父は腰痛に苦しんだあげく脳梗塞で入院しました。そのことをしばらく隠していた母は、退院の話になると激怒したらしく、病院スタッフの人から、「退院後の相談についてはお嬢様とさせていただきたい」と言われました。この年でも「お嬢様」なんですね。
「なんで帰らすんや!せっかく入院さしたのに!あんなもん帰ってこられたらたまらんわ!」と言い続ける母と一緒にお医者さんからの説明を聞きました。「肺の中にありとあらゆる細菌が現れてきます。薬で退治しても、またすぐ新しいやつが出てきてきりがないんです。今この部分に見えてる白っぽいのは、海に中に存在する細菌ですね。」
最初に入院してから一度も帰宅できずに施設と病院を行ったり来たりの父は、いったいどこから海の中の細菌なんか仕入れたんだろう?
そんな父の3回忌がついこの間ありました。ふと形見にもらった腕時計を出してみると、なんか悲しくなってきそうだったので、デパートに持っていきました。「これは文字盤がダイヤだから、電池交換はできないかもしれません」という若いお姉さん。「文字盤と中の電池とどう関係が?」って言おうとしたら、奥から出てきた紳士っぽいおじさんがちらっと見て、「あ、これね、うん丈夫だよ」 するとすかさずお姉さんが、「お時間かかりますよ、このタイプですと1600円かかりますよ」 「あっちで用事してくるからやっといてください」と、負けぬ笑顔で返す私。
同じく形見のパーカーのボールペンは、インク交換に600円もした。近所の商店街の時計屋の電池交換と同じ値段だわ。でも、確かに高級なインクは書きやすい。
さて、あのお姉さんがカウンターの向こうで忙しそうにしている。美人だけど下手な店員さんだ。「さっきのできていますか?」 ちょっと驚くお姉さん。「申し訳ありません。とても不思議なんですが、なにをどうやっても動かないんです」 「壊れてるってこと?」 「それもわかりません。どこが悪いのかもわからないんです」
そのまま地下に下りて、浮いたお金でモロゾフのチーズケーキを買いました.家へ帰って紅茶を淹れて、動かない腕時計なんか飾っとくような趣味でもないな、とダイヤの文字盤を眺めてみると、なんとなんと、とても不思議なんです。だって、フツーに動いてるんだもん。こんなことってあるんですね ^o^