか、ブチャの惨劇やイジュームの集団墓地を見た後にウクライナとしては、「ロシアには絶対に負けるわけにいかない」という機運が高まっている。しかし、それでもロシアは力による現状変更を突き付けようとしている。  これは非常に厄介な問題で、ウクライナが無理難題を飲まないのなら、ロシアはより嫌な要求を突き付けている。「外交交渉が嫌なら、停戦交渉ならどうだ?」「和平文書にサインするのが嫌なら、降伏文書にするか?」というやり方だ。そして侵攻を非難されると、「交渉に応じなかったのはウクライナの方だった」と反論される。ロシアの得意技だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「強い我々は屈しない」

 第三に、強いロシアの復活が主張された。これには「強い我々は、欧米の制裁なんかには屈しない」や「何があっても最後に勝つのは我々だ」というメッセージを発している。これにはやせ我慢も含まれているのだろう。しかし、このような態度の表明は、ロシアにとっては諸刃の剣ともなりうる。  例えば、ロシアは以前捕虜交換した際、散々「ネオナチ」と呼んでいたアゾフ大隊の隊員たちをウクライナに引き渡したが、その際国内で「なぜ憎きネオナチ主義者を?」と非難の声が一部上がった。  これまで見てきたように、ロシアはウクライナへの侵攻を一種の「聖戦」と捉えている。過度に「ドンバス、へルソンとザポリージャの住民たちは裏切らない」と言い続けることは、それが達成できない場合の代償をより大きくしてしまう。  「ウクライナに負けることは許されない」という状況を自ら作り出し、勝てる見込みがなくても「戦果」が求められる。打破できるかわからない若者の未来を含めたありとあらゆるものが注ぎ込まれる。  すでに「強いロシアには負けることが許されない」雰囲気になっている。この戦いがいつまで続くのかはわからないが、プーチンからは国内外に対して態度を変えるつもりがないことだけは明らかにされた。  何があったらここまで自分を追い込むことができるのだろうか。我々はひょっとしたら長かったプーチン・ロシアの崩壊のプロセスを目撃しているのかもしれない。

「強大な国になった」ロシアの異常な自己意識

…演説が終わるとスタッフたちがシャンパンをあけ、

「ロシアは領土を広げ、より強大な国になった」と嬉しそうに乾杯をしていた。

 

 …ドンバス出身の屈強な男が涙ぐみながら

「今日、やっと歴史的な過ちが正された」

「ロシアはより強大な国になった」

「我々のやってきたことは無駄ではなかった」と声を絞り出していた。

 

  彼らの指していた「強大な国」が何を意味しているのかは筆者にはわからない

が、少なくとも筆者の思う「強い」国はこういうことはしない。

そして、「偉大な指導者」は他国の領土や人々の生活をめちゃくちゃにしない。

 

  しかし、ロシアにいると「異常者」なのは、筆者の方になってしまうという居心地の悪さがある。

 

 

 

 

 

歴史は自分たちの手で正す―もはや世界を遠く離れて

 筆者は運悪く2014年のクリミア「編入」演説の時にもロシアに滞在…

その時も「クリミアにロシア軍はいなかった」

「いかに選挙に正当性があったのか」

「真実はいつもプーチンの側にある」と

政権のプロパガンダをロシア人から散々聞かされ…ノイローゼになりかけた。

 

  しかし、今回もあるロシア人から「ついに私の出身地のマリウポリがロシアに戻った」と

嬉しそうに言われて気が滅入った。彼女によると、

「歴史の間違いは自分たちの手で直さないといけない」のだという。

 

  この人は熱狂的なプーチン支持者で、以前、国際法が何を意味するのか知らないまま筆者に対して、

「いかにクリミアの『編入』が国際法に則ったものであったのか」について語ってくれた…

「ロシア人であるという理由だけで生まれてきた国を恥じないといけないことはあってはならないし、

ロシア人であるという理由だけで海外旅行に行くのを禁止されてはいけない」

「現在のウクライナは、欧米の言いなりになっている」

「ウクライナを『正常な状態』にするために、プーチンは必要なことをしている」

「コメディアンには政治はできない」

 

  このような人は、この国には何人もいる。特に上の世代になるとこうした話をより頻繁にしてくる傾向にある。ここは文字通り日本とは違う世界だったが、この8年間でさらに遠くに行ってしまった。

 

  「強大な国」という自己イメージをかき立てる戦争の行き着く先は何か。

「核もパイプラインも―『ありとあらゆる手段』にロシア国民は歓喜の声」で暗澹たる未来図を描いてみる。

 

村上 大空(モスクワ在住国際政治アナリスト)