ダブリンは小さな首都だ。泊まったホテルは、議事堂や大学や裁判所の間にあった。ジョイスの小説の主人公の名前がついたそのホテルの一階のパブでギネスを飲んだ。フロントのおやじが注いでくれたそれを、誰もいないカウンターで飲んだ。スティーヴンズ・グリーンの近くのあったかい店で夕食を食べて、みぞれの中を帰ると、一階のパブは入口まで人があふれていた。寒いのに、半そでの太い腕をむき出しにして、電車のドアにぶら下がるようにして騒いでいる赤いシャツの女がいた。
翌日、電車に乗ってジョイスのタワーを見に行った。30分ばかり乗って降りた駅を出て歩き始めると、突然教会の扉が開いてどっと人があふれ出てきた。日曜日の礼拝が終わったのだと気がついた。住宅地の間の道を抜けると海岸に出た。タワーは四月から十月までの間しか開いていない。二階建ての家ぐらいの高さのその石の塊の向こうでは、一月だというのに泳いでいる人が大勢いた。それも何もつけていないようだった。そのあと、足が棒になるまでダブリンの街を歩き回った。
次の日、ヴァージン・レコードの営業所で会った男は、スキューバダイヴィングの方が本職のようなやつで、彼によると健康のために、冬でも海岸に出る人が大勢いるらしい。
(写真は何の関係もない武蔵丘陵森林公園のアイスランドポピー)