世田谷パブリックシアターで上演中の「奇蹟 miracle one-way ticket」。

この舞台は、作・北村想×演出・寺十吾×シス・カンパニーという日本文学シアター・シリーズも手掛ける鉄壁の布陣。

早々にチケットを取ったのですが、またもコロナ影響で開幕が順延になり、取り直して観に行きました。

出演者も井上芳雄さんや鈴木浩介さんなど有名な方が顔をそろえているのですが、チケットが残っていて良かった!

 

 

 

開演と同時に鈴木浩介さんが語りかけ、観客を物語の中に導いていきます。

 

私立探偵・法水連太郎(井上芳雄)を追いかけて深い森に迷い込んだ彼の友人で医師の楯鉾寸心(鈴木浩介)。

最初の方から、お互いをシャーロック、ワトソンと呼び合ったりするので、役名に意味があるのかなぁと思いました。

言いづらい(聴き取りづらい)名前という笑いを誘うところでは意味はあったのかもしれませんが・・・。

 

森を抜けてたどり着いた病院で見つけた法水は記憶を失っていて、誰の依頼でここにやって来たのか、どのような依頼内容だったのかさえ覚えていません。

ふたりは真相を確かめるために、さらに森の奥へと入り込んでいき事件(?)を解決するのですが、掌に聖痕が現れマリアを見たと訴える女性(瀧内公美)の過去の話が挿入されたり、セリフに難しい言葉(プラズマの説明など)が多かったり-スクリーンに説明が映し出されて、観客の理解を助けてはくれるのですが-、理解が追いついて行かなかったです。

 

記憶は失っていても、記憶とは別のところで推理力を働かせる法水ですが、「僕は歌が好きじゃなかったか?歌いたくなった」というセリフにはクスリとさせられ、それは笑いを取るためだけではなく、実際に何曲か美声を披露してくれるのです。

佳境に至っては、真相を明らかにされ拳銃を向ける井上小百合さんを歌とダンスで魅了して拳銃を取り上げてしまうという、よくわからない展開になっていくのですが、(ミュージカルの)井上さんファンには訴えかけるシーンなのかも・・・?

 

人々の前にマリアが現れる奇跡は起きても、キリストが現れることはない、それは男社会の教会(バチカン?)にとっては不都合なことで、マリアを見たという女性は「奇跡」として認定されないというのが少し意味深。

 

ミステリ物の体裁を取りながら、奥深い森や洞窟の中というような場面設定、宗教的な色合いも持ち込むことで、日本文学シアター・シリーズでもみられたような幻想性やファンタジックな雰囲気が醸し出されていました。

現在と過去のエピソードを行き来する際に、本のページを捲るような映像が流れる演出が良いと思いました。

 

「最後はみんなで楽しく歌い、踊りましょう」的な終わり方も悪くないと思うのですが、物語としては良くわからなかったのは、こちらの理解力不足でしょう。

爽やかで頭脳明晰な役柄の井上さんも良かったですが、柔軟さとコミカルな一面をみせている鈴木さんの好演が光っていたと思います。