KERA・MAP7年ぶりの公演「グッドバイ」。
7年ぶりということは、KERA・MAPを観るのは初めてかもしれない・・・
妻子を田舎に残し、東京で雑誌の編集者として暮らす田島周二（中村トオル）。
闇商売で儲け、愛人を何人も抱えるような暮らしをしているが、闇商売から手を洗い、愛人とも手を切って、妻子を呼び寄せようと考える。
愛人と別れるために考えた策は、美女を自分の妻だと偽り愛人宅を回り、相手に諦めさせるという作戦
その妻役に選ばれたのがキヌコ（小池栄子）。
しかし、このキヌコは見た目は美しいものの、一言しゃべるとがさつさが出てしまう金の亡者。
しかも、愛人と手を切ると決意しながら、いざ別れを告げると「これ程、自分にぴったりの女性はいなかった」と後悔し始める優柔不断な田島
頻繁に会っていた4人の女性、理容師（町田マリー）、女医（緒川たまき）、イラストレーター（夏帆）、女学生（門脇麦）に別れを告げに行くが、逆に「グッドバイ」されてしまう。
そして、一緒に暮らそうと思っていた妻（水野美紀）からも見放されてしまう。
このあたり、原作を逆手に取ったような物語になっているのが面白い
後半は、原作にはない創作。
女たちに見放された田島がやけになり、暴漢に襲われた挙句、収容所に送られてしまう。
田島が死んだと思っていた女たちは、田島の供養のために集まっている（その状況もかなり突飛押しもない状況だ）が、そこに記憶を亡くした田島が現れ、更なる喜劇へと突入していく。
出演者では、何と言っても小池栄子が素晴らしい。
出演作を何作か観ていて、コミカルな役もシリアスな役も演じていたけれど、今回はだみ声でがさつな一面と、田島に対する恋心を抱くピュアな一面を持つ女を演じている。
まわりに囃し立てられてむきになってしまうところとか、とても可愛らしかった。
水野美紀は、主宰するプロペラ犬でもコメディ作品を作っているので、コメディは得意でしょう。
後半は活き活きとしていた。
笑いの点で言えば、複数の役を演じている池谷のぶえが、結構持って行った感じがする。
そして、やっぱり忘れてはいけない山崎一
出演している役者は、ほとんど観たことがあるし、実力派の方が揃っているので、安心して観ていられた。
ナイロンの劇団公演では、どこか闇の部分を描いているところがあって、カラッと笑い飛ばせないところがあるけれど、今回は後味が良い
ケラさんが、「太宰フリークに何を言われたって知ったこっちゃありません」と言っているので、最後に言わせてもらうと、「原作 太宰治」ではなく、太宰の「グッドバイ」をモチーフにした作品というのが正しいのではないかと思う