新国立劇場小劇場で「不思議な国のエロス」を観てきました。
朝海ひかるさんが出演していたので少し気になっていたのですが、スケジュールが合わず見送っていました。
しかし、先日観た「テラヤマキャバレー」で寺山作品を観てみたいなと思い、思い出したのがこの作品。
直前でしたが、幸運にもチケットが取れて観ることが出来ました。
「テラヤマキャバレー」の感想にも書いたのですが、アングラ劇に対する苦手意識があるので、寺山修司はあまり観ていません。
思いつくのはマームとジプシーを主宰する藤田貴大さんが演出すると知って観に行った「書を捨てよ町へ出よう」くらいでしょうか?
観劇に関しては雑食なので、知らず知らずのうちに観ていた寺山作品があるのかもしれないですが・・・。
この作品はギリシャ喜劇「女の平和」をベースにした作品で、執筆当時には上演されなかった寺山修司の異色作とのことです。
ひと言で言ってしまうと、戦いに明け暮れる男たちに対して、平和を願う女たちがセックス・ストライキで対抗するというお話です。
女たちは国を越えて結束し、戦争終結のための和平へと導いていきます。
音楽劇の形式を取っていて、ラップ・バトルやダンス要素なども取り入れているので重くはないのですが、昨今の世界情勢を鑑みると笑ってばかりもいられません。
ベースとなっている「女の平和」を読んでいないのでどこまでが原作に沿っているのかわかりませんが、ギリシャの時代から現在に至るまで、人の愚かしさは変わっていません。
でも、そう思えるのは日本が平和を享受できているからなのでしょう。
舞台では平和が訪れて喜ぶ女たちの中に、戦争でアイアス(渡邉蒼)を失ったクローエ(花瀬琴音)の悲しみや憤りも表現されています。
戦争が終わって平和が訪れたことは歓迎すべきことですが、その喜びの陰に隠れてしまうかもしれないたくさんの悲しみを忘れてはいけないし、そこから目を背けてはいけないのだと思いました。
それから肉体美の象徴のようなヘラクレス(林光哲)が女性側に立っていることもジェンダーレスの時代性を捉えています。
寺山修司が存命の時代には社会的なジェンダー意識は低かったと思うのですが、すでにそこに着眼していたのでしょうか?
朝海さんは物語を進める案内役的な立ち位置でもあるのですが、彼女と絡む女子高生の役割はあまりよくわかりませんでした。
最初は現在の視点から物語を俯瞰して観ているのだと解釈していましたが、終盤に至っては物語の中に入っていくので・・・!?
強く美しい女たちに翻弄される男たちという構図の中で、反戦や平和を願う普遍的なテーマを音楽劇として表現した作品でした。
笑ってばかりはいられないけれど、観劇後は「面白かったぁ~」と思いました。