
風評被害
本稿は煩わしい記述もあるので、ご興味ない方はスルーして下さい。
この夏にも放出が始まりそうな福島第1原発(F1)に溜まっている
処理水について、風評被害が懸念されている。
何故風評が蔓延するのかを考えると、これは人間のサガですかな。
時間でしか解決できない厄介な問題としか言いようがありませんな。
風評が起こる条件としては色々あろうが、
①その事象に対する知識が無い
②あっても100%確証が無い
③世間にはいろいろな意見がある
④自分は有害だと思ってる
⑤無害だという人の事が信じられない
⑥過去に何度も騙された
などがあるんだろうね。
そもそも、トリチウム(Tr)って何ぁにって事なんだよな。
「原発事故で発生した汚染物質」と感じている人が多いんだろうか。
「水素原子核の中に中性子が2個存在し、僅かなβ線を出しながら
崩壊してヘリウムになって行き、その半減期は12.3年である」と
言われても、「何それ?放射能でしょ」くらいのもんだな。
Trは過去の原水爆実験などで放出されたものが、まだ完全には無く
なっていないし、宇宙線などで地球にある水素が変化して出来る
ものもあり、世界中の原発で大量に生成されて海に放出されている
ものもある訳だ。
規模的には
| 過去の実験 | 2×10^20 Bq* |
| 自然発生/年 | 7×10^16 Bq |
| 原発放出/年 | 2×10^16 Bq |
となっている。
*Bqは1秒間に1回崩壊する放射能。
過去の実験によるものは12.3年ごとに半減しながら減少している。
これらをすべて合わせると地球上には1×10^18 Bq程度のTrが
存在しているという。
対して、F1に貯留されている量は9×10^14 Bqほど。
F1のTrは数10年にわたって放出しようとするもので、年間放出量は
更に一桁下がる訳だ。
フル稼働時には年間2×10^13 Bq程を放出していたという。
実際には希釈して何10年にもわたって放出するが、年間総量は
フル稼働時以下とする方針である。
数字的には今も世界中で放出しているTrの1,000分の1にも
満たない量を放出しようとしているわけだ。
F1の処理水は様々な放射性物質をALPSと言う装置で化学的に
分離し漉し取る事で有害な物質はすべて取り除いた残りのもの
なんだが、Trだけは酸素と結合した水になっており、漉せない。
それを貯め続けたが、限界が来たので、世界保健機構の飲料水
基準の40分の1に薄めて海洋放出しようというもの。
で、IAEAもこのやり方にお墨付きを与えたわけだ。
さて、Trが人体に与える影響や如何に。
大量のTrを経口摂取してガンになった事例はあるが。これは桁違い
の量の接種。
Trの発がん性には閾値があるようだが、人体では確認されていない。
放出Trを問題とするなら、環境にあるTrの方がもっと大きな問題と
言えるだろう、自然発生するものも含めて。
上記の如く、環境中にあるTrの日常的な摂取量は極く極く微量の
ために、まったく無害とされている。
また、Trの発生するβ線の強さは紙1枚で遮断できるほどで、
細胞膜を透過できないレベル。
F1のTrを放出する事の影響は現在環境にあるものに比して、無視
出来るレベルであることは上記の通り。
もちろん、放出しない方が良いに決まってるんだが、せざるを得ない
状況だし、世界的な影響は極く極く低いというのが実情なんだな。
放出に当たっては、他の核種が混入しない事や濃度が確実に
管理されている事をモニターして公開するのは当然の義務だろう。
という事で、世界中で放出してるし、中国はもっと多いし、韓国でも
素晴らしい量を今も毎年放出している。

このように、科学的には今回の放出の影響は微々々々であるし
(世界の原発の放出Tr量の1,000分の1、自然に創出されるTrの
3,500分の1)、人体への影響はまず無いと言って良い。
科学的にはまったく安全と言えるものである。
だがしかし、いくら安全と言われても、安心というものは人間の気分
の問題であって、安全だという人を信じられない人にとっては安心
とは言えないのである。
魚は他にも居るんだから、何も好んで福島近辺の魚を買う事は無い
という考え方だ。
公〇党の某氏が「放出は海水浴シーズンが終わってから」なんて
言うから、「ほらね、危ないんだよ」って事になってしまう訳だ。
「根も葉もない嘘」という言葉があるが、嘘も本人がホントだと思えば、
嘘では無くなる。
心の中に「危ない」と言う気持ちがあれば、いくら安全だって言っても
その人は危険だと思うもんだ。
増してや、政府や科学機関を根っから信じない人にとっては、
「また嘘を言ってる」としか思えなくて、「危ない」と言う記事を血眼で
探すことになる。
かくして、風評被害は決して無くならないし、無くなるのは長い期間を
経て、実際に安全が証明された後という事になってしまう。
ま、福島の関係方々にはお気の毒だが、F1の事故があった時点で、
この被害からは免れ得ないという事になってしまっている。
Ref.