東京公演最終日に、ゴジゲン第18回公演「かえりにち」を観てきた。

ゴジゲンは初めて観た「くれなずめ」以来、随分と間隔があいてしまったが、その間に松居大悟自身が監督として、映画化している(それ以外にも、何本か映画を撮っているみたい!)。

「くれなずめ」は第14回公演ということなので、本当に久しぶりのゴジゲン観劇になる。

 

 

 

劇場(ザ・スズナリ)でもらった当日パンフによれば、松居大悟は「今回は、何も起きない丸い物語を描こうと思った」そうだ。

 

台風の予報があり、設置された避難所が舞台。

時間をかけて準備したにも関わらず予報は外れ、先輩の田所(東迎昴司郎)に不満をぶつけながら撤収作業を進める島木(奥村徹也)。

そこには、夜逃げ同然にやってきた相沢兄弟(神谷大輔松居大悟)や、仕事をクビになってしまった森本(目次立樹)が残っているが、撤収作業が始まってもなかなか帰ろうとしない。

そこに、指輪を探しに戻ってきた与田(善雄善雄)と彼を乗せてきたタクシー運転手・野々宮(結城洋平)が加わる。

 

それぞれに、それなりの事情はあるけれど、特別なことではない。

店の経営が上手くいかないこと、仕事をクビになってしまうこと、彼女にフラれてしまうこと・・・それは普通に起こり得ること。

何かの事件の犯人が逃亡したとか、近くでドラマの撮影を行っているというような会話はあるが、冒頭の言葉どおり、舞台上では特別なことは起こらない。

ただ、そんな人たちが台風予報の日にひとつの場所に集まったこと、その日そこに集まった見も知らぬ人々に芽生えた繋がりは特別なことなのではないだろうか。

会場中が大爆笑ということではないのだけれど、ゆるい笑いと漂うほのぼの感が心地いい。

 

片付けが済んでも名残惜しさや、祭りの後の寂しさのようなものが残り、ビンゴゲームを始めたりする人々。

そんな気分はとても懐かしいものに感じられた。

最近、人との距離が遠くなっていて-それは自分が距離を置いているのかもしれないけれど-離れがたいような気分を味わったことがないなと・・・舞台の内容とは全然関係ないけれど・・・。

それでも、当日パンフに書かれている「世の中がウソみたいに殺伐としていて」という文章を読むと、こういう感情を持ち帰ることも、「届いた」ことになるのではないかとも思った。