世田谷パブリックシアターで上演中の「エウリディケ」を観てきました。

主演の水嶋凛さん、和田雅成さんは観たことがなかったのですが、チラシ・イメージと演出が白井晃さんだったことでチケットを取りました。

 

原作者サラ・ルールさんの作品を観るのも初めてだと思いますが、ギリシャ神話を現代に置き換えて書かれた物語で、今回が日本初演とのことです。

 

 

開演と同時にエウリディケ(水嶋凛)とオルフェ(和田雅成)が観客席から登場し、愛を語り合い、そして結婚することになります。

オルフェはエウリディケに海や空を見せ、頭の中にあるメロディを口ずさむ(正直なところ、この冒頭部分はよくわからず・・・)。

 

ふたりが立ち去ると、エウリディケの父(栗原英雄)が現れ、彼女への想いを語り始めます。

彼がいるのは死者の国で、そこでは人の言葉は通じない。

彼の言葉は手紙となり現世に届くのですが、その手紙を手にした男(崎山つばさ)の誘いに乗ってしまったエウリディケは階段から足を踏み外して死んでしまいます。

 

彼女は死者の国で父親と再会し、「忘却の川」で消し去られた記憶を取り戻します。
一方、オルフェはエウリディケを探し続け、音楽の力によって地獄の門にたどり着きます。

そこで、地下の国の王(崎山つばさ)から「振り返って彼女を見てはいけない」という条件の元、現世に連れ戻すことを許されるのですが、そこに至るやり取りが「意外にあっさりとしているな!?」と思いました。

ベースとなっているギリシャ神話(「世界的にも知られている物語」みたいです)を知らないので、何とも言えませんが・・・。

 

ギリシャ神話をベースにしているだけに幻想的な雰囲気も漂わせる美しくも悲しい恋の物語なのですが、父娘愛の物語でもあります。

父親役の栗原さんの包み込むような優しい雰囲気がとても良かったです。

ふたりが幸せになることを願って「また、いつか会おうと」とエウリディケを送り出すのですが、彼女を失った悲しみは深く、自ら「忘却」を選択するシーンが切ない。

そして、それを知らずに死者の国に戻ってきた彼女も同じ選択をします。

ラストシーンではオルフェが地獄の門をくぐり登場するのですが、エウリディケが残した手紙を理解することが出来ません。

彼は再び彼女に会うために死を選択したのかもしれませんが、記憶は失われているのでしょう。

人は忘れることによって悲しみを癒すことが出来ますが、それで失われるものも大きいようです。

 

林正樹さんのピアノと、藤本一馬さんのギターによる生演奏が観る人の感情を揺さぶります。

どれくらいの舞台経験があるのかわかりませんが、主演のお二人も良かったです。

声をかけられて思わず振り返ってしまったオルフェがエウリディケを見失ってしまう場面は、一瞬で感情が込み上げてきました。

このあたりは白井さんの演出の妙なのかもしれませんが、役者の演技と音楽も相俟って生まれてくるものなのではないかと思います。

水嶋さんが出演される作品は、これからもチェックするようにしようと心に誓ったのでした。