通勤途中、


山の中に、動くものが見えた。

車を停めて、目を凝らして見る。



犬だった。


車から降りて、山を登る。

犬は、さらに上へ。


小枝が、顔に突き刺さる。

急斜面、もうこれ以上登れない。




犬は、私を見下ろしている。



(どうか、お願いします)

(どうか、神様、お願いします)




私は、少し足場のある所まで下りて、

「おいで」

と、手を広げた。



犬は、ゆっくり、下りてきた。



私は、犬のお腹に手を回し、

ゆっくりと、

一緒に、山を下りた。



車に乗せ、ホームセンターで、ドッグフードと首輪とリードを買う。





愛護センターへ、探している人がいないか、確認の電話をする。

そして、近くの警察へ行き、探している人がいないか、確認する。





いなかった。




警察で、用紙を二枚書くよう言われる。
一枚は、書いた。 

もう一枚は、
警察で、数日保護した後、元の飼い主が現れなければ、
愛護センターへ収監するという内容だった。



私は、サインしなかった。



犬を、そのまま、連れて帰った。






まだ、若くて、健康だった。


ブリーダーが、
成長して、売れ残った子犬を、山へ遺棄したのではないかと考える。




ここまで。

これは、5年前の話になる。









現在。



















ゴンは、実家の家族の一員となった。




そして、4年前、

殺処分予定で、愛護センターから引き取った猫、

キャメルと仲良しになった。













11月1日は、犬の日。


保護犬、保護猫を、選択肢のひとつに。





命の量産をストップさせることが、

殺処分ゼロへの道に、繋がる。