コメ高騰の本質 | 悠釣亭のつぶやき

コメ高騰の本質

自由経済下では、商品の価格は需給のバランスによって決まる
のが普通である。
需要が高まれば、供給が追い付くまでの間、値段が上がるのは
やむを得ない。
そういう観点から見ると、今回の米騒動は不可解な事が多い。
いろいろな面から分析してみたい。


基本的なところで、次の前提はどうなっているんだろうか?
A. コメは実際に不足しているのか。
B. JAの買取価格上昇に比し、店頭価格が激高なのは何故か。


A. コメは実際に不足しているのか。
識者たちは口を揃えて米不足という。
需給のバランスが突然崩れたとでも言うのか?
供給側から見ると、24年の作柄は良く、9万トンほどの増収
だったというが、統計に偽りがあったのか?
1等米の割合が少し低かったようだが、供給量は充足していた。

需要側では、地震対策での買い占めやインバウンド消費が
増えたことなどを上げる人が居る。
しかし、その量は僅かで、既に販売に回っているコメの価格を
急騰させるほどではなかった。

米不足を言う人がまったくデータを示さないから、実施にどう
なのかは分からないが、大きな傾向として、
消費者のコメ離れ→需要減、人口は確実に減少に転じ、しかも
高齢者が増えて、一人当たり消費量も減っている。 




減反政策の弊害を言う人も多いが、これほどに需要が減少し
続ければ、供給量を減らすのは当然の事で、減反は理に
適った政策と言える。





B. JAの買取価格上昇に比し、店頭価格が激高なのは何故か。
昨年7月頃に、米不足を声高に言う人が増えた。
当時の民間在庫を見ると、やや少なめではあったが、コメが
無くなるなんてレベルでは決してなかった。
だから、供給側が「新米が出れば解消する」と言ったのは
当然のことと思える。

コメが不足するなら今のうちに買っとかなくちゃという消費者
心理が高まって、皆が買いに走り需要が突出した?
これは有り得るかも知れない。


どっかの知事が、足りないから備蓄米を放出しろと言った時、
ワシは在庫を確認しろ、流通を確認しろと指摘したが、ちょうど
オイルショック時のトイレットペーパーの如き状態を起こした
可能性はある。
高くても買うなら、売る方は安くする謂れは無い訳だ。
その後も暫くは同じ心理状態が続いてきたのも確かな事。

それならば、この事象は説明できるし、この際とばかりに
通常のルートで販売されてきたコメも便乗した疑いはある。
ちょうど昨年の7月頃からの急速な値上がりも説明がつく。




しかし、それならば、コロナ禍時のマスクのごとく絶対量が
不足している訳ではないので、時間とともに価格は安定する
筈だ。
何故なら、市場には備蓄米が例年比で少なくとも80万トン
以上追加供給され、既に市民に行き渡り始めてるから。
この夏以降の値崩れは大いに期待できそうだ。


さて、消費者へ届くまでの価格の大きな変化、仕入れ値に
対する店頭価格の大幅な増大、演出された品薄がどうして
起こるのか?

ワシはJAの力不足と投機筋の仕掛けによると思っている。
往時はJAが大半のコメを仕入れ、小さなマージンで流通に
乗せてきたが、昨今、JAの取扱高は30%近辺にまで
落ち込んでいる。
そこに投機筋が入り込む余地が出来た。

農家も、直販やブローカーに売る方が高いとなれば、JAに
売らずにそちらに流す。
コメ高騰が自分の首を絞める結果になる事なんか一部の人
以外に考えるはずがない。


最近の論調として、備蓄米を非常時対策だけじゃなく、
価格調整源にすべしというのがある。
ワシは今の量でも多すぎると思うんだが、一体何トン持てと
いうのか?
何も無かったときはそれをどう処分するのか? 
生産量が減少する中、どこからそれを調達するのか?
ナンセンスな議論というしかない。

増産すべしという論調もまた同源。
余ったコメをどうするのか? 
増産を主張するなら、余ったコメをどう処分するのかを決めて
からにしろって。

輸出が簡単でないのはこれまでの状況を見れば明らか。
旨いコメだから高いと言い張って努力することは必要だが、
韓国や台湾や東南アジア、米国等と対抗できるとも思えん。
ODAで欲しい国に呉れてやるというのなら分かるけど
(ケチには出来ないが)。

現在、輸出米は4万トン強。
これが10万トンを超えるようなら増産も可能だろうけど、
理想論だけではことは進まなかろう。
確固たる輸出戦略を持っての増産を言え。

今回の小泉対応が奏功するのなら、コメが不足気味になれ
ば、当面、現在の量の中で放出、それでも不足なら、緊急輸入
すればよいし 供給量安定は備蓄米を輸入米で充足して
市場へのコメの投入量を増やせばよい。
コメが足りないと言ってる時に、市場からコメを吸い上げる
馬鹿がどこに居る?


今回の騒動で、不思議なのはコメ高騰の真因調査が殆ど
なされず、議論が輻輳してること。
・突然の経費上乗せはなぜ起こったのか
・投機筋の跋扈を何故許してしまったのか
・少しの供給の乱れが高騰をもたらすのは何故か
等の調査がなされたと思えないんだな。 

コメは元々生産量の揺れが値段に直接跳ね返る商品では
あったけど、今回のような極端な例は過去に無かった。
真因究明が疎かだと、供給量が減る程に価格の揺れは
拡大することになり、対策がもっと難しくなる。


総括すると、
今年の供給量、少なくとも現時点で80万トンの供給過多で
価格がどう推移するか
投機筋以上の供給、即ち、投機対象に出来ぬようにする
施策は何か
増産は輸出のメドを立ててから、でなきゃODA放出(ケチ
には出来ないが)
答えが無いならば、一定水準を維持して様子見しか無かろう。


農業の持続性の保証こそが最大の課題なのは当然。
・高く買い安く売る。差額を補助(ケチには出来ない)。
 大半を統制し、銘柄米や特別米だけ自由価格化が良さげ
 だが、統制経済がうまく行った例は少ないが。
・経費の透明化。
・多角的な農地改革。集合化と景観維持。日本の原風景
 への回帰を進めるべし。
・コメを食す習慣を拡大出来るか。
 そうでなくてもコメ離れは進んでいる。若者がコメを食う
 ようになる施策はあるか。





コメ農家の高齢化が進んでいるから、対策は待った無し。
コメ生産者のノーハウが失われぬ間に、若者が回帰できる
施策が必須である。
今後も米食者は減少するだろうが、そんな中で、少ない
人数で必要量を供給するためには、生産性を格段に上げ
なきゃならないはず。
価格安定機能の強化や価格形成の透明化も併せて必要
なんだろう。


残念ながら、今回の米騒動でコメ離れが一層進むのは
明らかだろう。
市場調査でも、他で増量、麺類へ移行、パン食を増やすと
いう人が圧倒的に多い。
格安の供給以外にコメ消費を拡大する手は無い。