劇団チョコレートケーキ「追憶のアリラン」@東京芸術劇場 シアターイースト
久しぶりに硬派な人間ドラマを観た気がする
劇団チョコレートケーキは初参戦だったが、チラシに「第25回公演」と書かれているので、長く続いている劇団のようだ。
会場でもらったパンフレットによれば、「歴史的事実を参考にしたフィクション」が、この劇団の作風らしいが、本作は大東亜共栄圏を掲げて朝鮮併合を行った大日本帝国の検事の目を通して語られる友愛の物語
大東亜共栄圏の理想を信じて、平壌の検事局に赴任した豊川(佐藤誓)は、朝鮮人の事務官・朴(浅井伸治)と出会う。
豊川は国籍に関係なく朝鮮人も「同朋」と考えているが、軍部を初めとする日本人たちは「支配」と考えている。
豊川が主張する正義は軍部によって握りつぶされ、朴を通じて訴えてきた崔親子の願いを叶えることが出来ない。
やがて終戦を迎え、日本の支配から解放された朝鮮で人民裁判が開かれる。
戦時中に積極的に日本に協力した朝鮮人は、罪を問われる危険があり、朴も豊川の家族とともに南へ避難するが、家族を京城に送り届けると、豊川を救うために危険を顧みず北へ向かう。
一方、一般人の退避を優先し、自らの意志で半島に残った豊川たちは拘束され、裁判を受けることとなる。
人民裁判官の追及は厳しいが、ソ連の介入によって三席の豊川は無罪となる。
上席の二人はシベリヤに送られ、四席の川崎(菊池豪)は病に倒れて、豊川だけが帰国の途につく。
そして、朝鮮半島は南北に分断されてしまう。
現在の日本と南北朝鮮との関係は良好とは言えないかもしれない。
しかし、国家間の関係性とは別に、人と人との個人的な関係性でみれば、そこまで悲観的ではないのかもしれない。
住む国が違っても、話す言葉が違っていても、気持ちは通じ合うのではないかと思えた。
知っている俳優さんはいなかったけれど、出演している役者は演技力が高い。
その熱量に圧倒されるが、静かに語りかけるシーンでもセリフが心に響いてくる。
毎回観に行く劇団でもなく、贔屓の役者が出演しているのでもなく、今回は、なぜ観に行こうと思ったのかわからない。
でも、もし直感的にチケットを取ったのであれば、自分の直観を褒めてあげたい
とても素晴らしい作品だった