本多劇場で上演中の「リムジン」を観てきました。
この作品は前回上演予定の時にチケットを取りましたがコロナで公演中止となってしまいました。
主演の向井理さんも水川あさみさんも出演作は久しぶりの観劇で、前回の中止を残念に思っていたので無事にお披露目されることになって良かったです。
最近、本多劇場では席に恵まれていて、今回も前方中央席で表情まで良く観えました。
田舎町で康人(向井理)が営む小さな工場。
自宅(上)と工場(下)の中間にあるフロアを舞台に繰り広げられる人間模様。
田舎町ならではの密接な人間関係と、表面上は取り繕いながらも不満を抱えた登場人物の駆け引きが描かれていきます。
康人の妻・彩花(水川あさみ)にとっては小学校の統廃合によって通学が困難になることが一番の問題ですが、その相談を受けた彼は週末の狩猟を楽しみにしていて上の空。
そんなある日、康人に一目置いている街の実力者である組合長(田口トモロヲ)から後継者になってもらえないかとの相談を受けます。
組合長は運転手(宍戸美和公)付きのリムジンに乗っており、ふたりはその役職収入を得ることが出来れば子供を私立に通わせることが出来るかもしれないと喜びますが、狩猟の際に誤って組合長に怪我を負わせてしまい、咄嗟に嘘をついてしまいます。
幸いなことに軽傷で済みますが組合長の怒りは収まらず、犯人探しに躍起になり疑いをかけられたのは康人の友人の坂(小松和重)。
真実を彩花に話すと「正直に話すべきだ」と説得されますが、いざ告白しようとすると躊躇してしまい、それを見て取った彼女の説明に便乗してしまいます。
真実を話せないままに康人は後継者になりますが、狩猟の際に現場を観ていたらしい運転手や、あることから彼が犯人であることを悟った坂には弱みを握られ、暗に要求を突きつけられていく。
ひとつの嘘が巻き起こす悲劇ではありますが、弱みを握られ、後継者となった後も前任の組合長に院政を敷かれているような康人も役職にはつけたのだし、周囲の人たちもそのことを深く追求しないことで要求を通すことが出来て、小さなコミュニティの中ではありがちな予定調和なのかもしれないと感じたり・・・。
主演の向井さんは大学を卒業して家業を継ぐために戻って来たという役柄にマッチしたスマートさがありました。
それでも、今の自分の環境に満足しているわけではなく、組合長の紹介で雇うことになった社員(田村健太郎)や、探し物が見つからずに苛立つ場面など大きな声を発する場面が多くてこれまで観た出演作品とは異なっていました。
個性が強い出演者の中に囲まれながら、水川さんはとても自然体で演じていて魅力的でした。
もっと、舞台出演が増えるといいなぁ。
田村さんは、根本宗子さんや加藤拓也さんなどの作品に出演されているので何度も観ていますが、今回も本筋とは少し距離を置きつつ主人公を苛立たせるという人物像が「らしかった」です。
人の裏表や密度の濃い関係性を描いていますが、笑いが起こるシーンも多く、面白かったです。