最近、リアルタイムで観劇ブログを書けていなかったので、記憶が薄れないうちにと書き始めたところです。。。

 

紀伊國屋ホールで上演された「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」同時公演を観てきました。

「ガラスの動物園」はこれまで何度も観ている作品なのですが、別役実さんがその後日談として書いた「消えなさいローラ」は観たことがありませんでした。

 

2作同時上演だと長丁場になるのだろうなと思いつつ、吉岡里帆さんのファンとしては観に行かないわけにはいきません。

「消えなさいローラ」は二人芝居で尾上松也さんの相手役が公演日によって変わります。

当然のことながら吉岡さんが相手役の回を選択!

 

 

「ガラスの動物園」はテネシー・ウィリアムズの代表作のひとつで、私は深津絵里さんがローラを演じた舞台で初めて観たのでその印象が強いですが、最近では岡田将生さんがトムを演じた舞台も観に行きました。

1930年代のセントルイスのウィングフィールド家を舞台とした回想の物語。

その家には父は不在で、語り部となる長男・トム(尾上松也)と母・アマンダ(渡辺えり)、姉・ローラ(吉岡里帆)の3人暮らし。

 

トムは倉庫番として働きながらその状況に不満を抱いており、アマンダは過去の思い出に縋りながら生きているプライド高い女性。
アマンダが内気なローラを心配し、トムが家に招いたのが同僚のジム(和田琢磨)。

彼は学生時代にローラが恋心を抱いた相手で、最初は目を合わせることも出来ないけれど、少しずつ打ち解けていきます。

ジムは人当たりが良い人物で、ローラの表情も変化していくだけに彼女の想いが届かない結末は、何度観ても納得がいかないのです。

そして、事あるごとに干渉してくるアマンダと言い争いになったトムは家を出て行きます。

 

2時間半近い作品を休憩なしで上演していますが、長さを感じさせません。

ユーモラスなシーンも組み込み、上手に控えるミュージシャン(川本悠自:コントラバス、会田桃子:ヴァイオリン、鈴木崇朗:バンドネオン)の演奏も功を奏していたと思います。

 

この物語はトムの視点で語られているのですが、実は主人公はローラなのではないかと思います。

その意味で、活発で明るいイメージとは真逆のローラを演じている吉岡さんの上手さが際立っていたと思いますが、久しぶりに観た松也さんの歯切れ良いセリフ、和田さんの好青年振り(実はひどい人なのだけれど・・・)、えりさんの家族に対する絶対的な存在感も見事で、出演者の演技力があってこそ成り立つ作品なのだとあらためて思いました。

 

20分の休憩の後に上演された「消えなさいローラ」はその後日談で、家を出て行ったトムを待ち続けるアマンダとローラの物語。

別役作品はあまり観たことがないのですが、「ガラスの動物園」の後日談と聞いて想像していた展開とは違いました。

勉強不足ながら別役さんというと不条理劇のイメージを持っているのですが、ちょっとサスペンス風味があります。

 

ふたりが住む家を葬儀屋を名乗る男(尾上松也)が訪ねてきます。

吉岡さんがアマンダとローラを交互に演じているのですが、葬儀屋の男は母がすでに亡くなっているのではないかと疑いをかけています。

冷静に考えるとふたりを演じ分けてひとりの男に対応することは難しいので演劇だからこそ成立する話なのかもしれません。

そして、待つことの終わりを告げる男。

1時間くらいの作品でしたが密度は濃く、最後はえりさんと和田さんも加わって歌声も聴けるという贅沢さ♪

 

えりさんの「国を超え時を超え生き続けるローラの孤独は平和を待ち続ける、死にきれない死者たちの祈りでもある」というコメントは、2作品同時上演だからこそ感じ取れるものなのかもしれません。

今後も演じ続けられるであろう「名作」には力があると思うし、それを演じ切る役者はやはり凄い!