ある飛行少年の記(23)航空機部品
朝ドラ「舞い上がれ!」で、舞ちゃんの工場が飛行機部品の
製造に参入したいというようなお話である。
ワシは挑戦するのは自由だし、技術レベルが上がるだろうから
善しとしても、事業としては「辞めるべき」だと強く思うんだが、
父親の夢を叶えたいという気持ちが強いようだ。
それにしても菱崎重工にはワロタ、いつ合併したん?
ドラマだから、簡単に参入出来て、長年の夢であった飛行機に
部品を乗せるってのが実現するんだろうけど、飛行機部品の
何たるかを知っていれば、現実離れしているとしか言い様がない。
航空機部品は軽さが命である。
特に大量に使う鋲やボルトは1個1mmg重量が増すだけで
全体では何kgもの重量増になり、相乗効果で、更なる機体の
重量増を招く。
ギリギリまで重量を絞るから、1本あたりの強度と信頼性は
極度に高くならざるを得ない。
そうでなければ、1個の不具合がエンジン全体の喪失や機体の
喪失に繋がり兼ねないからだ。
従って、製造の品質管理体制が世間では考えられない程に
重要で厳しい。
一般の人は、技術がシッカリしてれば、良い製品が作れると
思っている。
ある意味でそれは正しい。
問題は「技術」とはなんぞやという事。
物を作る技術は航空機部品の1000分の1の要素でしかない。
それとて、材料管理、製造管理、品質管理、追跡性管理等々が
必須であり、製造管理一つをとっても、製造技術者の管理、
機械設備の認定、工程管理の厳密さ、製造環境の均一化、
異物管理、特殊工程の人・設備・環境・記録・認定・監査等々、
これでもかっ!っていうほどの厳密な管理が要求される。
これが、熱処理、表面処理、非破壊検査となると、更に更に
厳格になる。
作業経験年数や上級者による指導年数なども要件になる。
やってらんないよぉ。
航空機製造会社はその信頼性を確保するために、すべての
管理項目に対して仕様書(SPEC)を作って管理している。
その量たるや、英文資料で1m以上にはなるという。
JIS Q 9100 なんてものはこの世界では何の役にも立たない。
それをすべて読み込み、すべての要求に合致するべく準備が
必要で、製造開始前にすべてに合致してなければ、着手すら
出来ない。
合致しているかどうかをその会社の品質管理担当者が逐一
確認する。
英語が堪能でなければ、対応すらできない。
無数の指摘事項をすべて解決しない限り、工場そのものが
認定されることはない。
年に一度以上の監査があり、抜き打ち監査もやる。
マイナーな指摘でも改善するまで認定継続が停止されるし、
大きな不都合があれば、認定は即刻取り消される。
ま、そんな膨大な管理が必要だとしても、やれば出来る筈
なんだろうが、膨大な間接要員を抱えなきゃ、維持する事すら
難しいという訳だ。
英語を読み書き話す人がどの部門でも必要になる。
すべての資料は英語だし、監査員も英語話者だしね。
航空機部品の製造が菱崎重工のような極く限られた大手会社で
しか行われないのはそれなりの理由があるという事なんだな。
上記のような膨大な優秀な間接要員は中小事業者ではとても
抱えきれない。
じゃぁ、大手の下請けならオッケーなんじゃないか?と思うん
だが、この体制はすべての製造工程に適用されるから、下請け
工場とて例外にはなれないと来たもんだ。
そして、もう一つの難題。
生産量がメチャ少ない事。
自動車の100倍の品数はあれども、生産量は千~万分の1。
防需だとせいぜい月に1~2機だし、民需でもせいぜい数十機
だが、コロナになれば一気にゼロになってまう。
高価な設備は休止になるし、生産してなくても監査は行われる。
売り上げが無いのにコストだけがかかる。
参入障壁がメチャ高いし、多種少量生産だし、生産量の変化も
激しすぎるから、体力のある会社しか生き残れない訳だ。
飛行機部品を作る技術があれば、是非、自動車の世界に参入
すべきだと思うな。
かの飛行少年が嘆いていたが、「航空機部品は値段が高いから
参入したいって人が多いんだよ。
また、それを煽る奴も多いんだよ。
何故高いかをよく知れば、無謀な事は出来ないんだけど、参入
希望会社は後を絶たないな。
それだけの覚悟で参入努力をするのは歓迎で、裾野が広がる
から、結構な事なんだけど、99%は無理だな」って。
Ref.
ある飛行少年の記
https://ameblo.jp/yct/entry-12660665233.html