戦闘機の輸出 | 悠釣亭のつぶやき

戦闘機の輸出

イギリス、イタリアと共同開発しようという次期戦闘機であるが、
日本として、完成機の輸出をすべきか否かが議論になっている。
政府は次期戦闘機を共同開発するイギリス、イタリア両国との
交渉を3月以降に始めたい考えだが、公明党は「十分な議論が
必要」とし、難色を示している。


日本にはそもそも、武器輸出3原則なるものがあって、法律で
定められているわけではないが、政治原則としてきた。
武器輸出三原則とは
共産圏や紛争当事国などを対象地域として、
(1)三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。 
(2)三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替
  及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎む
  ものとする。 
(3)武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて
  取り扱うものとする。
というもので、基本的に、武器輸出を禁じるものであった。

で、それを緩和する意味から、2014年に、武器輸出三原則に
代わる新たな政府方針として『防衛装備移転三原則』が閣議決定
されている。
防衛装備移転三原則は
①わが国が締結した条約その他の国際約束に基づく義務に
  違反する場合。
②国連安保理の決議に基づく義務に違反する場合。
③紛争当事国への移転となる場合
以外は、基本的に武器輸出を認めるが、厳格に審査し、その後の
使われ方や他への移転などを適正に管理するとした。
日本の安全保障に資する場合などの一定の条件下で容認する
という方向に変更した。

 



この間、国際共同開発、PKOやODA、海賊対策など、様々な所で
これらに抵触しそうな案件が発生し、政府はその都度例外処置
として対応してきた。


それを受けて、昨年12月、政府は臨時閣議及び国家安全保障会議
において、この原則を下記のように大幅に緩和した。
三原則本体の改定は約10年ぶりで、武器輸出政策を大幅に
転換し、ミサイルや弾薬など殺傷能力のある武器輸出の解禁に
踏み切った。




この改正の最も大きい所は、「ライセンス生産」に限っては、
これまで実質的に認めてこなかった殺傷能力のある装備品の
完成品のライセンス元への輸出が可能になるということ。
例えば、PAC3を米国に輸出することが可能になり、余裕の出来た
米国がウクライナにPAC3を供与できるようになる。

そしてもう一つは、国際共同開発品について、相手国だけでなく、
第3国への部品・技術の直接移転が可能になったこと。
例えば英国が豪州に完成品を売った場合、日本は豪州に補用品を
輸出し、技術支援が可能になる。
完成機の移転についてはまだ議論中ではあるが。
これに関して、合意したはずの公明党が今、異論を唱えている
という事になる。


ところで、ワシはこの議論を聞いて、安全保障全体の話をもっと
議論してもらいたいと、心底思ったんだな。
本当に戦争になったら、こんな議論は何の意味も無いから。

日本の武器製造所は100も200もある訳じゃなく、せいぜい
10~20ヶ所でしょ。
集中攻撃されれば、生産と補給はストップするな。

その上で、燃料、弾薬の貯蔵所が破壊されたら、継戦能力は
ゼロになるな。
そして、大都市への攻撃とシーレーンの封鎖で戦意も喪失して
しまうな。
まだ、海岸防備や対空防備やドローン兵器の方が役に立つ。
抗堪性の強化については議論さえ行われてない。

本当に戦争が始まれば、国土国民は壊滅的な被害を受ける事に
なってしまう上、防衛すらままならないだろう。
武器輸出を議論する前に、いかに戦争を始めないかの議論を
徹底的にやってもらいたいもんだ。


さて、2014年の変更以前には「武器輸出=死の商人」という
考え方が主流だった訳だ。
ところが、世界における様々な紛争につけ、安全保障は自国の
努力だけでは不十分という考えが台頭してきた。

膨大な開発費を賄うのに共同開発は大変有効である。
また、自国の防衛産業育成の面からも、小規模な間欠生産では
育成どころか維持すらも出来かねる。
生産量が多くなれば、単価も安くなる等々、メリットも多い。
安全保障面でも、輸出先国は輸出元国に対して、敵対することは
出来なくなるので、仲間を増やせるという点でも有効になる。

だから、同盟国や同志国(定義はあいまいだが)との連携、特に
有事における武器の融通が可能となるような様々な施策は
平時から議論しておく必要はありそうだ。


ただ、直接的な殺傷能力のある武器に関しては、使われ方次第で、

大変な災厄をもたらしかねない。
かといって、使い方を限定することもできない。
となれば、消極的になるのが妥当という事になろうか。

今回の戦闘機輸出問題も、3国で販売先の厳密な評価を行ない
販売の可否を決めるような方向を模索すべきじゃないのかな。
例えば、コンソーシアムを作って、国ごとの販売可否を評価する
などの方法もあろう。
生産量は販売数を出資比で分けるとかの方法もあろう。
補給や整備はエリアごとに決めれば良い。

日本国が独自にセールスを行い販売するような直接的な関与は
なるべく避けた方が良いと思うんだが、政府は前のめりになって
いるように見える。
公明党が慎重になるのも分かる気がしないでもない。