
ウクライナ情勢は?(38)__ロシアの苦境
数週間でウクライナを制圧するとして始めた戦争が、
今や50か月を超えた。
その間、ロシアはウクライナの東部4州の大半を占領し、
少しずつその勢力を拡大してきた。
しかし、ここにきて、様相が変わってきたように見える。
一番大きな影響はロシア経済に出ているようだ。
西側諸国による経済制裁で、自前の経済が縮小したのが
大きいんだが、そこは資源大国のロシア、原油や天然
ガスの、中国やインドへの代替輸出でカバーしてきた。
また、戦争特需とも言える、武器弾薬などへの支出が
短期的にはロシア経済を潤す結果となってきた。
しかし、武器等の製造はまったく付加価値を産まない
から、長期になると、逆にその弊害が大きくなって
きている。
また、ロシアの国内への長期的な影響が大きくなって
きている。
この戦争での累計死者総数が50万人を超え、大きな
問題になっている。
話題になりそうな都市部からの徴兵を制限し、僻地や
貧困地域からの徴兵を多くする、初期には囚人を兵士
とする、多重債務者を金で釣るなどしてきたようだが、
それも限界で、兵士不足が深刻になっているという。
帰還兵のPTSDやDVも深刻な問題になっている。
当初から、兵役忌避する若者の流出が問題であったが、
優秀な人から先に、既に、100万人を超える若者達の
国外逃亡が確認されているという。
軍需優先のために、人手不足が深刻で、製造業が衰退、
もの不足によるインフレの昂進、結果としての内需低迷
など、経済が毀損し始めている。
インフレ抑制のために、政策金利を一時21%にしたが、
今でも14.5%って、そんなお金を誰が借りるという
んだ、だから金回りが止まってしまってる。
~24年までは何とか確保してきた堅調な経済は25年
になって著しく低迷し、成長率が4~5%から1%へと
転落したという。
追い打ちをかけるように、ウクライナがこの戦争の
やり方を変える戦略変更を行い始めているようだ。
それは、ロシアの継戦能力を削減する試みである。
すなわち、石油生産施設や軍事生産の麻痺、市民の
士気低下を目的とする長距離・非対称戦に持ち込む
ことで、前線への補給を滞らせることだ。
長距離ミサイルと高精度ドローンは、エネルギー
インフラに集中的な攻撃をかけている。
ロシア経済の弱体化を図るには石油生産を阻むのが
一番効く。
時あたかも、イラン戦争が始まり原油価格が上昇して
いるわけだが、ウクライナは長距離ミサイルとドローン
を駆使して内陸部の石油関連施設への攻撃を行なうこと
で、輸出に制限をかけ、燃料を枯渇させるわけだ。
輸出の低迷の他、国内の燃料供給も滞り始めた。
また、併せて、兵器・爆発物工場、軍司令部・兵站拠点
を攻撃し、ほぼ毎日、ロシアに甚大な被害を与えている。
これには、武器保管庫、長距離爆撃機、ミサイル施設
なども含まれる。
半導体産業や巡航ミサイル計画の中枢企業にも被害を
与えている。
もう一つ大きいのは米国の制裁の一環のスターリンクの
切断で、これで、目標の特定や飛翔体の誘導が上手く
行かなくなった。
ウクライナの方はこれを使って、目標を精密に特定し、
ミサイルやドローンを的中させている。
結果として、ロシアは防空システム、飛行場、兵器工場
などの軍事施設の被害で、戦場でのロシアの前進が
事実上停止状態になったという。
5月には、まだ少しの部分ではあるが、ウクライナが
被占領地域を奪還したという報ももたらされている。
ここにきて、明らかに戦況が変わってきたように見える。
ウクライナのドローン大量生産への欧州の支援も奏功し
始めており、ウクライナが少しずつ勢いを取り戻しつつ
あるようだ。
もちろん、ロシアも戦争最優先で対峙しており、1日に
200回以上もの空爆を続けるなどしているから、
一気に覆ることはないにしても、当面はジリ貧状態が
続くんではなかろうか。
ウクライナは自国有利なうちに停戦にこぎつけたいと、
プー公に働きかけているが、プー公の方はあくまでも
強気でこの提案を跳ねのけた。
まだまだ予断を許さぬウクライナ戦争であるが、
ロシアの継戦能力に陰りが出てきたのは確かであろう。