紀伊國屋ホールで「夫婦パラダイス~街の灯はそこに~」を観てきました。

この作品は「日本文学へのリスペクトから新たな劇世界を創出する」というシス・カンパニーのシリーズで、今回は第7弾となります。

 

このシリーズは好きな役者さんが出演していることもあって、チケットが取れなかった「お蘭、登場」以外は観ていると思いますが、第1弾であり、太宰ファンでもあるので、やはり「グッドバイ」が印象に残っています。

そして今回は、織田作之助の「夫婦善哉」に発想を受けた作品のようです。

 

 

舞台は大阪。

橋の欄干で待つ蝶子(瀧内公美)と待ち合わせしている柳吉(尾上松也)が観客席中央通路から登場!

後方席の方まで来てくれたり、舞台に上がる前に観客に話しかけるような場面もあってファンにとってはとてもうれしい演出です。


浄瑠璃パンクでひと旗上げようしたものの思うようにいかず、親からも勘当状態の柳吉は蝶子の腹違いの姉・信子(高田聖子)が営む居酒屋の2階の屋根裏部屋に転がり込むことになります。

舞台セットは昭和チックな風情ですが、万博の話や舞台奥に見えるカジノビルなど時代背景は現代(未来?)に設定されているのかもしれません。

 

姉の信子は店を営みながらも、失踪して行方のわからない亭主・藤吉(鈴木浩介)を待っています。
カジノに通う店の常連らしき馬淵 (段田安則)や出前を持ってくる静子(福地桃子)も何やら怪しげ!?

河童や陰陽師も登場し、チラシに書かれているとおり「夢か現か幻か」というお話なのですが、コミカルなシーンも多く観客からも笑い声が起きていました。

セリフの中の言葉に「天の声」で「これはこう意味ですよ」と解説が入ったりするのですが、段田さんが「いちいちうるさいな」と突っ込みを入れたり、鈴木浩介さんのくだけた演技に笑ったり・・・浩介さん河童姿で出てきます!

これまで観た作品でも硬派な役柄ばかりはありませんでしたが、さすがに河童となるとそれだけで笑ってしまいます。

 

歌舞伎は詳しくないのですが、暗闇の中でお互いの動きが分からない状況で出演者が動く様子を見せる演出も取り入れられていて(ここでも「天の声」で解説がありました)、寺十吾さんの粋な演出なのかなと思います。

 

話の中では藤吉は殺されて川に投げ捨てられたが、河童として生き返ったということになっているのですが、彼を殺害したのは静子なのか、信子なのか?

モチーフとなっている「夫婦善哉」読んでいないので、どこまで原作に沿ったお話しになっているのかわかりませんが、原作を知らなくても楽しめると思います。

 

ネタバレになってしまいますが、結末は安易に「夢落ち」なのかと思えば、実は柳吉が書いた浄瑠璃パンクを観ていた(劇中劇)ということがわかります。

主演の松也さんを始めとして、みなさんが演じることを楽しんでいるような雰囲気が観客にも伝わって来て、それがそのまま作品の面白さにも繋がっているのだと思います。

前述した鈴木さんのくだけた演技や、聖子さんの(新感線とは言わないまでも)ちょっとした立ち回り風味なシーン、段田さんの上手さを改めて感じる演じ分けなど見せ場もたくさんあります!

東京公演は終わってしましましたが、この後は愛知公演、大阪公演が控えています。

今後の「日本文学シアター」シリーズも楽しみです。

何となくですが、個人的は芥川龍之介か坂口安吾を取り上げてもらえないかなぁ・・・と期待しています。