こまつ座第111回公演「國語元年」。
物語の舞台は南郷家。
文部省に勤める南郷清之輔(八嶋智人)は、上司から「全国統一の話し言葉を制定する」という任務を言い渡される。
そんな清之輔の家は、お国訛りが飛び交う日本の縮図のような状況。
清之輔は長州の生まれで、妻・光(朝海ひかる)とその父・重左衛門(久保酎吉)は薩摩、女中たちは山の手言葉や下町言葉を話し、書生は名古屋弁、そして車夫は東北弁・・・。
さらに、清之輔の名前を騙る男にだまされたお女郎さん(竹内都子)の河内弁、言語統一のアドバイスをすると居座る公家(たかお鷹)の京言葉、強盗に入った男(山本龍二)の会津弁までもが混ざり込み、日常会話もままならない。
任務達成のため、清之輔の「ことばとの格闘」が始まる。
そして、試行錯誤の末にたどり着いた新しいことば「文明開化語」。
新しいことばで人との交渉は出来るのか?
そのことばで喧嘩や、女を口説くことが出来るのか?
作品の中でお国訛りを使うことも多い井上ひさしの「ことば」に対する愛情が滲み出ている。
チラシに書かれている「使っている人の言葉のそれぞれが日本語で、その総和が日本語なのだ」というメッセージは、この作品の中に息づいている。
ことばは生活に根付いていて、簡単には変えられないし、変える必要もない。
登場する人物のキャラクタが確立していて、それを演じる役者も上手い。
ところどころで挿入される小学唱歌も楽しく、みなさん歌も上手い。
タイトルから想像していた堅苦しさはなく、終始笑いに包まれた舞台だった。