先日、本多劇場で赤堀雅秋さん作・演出の「ボイラーマン」を観てきました。

お目当ては主演の田中哲司さんと、最近舞台出演が多い安達祐実さん。

チラシの田中さんが渋いです!

最初観た時は刑事や探偵の役なのかと思いましたが、ボイラー関係の仕事をしている人=ボイラーマンでした。

 

 

市井の人を描くことが多い赤堀さんですが、本作も深夜に差し掛かろうかという時間に古いマンション近くの路地ですれ違う人々のお話です。

 

道に迷ってその路地にたどり着いた会社員(田中哲司)と片方のピアスを無くして探している喪服姿の女(安達祐実)を中心に、わずかな時間にそこに集まる人の人間模様が描かれていきます。

近所で連続放火事件があり警官(赤堀雅秋)がパトロールしているのですが、そこに話の軸があるわけではなく、観客の前で大きな事件や特殊な状況が生まれるということもありません。

日常にありそうなことが目の前で起きているけれど、それでも少し平穏な日常からはズレている。

非日常とまでは言わないけれど、巻き込まれたら面倒くさいな・・・みたいな・・・。

 

マンションに住む独身女性(村岡希美)は、その場所でタバコを吸う人が多いことやごみの分別が出来ていないことに不満を訴え、近所に住む老人(でんでん)や喪服の女の恋人(水澤紳吾)も怪しげです。

誰もが不満や不安や弱さを抱えていて、何かのきっかけでそのタガが外れてしまうところがドラマになっています。

例えば、村岡さん演じる女性はゴミをまき散らし、水澤さん演じる男は号泣し、会社員と老人は拾った財布で口論になってしまいます。

感情移入出来るか出来ないかというのは観劇の際のひとつのポイントなのですが、その意味では今回は主演の田中さんでした。

平凡な中年男性ですが、周りの人を放っておけない感じの人物像が好きです。

 

村岡さんがヒステリックになりゴミをまき散らした後に、そこに居合わせた人達がゴミを分別して回収するシーンは「何を観ているんだろう!?」と思いましたが、総じて出演者がみなさん素晴らしい。

私の笑いのツボではなかったのですが、観客から笑い声が起きるシーンもありました。

 

以前、「舞台って大袈裟で、設定もあり得ないことが多いですよね」と言われたことがあります。

決してそんなことはなく、「それを言うなら映画だって同じじゃん!」とも思ったのですが、そんな方には赤堀さんの舞台を観て欲しいです。

日々の暮らしの中にも物語が潜んでいることがわかると思います。

 

あと、喫煙シーンが多いです(当日配布の配役表にも案内事項として書かれています)。

比較的前の方の席だったこともあると思いますが、マスクをしていても臭いを感じましたので、煙草が苦手な人はきつかったかもしれません。