東京芸術劇場シアターイーストで上演中の「業音」。

初演は荻野目慶子主演で2002年に上演されており、今回は15年振りの再演となる。

主演には、大人計画から平岩紙を抜擢!

紙ちゃんファンとしては観に行かないという選択肢はなく、早々にチケットを取ったのだが、後から入って来た情報を見ているうちに、初演も観ていたことに気がついた!

 

 

本作は、松尾スズキがプロデュースする日本総合悲劇協会の第6弾公演。

元々「悲劇」を題材にした作品を上演するためのユニットなので、舞台上で起こる出来事は悲劇の連続。。。

 

物語の発端は、演歌歌手として再起を図る元アイドル・土屋みどり(平岩紙)が起こしてしまった交通事故。

被害者の杏子(伊勢志摩)の夫・堂本こういち(松尾スズキ)は彼女を拉致し、有罪婚と称して結婚を迫る。

しかし、そんな結婚生活の中でも、子供が生まれてひとときの幸せを感じ始めるみどり。

そんな時、意識を取り戻した杏子が戻ってくる。

それまで、強権的にみどりを支配していたこういちも、杏子の前では別人のように大人しい。

杏子に神がいることを説明しろと命じられたみどりだが、その解答を見出すことが出来ず、一番大切な子供を奪われてしまう。

 

みどりだけではなく、登場する人物はそれぞれの不幸を抱えていて、決して愉快な話ではないのだけれど、それでも人は生きていく・・・生きて行かなければならない。

それは、こういちを失ったみどりが、それでも普通の日常を送っていくというラストの告白に集約されている。

 

松尾スズキが描く世界は、人が隠しておきたい部分を強引に引きずり出すようなところがあるので、観ていてつらくなることもある。

それは、表面的なものだけではなく、その裏にある問題に正面から切り込んでいるからだと思うし、批判を恐れない正直さがあるからなのだとも思う。

 

この作品の中で、9.11同時多発テロが取り上げられている。

確かに、ニュースで流れる映像には現実感はなかったけれど、それを正面切って言葉にされると、やはりドキッとする。

パリ公演も予定されているが、フランスではテロ事件が頻発していて、日本よりもそのあたりは敏感だと思うので、捉え方も異なると思う。

 

全体的には悲劇の連続にも関わらず、思っていた程の暗さ(悲惨さ)はない。

映像やダンサーのパフォーマンス、松尾スズキが意味もなく宙吊りになったり、やっぱり下ネタ入れて来るし、皆川猿時は脱いでしまう・・・本筋とは外れたところで色々やってくれるので思わず笑ってしまうが、神の存在や生きることをテーマにしているという点では普遍的な作品なのかもしれない。