丸山隆平さん主演の「パラダイス」を観てきました。

作・演出は赤堀雅秋さんで、シアターコクーン登場は2019年の「美しく⻘く」以来5回目とのことです。

 

赤堀作品のファンである私は、実はこの5作品を全て観ています!

しかし、今回は丸山さんが主演ということもあり、「競争率高そうだな」と半分諦めつつも先行予約に申し込んだらまさかの当選。

しかも、端ではあるもののB列・・・丸山さん(関ジャニ∞)ファンに申し訳ないと思いつつ渋谷に向かいました。

 

想定できたことですが女性客が多く、席から見渡せる範囲は全て女子でした。

赤堀さんなので、もう少しバランスの取れた観客層になるのかと思っていたのですが・・・。

 

 

梶(丸山隆平)は詐欺グループのリーダーとして、仲間の真鍋(毎熊克哉)とともに、行き場のない若者たちの研修を行っています。

開演早々、遅刻した研修生に対して殴る蹴るの暴行シーンがあり、TVで観る限り「いつも笑顔を絶やさず、温和な印象」の丸山さんとは真逆の役ですが、とても迫力のある演技です。

 

上役のヤクザ・辺見(八嶋智人)の機嫌を窺いながらも独立を考えているのですが、辺見が彼の家族の事情を調べ上げていること知り、縁遠くなっていた実家に戻ります。

実家が営む肉屋は長女の美紀(坂井真紀)が引き継いでおり、両親は夫婦喧嘩が絶えない。

実家に戻ってきた梶は、冒頭のように声を荒げることもなく、行方不明になった飼い猫を一緒に探したりするようないたって普通の青年。

その演じ分けも良かったと思います。

 

やくざな世界や底辺でもがく若者たちと、普通の家庭でのやり取りが対比されながら物語が進み、梶が辺見の元を去る決断をしたことにより、それぞれの話が関連していきますが、物語としての繋がりは強くありません。

観終わった後には、主人公である梶(の二面性)を際立たせるための設定なのではないかと思いました。

 

出演者がみなさん素晴らしいです。

初めて観た丸山さん(映像出演作品も観ていないので、本当にお初です)は、思っていたようなキラキラした役柄ではなかったけれど、それだけに上手さを感じましたし、新たな一面を確認することも出来ました。

何より、陰のある役柄でもカッコイイ!

役柄とカーテンコールでのおどけた仕草を見せる姿とのギャップもね・・・。

 

コミカルな役のイメージが強い八嶋さんが演じる辺見は笑顔で語るセリフが怖いし、それ以上に辺見とつるんでいる青木(水澤紳吾)の考えていることがわからないクレイジーな感じが怖い。

真鍋を演じた毎熊さんの言葉数は少ないけれど、梶に忠誠を尽くす行動に出る姿も印象的で、こちらも背が高くてカッコ良かったです。

西岡徳馬さんと梅沢昌代さんが醸し出す初老の夫婦の空気感は見事で、妻の「いつまで起きているんですか」という言葉を、「いつまで生きているんですか」 と聞き間違えたことで喧嘩になり何日も口をきかないというエピソードは赤堀さんらしいと思います。

両親に翻弄される平凡な主婦役の坂井真紀さん、出演シーンは少ないけれど、やはり少しタガが外れている患者を演じる赤堀雅秋さん・・・舞台出演豊富なみなさんの存在も見逃すことは出来ません。

 

舞台は上下2段になっています。

上ではボーリング場やビルの屋上など、下では詐欺グループの研修や梶の実家のシーンが演じられます。

前方の良席でしたが、上で演じられるシーンは常に見上げている状態になるので、少し疲れます。

中段席くらいの方が、全体を通して見やすいのかなと思いました(わがままですね!?)

 

火災が発生したビルの屋上で青木と対峙した梶がどうなったのか、ラストシーンで美紀が話していたのが(帰ってきたのが)誰なのかなどわからなかったですが、まさに赤堀さんらしい世界観の作品でした。