一極集中の加速 | 悠釣亭のつぶやき

一極集中の加速

年初に総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告2023」
(人口動態)によると、日本国全体で見ると、人口減とともに人の
移動は減ってはいるものの、相変わらず東京圏への人口移動が
続いており、地方からは人が流出する一方である。




この図をよく見ると、2023年に人口流入があった県は東京圏
(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)以外では大阪府と福岡県
のみという、とんでもないことになっている。
この図では石川県の流出量は少ないが、大震災後の流出は大き
かったから、2024年の統計になるとぐんと増えるんだろう。


大都市にだけ人が集中すると言われてきたが、3大都市圏で見て
みるとどうなっているのか。
下図は3大都市圏の人口流入出を示したものである。




東京圏は28年連続の転入超過となっている。
名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)に至っては11年連続の転出
超過となっている。
大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)は11年ぶりに転出超過
から転入超過に転じたが、極く僅かであり、それも大阪府が少し
増えただけで、他の県はすべて流出の方が多かった。


結果的に見て、東京圏への一極集中は縮小するどころか、益々
加速しているわけだ。
何故こうなってしまうのかについては色々と議論がある。

ワシなりに原因となるものを考えてみる。
①政府機関の集中
②インフラの充実
③集中を善しとする風潮
などが上げられると思う。


①一時期、官庁を地方に移転しようというような動きが議論された
  事があったが、実際には、それを誰も望んでおらず、省庁の分散
  なんて、夢幻のお話。
  多くの企業の本社が東京圏にあり、諸々の手続きが簡単に出来る
  ようになってるんだから、移転されては困るんだな。
  役人達も地方へ移転することは望まず、全力で反対する。
 
  文化庁の如きチンケな役所が移転したとて、大勢には何の影響も
  ない訳で、財務省、経産省、外務省などの本命省庁を移転させる
  気持ちなんて、これっぽっちも無い。
  移転を実行できるはずの政治家本人が一番困るからねぇ。


②かくして東京圏には人が集まり、それだけの税収が上がるから、
  病院、学校、商業施設なども充実できる。
  住居や交通網、電気、水道など人が必要とするインフラも充実
  するから、ますます住み易くなり、それがまた人を集める。

  多くの大学や教育施設もまた東京圏に集中し、若者達を集める。
  若者が集まる所には飲食街や遊興施設も集まる。
  人が多ければ事業の成立性も高くなるという好循環が生まれる。


③一体誰が「一極集中はダメだ」と考えてるんだろうか?
  首都直下型地震が起これば日本の政治経済が壊滅すると考える
  一握りの非力な学者さんだけなんだろうね。

  そこに住む政治家、企業人、住民、学生などは便利なインフラを
  享受しているから、それを手放すことなぞ考えられないわな。
  地震なんて、いつ来るか分からんし、来ても大したことにはならん
  だろうからね。

  唯一、一極集中を解消できるのは政治家なんだろうけれど、
  彼らがそれを望んでいるか?
  地方選出議員とて、東京に立派な官舎があり、あらゆる政策は
  近くに密集する官庁がこなしてくれるんだから、便利この上ない。
  何が悲しくて、首都機能を分散する必要があろうかってなもんだ。


かくして、東京圏への一極集中は加速する一方で、その分リスクは
益々高まって行く。
恐らく、地震や大災害で壊滅するまで加速して行くんだろう。
否、壊滅したとしても復興の名のもとに、より一層の集中を目指す
事は自明で、歴史的にもそうだったではないか。

逆に、能登半島のような場所は「復興しても人が減るんだから、
復興は止めて住民を移動すればよい」と宣ったバカ議員というか、
キチガイ議員まで出る始末。
インフラ整備をしないから人が減ってるという因果関係の転倒に
気付かないドアホウ議員は奴だけじゃないんだろうな。


安全保障上も大問題なんだけどな。
敵対する国から見れば、抗堪性は脆弱で首都圏を壊滅させれば、
国家機能がマヒするって、こんな分りやすい国は無かろう。

この状態は江戸時代以降ずーっと継続してきた訳で、頭の隅々に
まで定着してきた考え方なんだな。
今は交通もネットも政治も経済も、昔より格段に集中してるから、
リスクは江戸時代の比じゃないんだな。
それを、大多数の人達がリスクだとも思ってないし、不都合だとも
思ってない。
むしろ便利さを享受して、「効率が良い」とさえ感じている。
その流れを変える事なんて、最早、誰にもできなくなっている。