日本青年館ホールで上演中の「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」を観てきました。
最近気になる作品の上演が多い日本青年館ホールですが、行きづらそうな場所だったので見送っていたのです。
しかし、今回は谷原章介さんが出演していますし、脚本・演出はG2。
長いタイトルからは内容の予想はつかないですが、「なんか面白そう!?」と思ってチケットを取ってみました。
というわけで、初めての日本青年館ホールでした。
劇場には千駄ヶ谷駅(初めて降りたかも・・・)から歩いて行ったのですが、遠いけれどそんなに分かりにくい道のりではありませんでした。
そうそう、国立競技場も初めて見ました。
開始早々、スタイリッシュな音楽と共に役者が登場するのですが、ダンス要素がある動きで舞台セットが出来上がっていきます。
全編を通して、役者がセットを動かしながら場面を作り上げていくのですが、これがなかなか複雑で覚えるの大変だろうなぁ・・・と物語とは関係ないところで感心したりします。
始まりのシーンは、とある銀行。
銀行員と客を合わせて13人の人々がいるその銀行に、突然、強盗(平埜生成)が現れます。
彼は天井に向けて銃を撃ち、「持っている物の中でいちばん大切な物を出せ」と言い、彼らから思い出の品物を奪い取っていきます。
そして、「あなた達の魂の51%を手にした。それによりあなた達の身に奇妙な出来事が起きる。自分で解決策を見つけない限り、命を落とすことになる」と告げて立ち去ります。
この場面では、ステイシー(花總まり)の夫(谷原章介)が、当日その場にいた妻から聞いた話を語り、補足するような形で進んでいくのですが、彼はカメラを手にして現場を撮影しており、その映像が舞台上のスクリーンに映し出されるという臨場感のある演出になっていました。
音楽やダンス、そして映像が相俟って、観客はその時点で不思議な世界に巻き込まれていきます。
強盗が立ち去り日常に戻った被害者達には信じられないような出来事が起き、そのエピソードが紹介されていくのですが、物語の軸となるのはステイシーと夫との関係。
恋人に心臓を奪われてしまう男、足首に彫ったライオンのタトゥーが体から抜け出し追いかけられる女、体がキャンディーになり夫に食べつくされてしまう女、母親が日に日に分裂していき、ついには風に攫われしまう男、オフィスが水に満たされてしまう男・・・自らも当時者である刑事(栗原英雄)は被害者達を集めて話し合うことにするのですが、解決の糸口はつかめないまま回を重ねるごとに参加者は減っていきます。
そして、最初は異変を感じていなかったステイシーもある日、少しずつ体が縮んでいることに気がつきます。
夫に相談すると、彼は気のせいだと言うのですが、ある法則に従って、彼女は明らかに小さくなっていき、彼もそれを認めざるを得ません。
そのまま縮み続ければ、いつか消えてしまう。
彼女を救おうとする夫。
彼が妻と真剣に向き合い、ふたりの関係に変化が訪れた時・・・という話です。
要は被害にあった人々には何かしらの問題があり、そのことに気がついて改めることが出来れば「魂を取り戻すこと」が出来たのかもしれません。
しかし、軸となるステイシー夫妻以外については深く語られず、追いかけられていたライオンに強盗を襲わせることで日常を取り戻すことが出来たドーン(入山法子)の抱えていた問題が何なのかもわかりませんでした。
そういった意味では少し消化不良な感じが残ります。
しかし、冒頭に書いたように音楽、ダンス、映像など様々な要素が加わり、舞台セットを動かしながら場面を創り上げていく演出の妙もあって、不思議な物語の世界観を十二分に表現している面白い作品でした。